(ishida式の趣味に特化した…) マクロ撮影の薀蓄 

【 ishida式のマクロ撮影の機材と使いこなしE 】

「100mm F2.8 2x Ultra Macro APO」の導入を契機に、等倍以上のマクロ撮影のフラッシュ撮影用にフラッシュディフューザーを製作してみました。

これまでのマクロ撮影機材とishida式のテクニック等について、第1回は機材についてが主体、第2回でマクロ機材の使いこなしのテクニック、第3回第4回第5回では単なる新機材の紹介(導入の言い訳?)を述べてきました。

今回は、第2回で述べたマクロ撮影時のライティングの効果をより高めるためのアクセサリーを自作してみました。
というのも、前回紹介した「LAOWA 100mm F2.8 2x Ultra Macro APO」は、レンズ単体での撮影倍率2倍までの近接撮影が可能です。
ということは、これまで以上に被写体に接近することが出来る=フラッシュ撮影での影の出方がきつくなるということを意味しています。
光源と被写体が近いだけでなく、より真上に近い位置からのフラッシュ照射となってしまうため、体の下に光が回りにくくなってしまいます。(フラッシュの公称スペックからも外れるし(^^;)
実際、クモのように脚が細くて体の位置が高いものの場合ならば影の出方は緩和されますが、小型の甲虫などを接近して撮影すると、体の下側は何だか真っ暗…。
下はレンズを「LAOWA 100mm F2.8 2x Ultra Macro APO」を使用し、外付けフラッシュ「Godox V1o」+「フラッシュベンダー」を使用して撮影した作例です。

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小型の「オオキノコムシの一種」ですが、特徴的な小顎ヒゲが影になって見えない…

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等倍で撮影した「ハムシの一種」ですが、真上からの光で体の下が影になり脚の色が判りづらい…

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丸っこい体形の「トホシテントウ」の場合、フラッシュ光が真上から照らすと顔が暗くなって良く見えない…

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脚が細くて外側にあり、体の位置も高い「チャイロアサヒハエトリ」の場合は、体の下に光が入り易い。

------------------------------ これまでのシステムのおさらい ------------------------------

フラッシュというのは、基本的には「キセノン管」という筒状の放電管に瞬間的に大電流を流して大光量を発生させるものなので、基本的には線状の光が発生する点光源に近いもので、そのキセノン管の内部の小さな線状の光を反射板やフレネルレンズなどで適切な配光特性となるように設計されています。
点光源に近いということは、被写体に直射光を当ててしまうと光が当たらない部分に「きつい影」が発生してしまいます。
屋外で太陽光で撮影した場合も太陽からの光はほぼ平行光線のため、直射光だけでは非常にきつい影が出来てしまうのが一般的ですが、屋外の場合でも「空」や「周囲の環境」からの光が「巨大なレフ板」のような働きをしてくれます。
マクロ撮影でフラッシュを使い、そのうえ絞り込んでの撮影となると、光源はほとんどフラッシュ光となってしまうため、一方向からの強い光となって硬い影が出たり、艶のある甲虫などの部分的で強いテカリにつながってしまいます。
ポートレートなどで影の輪郭をぼかしたり正反射によるテカリを軽減するためには「アンブレラ」のような大きな発光面を準備してやるか、天井などにバウンスさせて間接的に照明するといった手法が必要になります。
逆に、実際にはフラッシュの発光部はある程度の面積を持っているため、マクロのように被写体との距離が近ければ「発光面の大きさ」が影の輪郭をぼかしてくれる効果もあります。

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無名のソフトボックス。当初はこの発光部に被せるタイプが最も使用頻度が高かった。

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サイズや方式も様々あります。クリップオンストロボディフューザーM(左) Tycka製Lサイズソフトボックス(右)

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Kenko「影取りJUMBO」は影取り効果が高いが、あまり下まで光が回らず効率も良くなくて、更に視界も悪い…(^^;

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無名メーカーの「フラッシュベンダー」もかなり実用効果は高いが、基本は光は上からの照射になる。

過去にG-marketで見た韓国メーカー製品で、クリップオンストロボの発光部からライトガイドでレンズ外周に光を導いてリングフラッシュ的に使用できる「O-Flash」というものもあったけど、既に販売はされていないようです。(オリンパスのTGシリーズ用のフラッシュライトガイドは内蔵フラッシュ用かつ機種専用品ですが同じような考え方ですね)

もちろんマクロ撮影時のライティングに特化した「リングフラッシュ」や「マクロツインフラッシュ」といった製品がありますが、純正品は非常に高価で汎用性がなく、サードパーティー品はあってもTTL調光が可能なものは「Nikon用かCanon用しかない」という状況です。
愛用しているクリップオンストロボメーカーの「Godox」ブランドでMFT用のリングフラッシュやツインフラッシュを出してくれれば有り難いのに。

あ、くどくど前置きが長くて理屈っぽいのがishida式の特徴で…

「影取りJUMBO」は未使用時の携帯性は良好で名前通りに影を緩和する能力は高いですが、扱い的には「しっかり固定されず移動時・撮影時ともに不安定」なうえに「外に逃げてしまう光も多くて効率が悪い」、更にはサイズが大きくて「近接撮影時に視界を妨げられる」とか、「フラッシュ発光時の反射光が直接見えて撮影者側の目にまぶしい」といった欠点もあります。
また、「影取りJUMBO」でも「もっと下側にも光が回ってほしい」という希望もあったので、今回新たに「新ディフューザー」を製作することにしました。

------------------------------ 新ディフューザーの試作と製作 ------------------------------

新たに製作したディフューザーのコンセプトは、等倍付近の近接撮影で影の出方を緩和しつつ、カメラ前面寄りから照射する光を導くために「拡散板を被写体近くでなるべく広くとる」ということにしました。
結果的には「影取りJUMBO」と「ソフトボックス」の良いとこ取りっていう感じ?

過去にデジカメでマクロ撮影を始めたときに使用していたレンズ一体型デジカメ「MINOLTA DiMage 7」の内蔵フラッシュ用に「ボール紙で造ったライトガイド」というのがありましたが、レンズの鏡胴を包み込むような形状にすることで光の周りかたを改善していました。
その辺の記憶も参考にして、まずは段ボールなどを使用して試作を行い、効果の確認もしつつ形状や固定方法を決めたうえで製作したものが今回紹介するこれです。

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フラッシュは「Godox V1o」で、ディフューザーはマジックテープとショックコードを使用して固定。

効果を高めるためには拡散板は大きくかつ被写体を取り囲むようにするのが良いですが、取り回し性や「撮影倍率2倍時のワーキングディスタンス」も考慮したサイズとしました。

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被写体との関係はこんな感じ(1/2倍程度の撮影倍率での距離)です。

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フラッシュの天面にマジックテープ固定、ショックコードで固定することでセット状態での携帯時も安定。

材料はホームセンターで「アクリルサンデー PPクラフトシート 490×565×0.75サイズ」の黒と白、拡散板部分は「アクリルサンデー 発泡PPシート 200×300×2サイズ」を購入し、手持ちの糊付きマジックテープとショックコード(ゴムひも)、コードストッパー、発泡ゴムシート(レンズ側の受け部に貼り付け)などを使用しています。

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分解して展開した状態はこんな感じ。

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畳んでまとめると薄っぺら。(左) 小型のリュクにも収まるサイズです。(右)

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組み立てた状態。(左) フラッシュ発光時の拡散板での拡散具合。(右)

過去のボール紙製のものは折り畳み不可でしたが、今回はPPシートで製作したため分解して折りたたむことでカメラバッグなどにも収まるサイズが実現できました。
組み立てははめ込み式で、パーツは主要な3点のみ、もちろん耐水性も実現(^^;。

色々なシステムでの撮影結果の比較をしてみたところ期待通りの効果が確認できましたが、「影取りJUMBO」よりもマシとはいえやはり効率は良くなくて、フラッシュの発光光量が大きめになるため「電池消耗が激しい」という印象です。
使い勝手は、まずまずコンパクトで「影取りJUMBO」や「フラッシュベンダー」に比べても取り回しは良好で、移動時や撮影時にも周囲の障害物などにぶつかりにくくなりました。
また、従来から使用しているフラッシュ「Godox TT685o」でも問題なくセットできますが、全体に小型の純正フラッシュ「OLYMPUS FL-600R」の場合はちょっと背が低すぎるため、取り付けには何らかのアダプタを製作する必要がありそうですね。

------------------------------ 新ディフューザーの効果確認 ------------------------------

実際に従来方式と新ディフューザーを使用した場合の効果のほどを海洋堂のフィギュアを室内撮影して同条件で比較してみました。

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室内での「トタテグモ」フィギュアの撮影。(撮影倍率は1/2倍くらい)

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Godox V1oは丸くて大きい発光部のためややまろやかだが脚の影はきつく出ている。

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直射成分多めのためやや影は濃いが、脚の影などに効果が見える。

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フラッシュベンダーからの反射光が主のためテカリや影はかなり軽減。露出がズレているのはご愛敬で…(^^;

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下側に延長した拡散板の効果もあって、光が万遍なく回って、影・テカリともかなり軽減。概ね狙い通り(^^)

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ドームディフューザー的に使えるかなと思ったが、拡散板付きだと直射光と拡散光で影が2重になっている(^^;

被写体との距離が離れるほど特有の効果は薄れている印象ですが、実際の屋外の使用でも期待通りの効果が得られている…と思います(^^)。

以降は実際にフィールドに持ち出して「LAOWA 100mm F2.8 2x Ultra Macro APO」を使用し、外付けフラッシュ「Godox V1o」+「新型ディフューザー」を使用して撮影した作例です。
組み立てて持ち歩くにはちょっと嵩張りますが、ショックコードでぐらつかないようにしたおかげで安定感が増して機動性も上々、使用感と効果のほどもまずまず期待通りと感じます。
でも、敏感な昆虫などは「大きな白い物体」が近付くと逃げてしまうこともあり、接近するのが難しくなってしまうという実使用上の弊害も感じるようになった…(^^;

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撮影倍率2倍で撮影した殻長4o弱の「ゴマガイの一種」Panasonic G9+LAOWA 100mm F13・1/100・ISO 200

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撮影倍率1倍前後で撮影した「オオアリの一種」Panasonic G9+LAOWA 100mm F13・1/125・ISO 200

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撮影倍率1/2倍前後で撮影した「トウキョウヒメハンミョウ」Panasonic G9+LAOWA 100mm F11・1/50・ISO 200

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撮影倍率等倍前後で撮影した「アギトアリ」Panasonic G9+LAOWA 100mm F13・1/60・ISO 200

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撮影倍率1/2倍前後で撮影した「コブオトシブミ」Panasonic G9+LAOWA 100mm F10・1/60・ISO 200

------- ishida式のマクロ撮影の機材と使いこなし、更に続く -------