(ishida式の趣味に特化した…) マクロ撮影の薀蓄 

【 ishida式のマクロ撮影の機材と使いこなしA 】

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「ベッコウトンボ」40-150mm F2.8 PRO+MC-14にて 210mm F5 1/500・ISO200(+1EV補正)

前のコーナーではマクロ撮影のレンズについて紹介しましたが、ここからやっと(?)使いこなしの話しのほうに移ります。

昨今はいわゆる「フルサイズ」と称される135フォーマットサイズのセンサーを持つカメラがもてはやされており、「ボケる」ことが利点であり、「フルサイズこそが本物の一眼レフ」のように語られることが多々あります。
「そもそも135ごときでフルサイズとは失礼な!ブローニーサイズがほんとのフルサイズでしょ!」と言いたくなってしまいます。(一眼レフという表現も、フルサイズのミラーレス機が多数出現していることを考慮するとかなり過去のものになってきてますけど)
あまりひねくれた表現では判りづらいので、ここからは135フォーマットのセンサーを持つカメラを「フルサイズ」と呼称しておきます。

一般的によく言われる「ボケるフルサイズは優れているが、ボケないM4/3は劣っている」「高感度に優れたフルサイズに対して豆粒センサーのM4/3は劣っている」みたいな論調には賛成しかねるひねくれた根性なのが「ishida式」の特徴でもあります。
もちろん、表現としてぼかしたりぼかさなかったりできる自由度があるのはたいへん好ましいことには違いはありませんが、マクロ撮影の場合は必ずしもボケればいいっていうわけでもありません

例えば、フルサイズで同じ距離から上の写真くらいのサイズに撮影しようと思ったら、400mmクラスのレンズが必要になってしまい、被写界深度も更に激浅ですから、絞り込んで撮影する必要もあります。
もちろん、フルサイズのシステムで同じ210mmレンズを使って同じ様に撮り、中央部を切り出せば表現としては同じになるとも言えるんですけど…
まあ、40-150mm F2.8 PROは、フルサイズの80-300mm F2.8(そんなレンズは無いけど)と同じかっていうと、そうでもないわけだし。
え…ではM4/3システムの利点は単に「同じ画角で撮影するなら、ラージフォーマット機よりシステムサイズが小さい」だけ…と言えないこともないね(^^;

長い前置きで墓穴を掘ってしまうのもishida式ですかね…
気を取り直して、マクロ撮影の基本的なテクニックから。

【絞り・焦点距離による背景の整理・主題の強調】

・同じ位置で撮るなら絞りを開ける

最も基本的な手法ですね。
ずいぶん古い記事ですが、絞りと被写界深度の関係については
こちら、レンズによるボケの大きさについてはこちらで説明しています。

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α77+Macro 100mm F2.8 N F8 1/160 ISO100 (左) F5 1/500 ISO100  (右)

ただし、絞りを開ければ当然ながら被写体のピント位置もシビアになります。
それなりのピント範囲を確保したい場合は、なるべく背景がうるさくならない位置関係を探して撮影するのも現場のテクニックの一つですね。
下の写真は実際には同じ被写体ではありませんが、背景を整理して被写体を強調する一例として挙げます。

リュウキュウルリモントンボは、上の写真では藪の中でトンボに木漏れ日が当たっていて具合が良いと思いましたが、後ろの藪の部分にも日が入っているためちょっと背景がごちゃごちゃしてしまいました。
下の写真はそもそも日陰での撮影のため、均一な草藪なのも相まって背景の明暗差があまり目立たないように撮影できました。

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リュウキュウルリモントンボ Panasonic G9+90o Macro F4 1/200 ISO1000 (-0.7EV補正)

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リュウキュウルリモントンボ Panasonic G9+90o Macro F4.5 1/200 ISO125
0 (補正なし)

ササユリの背景は薄暗い藪ですが、下の写真のように少し低い位置から見上げて撮ることで明暗のコントラストだけでなく木漏れ日の丸ボケが入ってアクセントになりました。

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ササユリ A77+100o Macro F2.8 1/640 ISO100 (-0.3EV補正)

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ササユリ A77+100o Macro F3.5 1/160 ISO100 (-0.3EV補正)

他にも背景をぼかして整理、被写体を浮き立たせる手段としては、

・被写体と背景の距離差を大きくとる

山で見付けたクルマユリですが、普通に花全体を撮る感覚で撮影したのが上側の写真です。
このままだとちょっと背景がうるさいので、もう一歩ぐっと寄ってやや見上げるように撮影して木漏れ日も入れて撮影したのが下側の写真です。
少し余分に絞っても、被写体に対して相対的に遠い背景の後ボケは十分大きくなって、ついでに木漏れ日も入っていい感じになりました。

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α77+16-50mm F2.8 50o F4 1/80 ISO250 花と同じ眼線で何気なく撮影

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α77+16-50mm F2.8  50o F5 1/80 ISO500 花にぐっと寄って見上げるように撮影

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α77+16-50mm F2.8  50o F3.2 1/80 ISO200 絞りをさらに開けて撮影

・同じ大きさで撮るなら、より焦点距離の長いレンズで撮る

次の写真は40-150mm F2.8 PROにMC-20(2倍テレコンバータ)を装着し、実焦点距離300mm F5.6にて撮影した「キチョウ」ですが。背景の草叢はあまり目立ちません。
下の写真は同じくらいのサイズの「マサキウラナミジャノメ」を90mm F2.8 Macroにて撮影したものです。
(絞りの条件が揃ってなくてすみません)
やはり焦点距離の短い90mmで撮影すると、被写界深度だけでなく背景が広く写ってしまうこともあって、背景はどうしてもごちゃごちゃしがちになります。

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E-M1+40-150mm F2.8 PRO+MC20にて 300mm F5.6・1/320・ISO500(補正なし) 

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G9+90mm F2.8 Macroにて F6.3・1/200・ISO640(-0.7EV補正)

【 昆虫などのマクロ撮影でのフラッシュ使用 】

等倍に近い撮影は自然光での撮影が難しいだけでなく、そもそも光量の少ない森の中などでは本来の色合いが出なかったり、ISO感度の上昇による画質劣化、被写体ブレによる失敗などが避けられません。
そこで、フラッシュを使用した撮影をする機会も多いのですが、その場合は
・フラッシュによるきつい影(発光部が小さく、被写体に近いほど不利)
・反射による色味の変化(主に構造色部分や複眼がオレンジ色っぽくなる)
・正反射部分以外は暗くなってしまう(特に艶のある甲虫)
が問題になってきます。
空が大きく開けた明るい場所で撮影する場合、太陽光による直射だけでなく空全体からの散乱光が入るため大型のディフューザーを使っているようなものですが、暗い環境でほとんどカメラ方向からのフラッシュの直射だけだときつい影ができやすいのは当たり前です

多灯フラッシュによる撮影で、アンブレラなどで発光面積を広げたり、光源を多方向から当ててやるのも手ですが、屋外でやるには大掛かりすぎ。

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苦手な「艶ありで濃い体色、奥行きのある体形の甲虫」フラッシュ直射。G9+90mm Macro F10 1/60 ISO200(補正なし)

そこで「フラッシュディフューザー」というものの出番ですが、これまでもフラッシュディフューザーをいくつか試してみた中では決定版といえる物はありません。
最近効果的に使えるなと思ったものをご紹介します。

フラッシュの発光部に被せる方式のディフューザーは、Amazonなどで多く見かけますが、韓国のG−marketで購入した下の物は、マジックテープで固定するタイプです。
一般的なゴムバンドで固定するものと違って、野山を歩き回っても外れることはありませんが、大きさの面から言っても「影の輪郭を優しくする」という程度の効果となります。

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発光部に被せるフラッシュディフューザー。

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等倍に近い撮影のほうが効果が出やすい。 E-M1+60o Macro F8・1/125・ISO320(補正なし)

ディフューザーとしては下のようなものもあって、近接時に効果が高いのがありがたいですが、原理的に光量の無駄が多いので、すぐフラッシュの電池が消耗してしまいます
また、実際に野外のフィールドに出て使うと「視界が悪い」という思わぬ欠点も露呈(^^;。ディフューザー自体に視界が遮られてしまい、被写体との位置関係が確認しづらくなってしまいました。

ゴムでレンズ先端辺りにはめ込んでいるだけなので、TAMRON 90mm Macroに装着する場合、外れないようにレンズフードを取り付けておく必要があります。

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ケンコー 影取りJUMBO 携帯性は良好。

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車の窓に装着するサンシェードのようにくるんと丸めてある状態から展開。

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TAMRON 90o Macroに装着する場合、レンズフードが必要ですね。

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撮影者側から見ると、かなり視界が遮られる(^^;

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撮影時はこんな感じ。

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フラッシュを直射 G9+90o Macro F8・1/60・ISO200(補正なし)

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影取りJUMBOを使用 G9+90o Macro F8・1/60・ISO200(補正なし)

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森の中、木漏れ日の直射日光下・フラシュなしで撮影。 G9+90o Macro F6.7 1/200 ISO800 (補正なし)

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森の中、木漏れ日+影取りJUMBOを使用。 G9+90o Macro F7.1 1/60 ISO200 (補正なし)

室内であれば、天井へのバウンス発光で間接照明的に影を抑えることが可能であることから、強制的に間接照明で発光させるような効果を(簡易的に)求めたものがこれです
「フラッシュディフューザーベンダー L」という名前の商品ですが、本家の「ROGUEフラッシュベンダー」というもののぱちもんのようです。
鉛様の柔らか骨組みが入っていて、ある程度自由な形状に曲げて使用することが可能です。
バウンスさせる角度や被写体との位置関係に合わせて変形させることで効果の出方などを調整可能です。

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ノーブランド品の「フラッシュディフューザーベンダー L」

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背面側に骨組みが3本入っていて、形状を調整可能。

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特に甲虫を絞り込んで撮影するとこうなりやすい。E-M1+105o Macro F9 1/200 ISO800 (+0.3EV補正)

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フラッシュベンダーを使用。E-M1+105o Macro F9 1/200 ISO800 (+0.3EV補正)

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フラッシュベンダーを使用(直射光成分多め)。 E-M1+105o Macro F8 1/200 ISO400 (+0.3EV補正)

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フラッシュベンダーを使用(反射光成分多め)。 E-M1+105o Macro F8 1/200 ISO400 (+0.3EV補正)

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森の中、木漏れ日の直射日光下・フラシュなしで撮影。 E-M1+105o Macro F7.1 1/250 ISO1600 (補正なし)

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森の中、木漏れ日+フラッシュベンダーを使用。 E-M1+105o Macro F9 1/200 ISO1600 (+0.3EV補正)

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フラッシュベンダーを使用(反射光成分多め)。 E-M1+90o Macro F8 1/200 ISO500 (補正なし)

------- ishida式のマクロ撮影の機材と使いこなし、まだ続く(?) -------