FUJIFILM XQ1  (その1:導入編)

FUJIFILM XQ1 (Black)

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2012年末から主力で使用しているコンパクトカメラは「Canon Powershot S110」ですが、携帯性と描写性はお気に入りです。
タッチパネルによる撮影メニューなどの操作は今一つですが、タッチパネルによる画像の再生表示の操作性は最高に快適です。
でも、スキーや登山では電源に低温環境に対する弱点があってちょっとイライラ…。

2013年の後半になって同シリーズ後継機の「S120」っていうのが発売になっています。
フラッシュの手動ポップアップへの変更、コントロールリングのデザイン・操作性などはやっとお言い付けを守って少し改善(^^;
Sシリーズって、モデルチェンジの度に別のチームが交互に世代交代の設計をしているような感じを受けますが、今回は「ほぼS110の弟分」という位置付けの「S200」(コレはS110同様にフラッシュが自動ポップアップ)も登場したので、S120は上級者向けの設計ができたんでしょうか?
レンズや液晶モニタのスペックが向上したこともあって、ちょっと(この場合は買い増しではなく)買い替えも検討しましたが、決定打にならず。
それに、いつもストレスを感じる「露出補正をした際の画面への反映に関する謎の仕様」もS110と同じですし…弟分がほぼS110に近いスペックということもあって「より高級(高価格)化」し、コストパフォーマンスが売りのSシリーズから逸脱している気もします。
何よりも、「変わり映えしない」感があって、ちょっと食指が動かなかったというのが実情です(^^;

で、年度末恒例の行事(?)として購入する候補に浮上したのが「XQ1」というわけです。

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塗装の仕上げや鏡胴などの仕上げは上質で良い。ストラップリングは金属製で両釣り対応。

魅力を感じたポイントは

・ちょっと大きめ2/3型サイズのローパスレスX-TransU CMOSセンサー
・像面位相差AFを搭載
・焦点距離25〜100mm(135換算)F1.8-4.9のレンズ

前任機の「XF1」にも興味を持っていたのですが、凝ったギミックを採用した手動沈胴式のズーム操作は登山では無理(^^;
やはりコンパクトカメラは片手で撮影準備・操作できないと駄目ですよね…(X20のような上級機はマニュアルズームであることが特徴でも良いとは思いますが…)
以前店頭で見た限りではXF1の描写は好印象だったので、この操作性がちょっと残念でした。
そう思った人も多かったみたいで(^^;このクラスに求められる「一般的な仕様」に改めて登場したのがXQ1ですね。
光学系はそのままに、鏡胴を電動ズームに改めると共にサイズも小型化を図って、Sシリーズの競合機として仕立てたものと思います。
(サイズも含めて明確な競合機があったことでXQ1に十字架を背負わせてしまった感もあります…)

仕事で使用しているカメラの中にフジのF70EXRというカメラがあって、これが個人的にはメニュー操作や画質(特にノイズ感や発色)の点ではとっても悪い印象です。
店頭ではその辺りの確認も(あくまで液晶モニタ上ですが)怠りなく…心配は杞憂で、XQ1は同じメーカーのものとは思えないくらい好印象でした。

XQ1の場合、一般的な評価では「ローパスレスのわりに同じセンサーを搭載したX20に比べて解像感が低くて、1/1.7型センサーのS120と大差ない」…みたいに言われています。
男らしく玉も筒も大きいX20と比べてしまえばレンズ性能が劣るのは致し方ない感もありますが、階調性なども含めた大型センサーの利点、FUJIの絵造りにも期待しました。
店頭で触った際にも、起動や操作のレスポンス、AFの速さを感じて好印象です。
特にAFに関しては、いわゆる「像面位相差方式」を採用していることもあってか、けっこうスパッと合焦する印象です。
実際に使ってみると、条件によって像面位相差方式とコントラスト検出方式を使い分けていて、被写体や撮影距離、明るさなどによって像面位相差方式によるAFが働かないケースも多いのですが、それでもそれほどもたつきを感じることなく十分高速なフォーカス速度に感じます。

一眼レフの場合でも位相差センサーは基本的に水平(部分的にクロス)配置ですが、XQ1の場合も水平に位相差画素が配置されているようです。
とりあえず中央のフォーカスエリアで試してみると、横方向にコントラスト差がある(縦縞)場合は位相差方式で合焦しますが、縦方向にコントラスト差がある(横縞)場合はコントラスト検出方式で合焦しているように見えます。
もちろんデフォーカス量が大きい場合には位相差検出は働きませんから、まずは闇雲に大きくフォーカス移動するのは方式に関わらず同じです。
また、フォーカスポイントを固定した条件では、低コントラストな被写体に対してはどちらの方式でもフォーカスできないのは大差ないようです。
ただし、S110と比べると低コントラストな被写体(のっぺりした壁みたいなもの)には特に弱い印象です。
そういった特性を理解して使うことでAF方式の利点を生かすことができますね。
S110でも大外れなのに合焦と判断したり、なんでこれで合わないの?と思わせることが多々あるので、速さを別にすれば実力的には大差ないのかも。

C社の場合、新設計マウント・像面位相差の採用も含めて後出しのEOS−MシリーズでさえAFの遅さを酷評されています。
(期待の大きさもあるのかもしれませんが、先行の他社製品よりはっきり劣っているというのも驚き…)
一眼レフではN社と並んでBig2と称されるC社ですが、ムービーで先行していたS社やP社、映像関係の綜合メーカーであるF社に対しても特許の面でのビハインドが大きいんでしょうか?
…あ、また話が違う方向へ?
後継機であるS120でも、S110ユーザーなら「ああ、S110より高速化したな」と感じますが、XQ1と比べればややもっさりした感は否めません。

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S100での経験をもとに、すぐにグリップを貼ってしまったのでオリジナルの画像がありません(^^;。
(グリップはベース部右上をカットして整形してあります。)

オリジナルのまま1回使用しただけで、すぐにFlip×bacのグリップラバーを貼ってしまったのでグリップ無しの写真がほとんどありません(^^;
グリップ感については親指を置くサムグリップの材質が滑り難い素材なのを除けばS110と大差ありませんでした。
コントロールリングや操作ボタンなどの配置はほとんどSシリーズのパクリと言われても仕方ない造りになっていて個性は感じられません。
タッチパネルはありませんが、E-Fnボタンでの機能切り替えはモニタへの表示も判り易く、カスタマイズも可能なこともあって使い易さを向上させる良い仕掛けと思います。
(Sシリーズの場合はタッチパネル操作で機能拡張しているが操作は使いやすいとは言い難い?)
また、鏡胴周りのコントロールリングは見た目や操作感に高級感があり、形状的にも操作性が高くて良いデザインだと思います。
なんでSシリーズのコントロールリングもこういう風にできないのかな?薄さにこだわったにしても、S110のこの回し辛い形状や見苦しいデザインはないでしょ…(S120でやっと少し改善)
XQ1の外装の仕上げはそれなりに高級感があり、操作感も含めて満足感が高いと思います。

XQ1のほうが鏡胴を含めたボディに厚みがあるのは実焦点距離が長いので致し方ない感もありますが、逆にS110をこの厚みの中に収めたことは凄いことですね。
こだわりの角度を付けたシャッターボタン周りの効果の程は?ですが、ズームレバーのがたつきも無くて操作性は良し。
シャッターボタンの高さにもこだわりがある?(Sシリーズはやはり世代毎にバラバラ)
コマンドダイヤルの径は小さめで中央ボタンは大きめ。グローブでの操作性はちょっと不安?で、周辺ボタンは小さめですが、ダイヤルとの配置や段差は適切かな?
レンズ周りのコンとリールリングは基部がテーパー状になっていてボディ固定、回転するリングのローレット部が基部よりやや大きめの径となっていて操作性は良し。
動きは滑らかで造作も含めて上質感があるが、リングにクリックが無いのは賛否あり。(自分の場合は露出補正に使用するのでクリックはあったほうが良いけど)
ストラップリングが左右にあって造りも凝っているが、自分としては飛び出していないほうが好み。

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シャッターボタンをわざわざ傾けている効果のほどは?ただし、稜線があるお陰でON/OFFボタンは押し易い。

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コントロールリングは操作性が良く、高級感もある。(左) USBコネクタは右側面。(右)

三脚ねじは左寄り(向かって右寄り)に付いていますが、個人的にはコンパクトカメラの場合はレンズ光軸と合っているかどうかにはこだわりはありません。
逆に、ishida式ではクイックシューベースを付けたままにしていることも多いので、三脚に付けたまま電池蓋が開くほうが便利で嬉しいです。これはメーカーの思想か、単なる配置上の都合?
あまり重心からの位置が偏っていて、卓上三脚で自立しなくなってしまうのも困りますが…

ちなみに、HDMIコネクタが電池蓋の横にありますが、カメラをどういう姿勢にして接続するんでしょうか?(三脚にセットすると具合が良いけど…そういう思想じゃないよね(^^;)
基本的にはカメラの底面以外を床に接地させたくないんですけどね(^^)

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雲台に付けたまま電池やメディアを交換可能なのが嬉しい。でもHDMIコネクタがここにあるのは如何なものか?

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背面の操作系と再生画像。(情報表示で撮影設定が表示されるのは嬉しい。) 何故F8で撮っちゃったの…(^^;

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こういう場合に便利な機能なのは認めます。(左) しかし、ケーブルは挿し難くて脆弱な感じ。(右)

最近の風潮に合わせてUSB充電ができるのは便利だが、ishida式には充電器が付属していないのは不親切だと感じます。予備電池も含めて「カメラに入れないと充電できない」っていうのは不便だし、稼働性に問題ありです。
稼働率の低い人のなかには「USB充電できれば十分」という意見の人もいるみたいですが、「USB充電ができれば充電器は不要」という意味ではないですよね?

自分の場合は山に行けば同じような写真や単なる記録のための写真も撮りますので、撮影枚数だけは無駄に多いので、予備電池は必須です。
予備電池を持っていると、自宅でもいちいちカメラに入れて充電するのは手間だし、ケーブルは硬くて自由度がなく、カメラ側のUSBコネクタはひ弱な上に挿し難いし、そんなものを充電中ずっとカメラにつないで放置しておくのって実際どうよ?って思います。
そもそも、ACから充電するときって、コンセント近くにカメラを転がしておくんですか…?

メーカーとしてはUSB充電にすれば電池形状に関係なく同梱物を共通化できるしコストのメリットも大きいのは認めますが、自分が欲しいのは電極の付いた「箱だけ」で良いんだから、お安く提供して欲しいです。
充電器はまだ互換品が出回っていないようで、純正品は発売されていますが5000円近くします…。
以前のタイプの純正充電器は様々な形状の電池に対応していて親切だなと思っていたのに今回は専用品だし、電池をたくさん使うユーザーには却って不親切ですね。

電池は本機で初採用のNP-48という小型タイプで、公称1010mAh(Min960mAh)のもの。S110のNB-5Lは1120mAh(Min1050mAh)ですから、NP-48の容量は90%程度です。
前述のSシリーズを競合としたサイズの呪縛(^^;から、新型の小型電池を採用したと思われます。
今回は公称(自称?)1300mAhの社外製互換電池を購入しましたが、純正電池・互換電池のどちらにしても、XQ1で「S110での低温動作の不満」が解消されるかは未確認です。
電池蓋はスライドロックを解除するとバネで開くタイプで、不用意に開くことはありませんが手袋をはめた状態では操作性は悪そう。

------------------ 2015.01.01 追記 ------------------------

低温動作については、2014年12月27日の「南沢山・横川山」で、氷点下の気温(-5〜-10℃程度)での使用感では特に問題ありませんでした。
低温下で200枚程度の撮影をしたところで、電池警告が表示されましたが、まあこれが普通ですよね。
というか、満充電された電池でも全く撮影できなくなってしまうS-110の低温耐性が低すぎ?
また、手袋をした状態での操作性にも特に問題を感じることはなく、電池蓋の開閉なども手袋をした状態でも操作可能でした。
抑揚のあるデザインのお陰で、電源ボタンも押し易いのが嬉しい。
ただし、背面のダイヤルの操作はやり辛いので、やはり頻繁に操作する露出補正は前側のコントロールリングに割り当てるか、割り切って「Pモード」で使うほうが良いですね。
(Pモードの場合は、デフォルトでコントロールリングの機能が露出補正に割り当てになります。)

--------------------- 追記ここまで ---------------------

絞り開放時のシャッター最高速が1/1000秒なので、晴天時の屋外ではやや不足気味なのが難点です。
これではどうしてもF8などの小絞りを使用する必要があり、ちょっと描写に影響がありそうです。
(逆に、だから「点像復元」機能が必要だったのかしらと勘繰りたくなる(^^;)
Sシリーズは絞り開放時のシャッター最高速が1/2000秒なのに加えてNDフィルターも内蔵されているため、雪景色でもそこまで絞り込む必要はありません。

それと、AEの連動範囲外になった時の液晶表示には問題を感じます。
ishidaが標準的に使用するAモードの場合、例えば連動範囲以上に明るい被写体で露出オーバーの場合でもモニター上の画像では適正露出のように表示されています。
シャッターボタンを押して撮影画像が表示されて初めてオーバーだったことに気付く始末です。
※もちろんPモードではそういうことはありません(^^;

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AモードでSSが連動範囲外(赤文字とLED点滅)表示。モニタ画像は適正に見える。(左) 撮影すると真っ白け。(右)

実際にはモニタの数字の色やインジケータランプの点滅で連動範囲外であることを表示はしているのですが、なんでシャッター半押しでも画像の表示に反映されないの?
そもそもインジケータランプがサムグリップの中に埋め込まれているため、普通に持つと親指で隠されて見えないというトホホな設計…女の子持ちが標準ならこんな所にグリップラバーは要らんし。
その状態で露出補正しても、いかにも連動しているかのように表示が変わるのも非常に不可解(というよりも不愉快)です。
フジのカメラの場合、旧機種では(といってもXS1でも)AF中は画像がフリーズしているというイマイチな仕様が見られましたが、これも作り手側の都合でこうなってるのかな?
せめてシャッターボタン半押し・フォーカス後でいいので露出は反映してよ!と言いたい。
ちなみにS110の場合はメニューの中に「セーフティシフト」という設定があって、これを「入」にしておくと、勝手に露出がシフトされて適正になる機能があります。

あと、細かいところですが…
起動時間が短いのがウリですが、モニタに完全に表示が出終わるまで待ってから操作しないとズームの動作を受け付けないのはちょっとイラ付きます。
SAMSUNG EX1もそうだったけど、すぐにTele端にもって行きたいときなどに反応しないのは自分的には気分が悪いです。
(S110の場合は起動完了まで動作は待たされるが「操作自体を受け付けない」ということはない。)

------------------------- 余談ですが ------------------------------

C社のPowerShotシリーズの最上級機ながら、画質以外の点ではあまり評価されず、技術的にも言い訳が多いことからこのまま放置プレイなのかと思っていた「G1X」ですが、いよいよ後継機種「G1X MarkU」が発表になりました。
(センサーサイズ以外は全くの新設計なのにG2XじゃなくてMarkUって、S社の影響か(^^;)
G1Xへの世間の酷評とは逆に、個人的には「レンズさえもう少しワイドになってくれれば…」と思っていて、今回の購入候補にも入っていたのですが、C社がいよいよ本気を出した新型に大いに期待です。

気に入っている特長(G1Xから継承しているものも含めて)
・バリアングルモニターがチルト式に変更になったが、180°スイング可能なので◎
・レンズは明るいうえにワイド端が24mm相当になって◎
・マクロ機能もアップして◎
・レンズバリアを装備したうえにフィルターアダプタにも対応で◎
・EVF対応になって○(オプションで値段が高いのは×)
・ボディサイズは○
・それなりにしっかりしたグリップ装備○(本当はオプショングリップが標準だったら◎)
・リモートレリーズ(有線レリーズ)対応も○

ということで、ishida式の評価ではほぼ「希望が全部入り」の、次期主力(登山特化?)機候補の筆頭に挙がりました。(低温動作の件は心配だけど。)
が、売り出し価格を見てびっくり、これだったらS社のRX10を買ったほうが幸せかも…(^^;
ここへきてN社も1インチセンサーでこの辺を(また後追いで(^^;)狙ってくるとの噂もあって、一年後に向けての悩みどころかしら?

----------------- 2015.01.01 さらに余談ですが -------------------

2014年には各社が揃って「大サイズセンサーのコンパクトカメラ」のラインナップを充実。
特に1インチセンサー機として「SONY RX-100MkV」「Panasonic FZ1000」「Canon G7X」といった注目機種が登場しました。
前評判の割りに「絞り開放時の描写がイマイチ」感のあるG1X MkUあたりよりも、センサーサイズが適度に小さい1インチ機のほうが、描写としては安心感を感じるものの、相変わらず過度なコンパクト化を競って操作性をスポイルしているS社とC社の製品より、小型でないP社の方に気を引かれる昨今…
是非とも小型化に積極的でない(苦手な?)N社の一日も早い参入を望みます。
P社のLX100のような下克上もあることだし、売れないNikon1シリーズとの整合性を気にするのは止めて消費者ニーズに応えて!!

------------------- FUJIFILM XQ1(その2:使用編)へ続く -------------------