三脚、増殖中です…

「SLIK P500BH-TI」 「K&F CONCEPT KF-TC3134」 など

----------「買っちゃいました、カーボン三脚」の続きです。----------

20歳ごろに行きつけのカメラ屋さんの店頭で買ったのは、ベルボンの角型脚で開脚フリーのものでしたが、雲台だけはSLIKのPRO 3WAY雲台でした。
とにかく嵩張って、フリックロックタイプの脚ロックの操作感が悪かったのですが、三遠南信の谷をうろつき回って滝の写真を撮影するのにザックにくくりつけたりして持ち歩いていました。

本格的な登山では基本的に手持ち優先で三脚は使用していなかったのと、デジタル化してからは「手振れ補正」の恩恵もあって、あまり三脚の出番はありませんでした。
昆虫撮影でも機動性が優先だったため、SLIKのPRO Miniなんかのほうが出番が多かったのでした。
(PRO Miniはサーキットでの流し撮り用にも使用していたので、使用頻度は非常に高かった)

しかし、2011年にカーボン三脚「HORUSBENNU FX-7439TT」を購入してから、思ったよりも使い勝手や携帯性が良くて、一般の撮影では三脚を使う機会が増えたのでした(^^;
2016年以降の沖縄遠征でも三脚は必ず持参(カメラと電池以外の撮影機材は先送りしたけど(^^))。

そうすると贅沢なもので「状況に応じてもう少し安定性が欲しいな」とか、「もうちょっと高く伸ばせると助かるケースもあるな」なんていう欲求(単なる物欲?)が湧いてきてしまうのがishidaのイケナイところです。
実際、三脚はカメラバッグや登山用のザックと同じで、大は小を兼ねるとか全てを満たす万能品ということはないため、用途に応じた三脚が必要なんです…なんていう屁理屈をこねて散財の道へ(^^;

---------------------- アルミ三脚 SLIK P500BH-TI --------------------------

で、車での移動を前提にしたちょっと重めで段数の少ない三脚として2015年10月に(ちょうどAmazonで「輸出専用品の棚ズレ品」としてアウトレット販売されていたのをいいことに)購入したのが「SLIK P500BH-TI」という製品です。

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「SLIK P500BH-TI」この状態で全長710mm。ヘッド部はオリジナルから変更済み。

SLIK P500BH-TI(+付属雲台 SBH-200DQ N)
 重量:2335g(脚のみ:1970g)
 アルミ(AMT合金)3段・脚径:27-24-20mm
 縮長:700mm
 全伸時   H:1372〜1652mm(センターポール調整範囲:280mm)
 2段目まで  H:1000〜1280mm
 1段目まで  H:657〜937mm

実際には箱だって全く摺れていないし、中身も傷一つありません。下手をするとお店で買っても箱は棚摺れしているくらいなので、単に滞留在庫の処分品だったんではないでしょうか?
SLIKのロゴ入りのキャリングバッグが付属していましたが、「この三脚にこの布袋なんですか?」っていう感じの、単なるナイロン製の布袋にジッパーと肩紐がついているだけのものでした。

SLIKがAMT合金と呼ぶ、アルミとマグネシウム、チタンを配合した合金(広義にはアルミ合金)製の脚パイプを採用することで、肉厚を薄くして軽量化を図っているとの触れ込みです。
回り止め溝つきのレバーロック式3段脚、3段階の開脚角度切り替え機能装備ですが、アルミダイキャスト製の本体や脚付け根は見るからに肉厚があって強度はありそうですが、ネジや黒塗装の品位も含めて見た目はあまり高級感はありません。

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センターポールはセンターナットによる固定ですが、フリクション調整付き。
センターポールを途中で分割することで、開脚角度全開時のローアングルにも対応します。

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3段脚を全伸した状態(センターポール調整範囲:280mm)H:1372mm(左) H:1652mm(右) 

三脚単体だとはっきり言ってもっと激安だったのですが、いかにもSLIKという感じのワンレバータイプの自由雲台「SBH-200DQ N」が付属しているもの(定価\42000)を\17600で購入しました。
(2017年現在では、¥28754のお値段が付いている(^^;)
セット品にした理由は、SLIKの自由雲台ってワンレバーでパン/チルトが全てロック・アンロックできてしまうクイック操作可能(パン方向だけの回転はセンターポールを回すしかないけど)なうえに、雲台を90°倒せる位置が周方向の180°対称の位置に2箇所あるのも素敵な中型自由雲台なのがいいなと…。
しかし、この雲台は名前の通り「クイックシュータイプ」なのですが、SLIKのクイックシューって「DIN規格」のクイックシューを謳っていますが、これが本当に汎用性に乏しい印象です。

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標準装備の「SBH-200DQ N」は、いわゆるDINタイプのクイックシュー装備。

DINタイプでもクイックシューの固定自体はしっかりしていると思うのですが、HORUSBENNU FX-7439TTのほうが「アルカスイス」タイプのクイックシューなので、取り付けに互換性がない状態では使い回しもやり辛くなってしまいます。
特に、メインのカメラを「OLYMPUS E-M1」に変更した際に、アルカスイスタイプのL型ブラケットを取り付けたため、基本はアルカスイス互換の雲台でないと困るんです。
(汎用のアルカスイス型プレートも中国製がとても安価に出回っているだけでなく、カメラに合わせて穴位置のアジャストも出来るものが多という利点もあります。)

そこで、FX-7439付属の雲台のシューベース部を交換するために購入していた「SANWAYFOTO DLC-60」をシュープレートの上に取り付けて使用していました。
それはそれで使い勝手は悪くないのですが、いつの間にかこんなものが…

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SBH-200DS(左)と、SBH-200DQ N(右)

たまたまネットで見付けた、国内では売っていないアルカスイスタイプのシューベースの付いたSLIKの「SBH-200DS」を韓国からお取り寄せです。
だったらやっぱり三脚は単体で買えばよかった(^^;
こちらのほうが「SBH-200DQ N」よりも低背だと思ったのですが、実際には拘束部の内部構造のせいで「SBH-200DS」のほうがシュープレートの上面までの高さは若干高いようです。
さらに、「SBH-200DS」のほうは何故かSLIKのロゴと型名の部分がシールになっていてちょっとチープな感じに見えます。それによく見るとレバーの幅が若干狭いとか、何となく謎の仕様違いが…
SLIK純正のシュープレートは見た目は高級感ありますが、接触面がコルク貼り、カメラネジ部分が中央固定で、カメラに合わせてスライドさせることは出来ません。           
(純正品でも、DS-30用シュープレートは長さが70mmと100mmがあって、長手方向にスライド可能です)

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様々な「アルカスイスタイプ」のクイックシュープレート。右下のSILUIのものだけ向きが違う。

中華三脚の場合は、それなりに規模の大きなところ以外は「4段・脚径25o・トラベラータイプ・自由雲台」といったクラスのものが大半なので、このサイズの比較対象はほとんどありません。
少し前に仕事で購入した三脚が同じシリーズの3ウェイ雲台とレベラーが付いたものだったのは偶然ですが、ものすごくデジャヴ感を感じてしまった(^^)
AMT合金を用いた脚パイプは、SLIKのHPによると「通常のアルミなら1.1〜1.2oの厚みのところ、AMTだと0.8oで同等強度」と謳っています。
ただし、脚の締め付けや固定のためにネジ切り加工ができないために、ロックナット方式にできないとのこと。(カーボンパイプでもねじ切り出来ないのは同じで、取り付け部やネジ部は接着が当たり前)

サイズは大型三脚というほどでもありませんが、中型の三脚としては堅牢で、重さと安定性は比例するというわけではありませんが、段数も少なくて全体の剛性は十分です。
ただし、センターポールトップの雲台取り付け部の径は小さめなうえに、取り付けネジのサイズも小ねじ(1/4インチ)です。
ここは心理的な面だけかもしれませんが、安心感という面ではちょっと残念に感じる部分ですね。
外観的にも、脚を固定するネジとナットや本体の塗装面などは安っぽさを感じさせる仕上げです。
中華製のアルミ三脚の場合、無名メーカー品でもSIRUIやBENROなどに準じた部品構成になっており、(絶対的な信頼感は別として)アルミ削り出しのボディやクイックロックナットなども含めて、アルマイト処理なども見栄えがするのと比べると、やはりファッション性でも見劣りを感じてしまいます。

それに、メーカーHPにも「より軽く、本格的な三脚を持ち歩きたい」「コストを優先して検討したいのでカーボンでないものを」というご要望にお応えして、とありますが、前述の薄肉加工された脚の固定や、決して操作性が良いとは言えない開脚ロックの強度などにも、SLIKならではのノウハウが生かされているものと期待します。

なんてことを書いていながら、「SLIK P500BH-TI」よりも軽くて「HORUSBENNU FX-7439TT」よりも大型の三脚が欲しくなって、もう1点追加で買ってしまったのが「K&F CONCEPT KF-TC3134」というカーボン三脚でした。
少し前から目を付けていたものが、2017年3月にちょうどAmazonのタイムセールでお安く(\23999)なったタイミングでの購入です。

---------------------- カーボン三脚 K&F KF−TC3134 --------------------------

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「SLIK P500BH-TI」(上)と「K&F CONCEPT KF-TC3134」(下)

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どちらも「トラベラータイプ」ではなく、脚の反転は不可なので縮長については不利。

K&F CONCEPT KF-TC3134」の実測を含めたスペックですが
重量:2200g(脚のみ:1620g、自由雲台:580g)
縮長:610mm(雲台含む)
全伸時   脚間距離:930mm H:1423〜1684mm(センターポール:0〜261mm)雲台ベースまで1315mm
3段目まで 脚間距離:685mm H:1118〜1379mm
2段目まで 脚間距離:515mm H:842〜1103mm
1段目まで 脚間距離:380mm H:582〜843mm
脚径 1段目:31mm 2段目:28mm 3段目:25mm 4段目:22mm センターポール:28mm
雲台ベース:Φ59mm
となっています。

SLIK P500BH-TI」(+付属雲台 SBX-200DQ)
 重量:2335g(脚のみ:1970g)
 縮長:700mm
 全伸時 H:1372〜1652mm
 アルミ(AMT合金)・3段で脚径27-24-20mm
HORUSBENNU FX-7439TT」(+SIRUI G-10X)
 重量:1225g(脚のみ:980g、自由雲台:245g)
 縮長:420mm
 全伸時 H:1190〜1430mm
 カーボン・4段で脚径25〜16mm

「SLIK P500BH-TI」と比べて雲台がかなり重いためトータル重量があまり違わないので、当初の目的のうちの軽量化はあまり達成できていないのはご愛嬌で(^^;
P500BH-TIが3段脚なのに対してKF TC3134は4段脚なので、全伸時の全高は高くて縮長は短く、一応コンパクト化は達成できました。

付属品としてキャリングケース、六角レンチ(脚の取り付けボルト調整用)と、ショートセンターポール、一脚変身用の接続ネジが付属します。
ケースはおまけとは思えないくらい立派なもので、クッションの厚みや縫製もしっかりしていますしデザインも格好良くて、内部に小物を入れるポケットがあれば100点を付けたくなる造りです。
ペラペラの布袋しか付属しないSLIKとかベルボンには「もっと頑張れ」と言いたくなるくらいだね。

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全高105mm、ボール径44mm、重量580gと、かなり大きな(重い)自由雲台が付属。

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全高89mm、ボール径32mm、重量370gの「SBH-200DS」との比較。

付属の自由雲台は同じくAmazonで売られている他のK&F CONCEPTの三脚よりも大き目のボール雲台で、ボール径は44mmくらい、パンとボールロック、ボールのフリクション調整の3ダイヤル式のものが付いています。
カメラの取り付けはアルカスイス互換のクランプですが、脱落防止機構は「SIRUI」のような雲台側からロックピンが飛び出すタイプです。
自分の場合は、一般的なアルカスイス互換品のようにシューの裏側に脱落防止ネジの頭が出ているのは好きじゃないのでこちらのタイプのほうが良いです。
しかし、受け取ったものはここのピンの動作が悪く、動作が引っ掛かったり引っ込んだままになってしまったりする状態でした。
スライドピンの抜け止めのイモネジを調整してみても改善せず、ネジを外してみると、組み立て時にイモネジを締めすぎていたのか内部に傷が見えます。
K&Fに連絡を取り、ちゃんと動作確認のうえでクランプ部分全体を交換用に送っていただけるように依頼し、一週間ほどで中国から送られてきたものを自分で交換しました。
中国本国の担当者と直接メールをやり取りしたのですが、この時のメールのやり取りや対応はそれなりに好感が持てました。

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脚径は1段目:31mm 2段目:28mm 3段目:25mm 4段目:22mm(2、3段目にグリスが付着している)

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加工の精度もわりと良さそうなロックナットとコレット。

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内部に周り止めのリブが成型されたフルカーボンパイプを採用。(左) 取り外し可能な脚部にはゴムパッキン。(右)

主脚、センターポールともに回り止めパイプを使用し、カーボンの綾目模様は今風で格好良く、外観のポイントになっているだけでなく高級感さえ感じます。
ロックナット内部のグリスがパイプに着いてしまうため、余分なグリスの拭き取りのために分解してみたところ、パイプ自体は内側にアルミのスリーブを持たないフルカーボン製で、回り止めのリブも一体で成型されていました。(スリーブやコレットの加工自体もわりと高精度な感じに見える)

脚伸縮用のロックナットは、いわゆる「スピードロック」と称する、90°程度回転させるだけでロック/アンロックが可能なものです。
ただ、見た目とは裏腹に、ロックナットの回転や、脚の伸縮にはやや抵抗感があって、操作感自体は精密感は感じられないのがやや残念。
脚先端の石突きはゴムのみで、スパイクとの切り替えはできません。(3/8ネジなので、ベルボンなどで売られている交換用の石突きが使えるかもしれませんが、未確認です。)
脚を折り畳むとセンターポール末端のウェイトフック部にカーボンパイプが当たりますが、当たる部分は軟質のゴム製なので大丈夫です。
(最初は硬質樹脂にカーボンパイプが直接当たる設計なのかと思ってびっくり(^^;)
センターポールの上下反転や、ショートセンターポールへの交換時にはフックを外してからセンターポールを引き抜く必要があります。

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センターポール下部のウェイトフック。(左) フックはネジ式で、基部は軟質の樹脂製。(右)

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ショートセンターポールはアルミ製で簡易的な造り。(左) 雲台受け部はセンターポール上部に嵌っているだけ。(右)

雲台ベース(雲台下の丸いオレンジのパーツ)は、雲台を取り付けることで固定されるだけなので、雲台を取り外すと外れてしまいます。
頻繁に着け外しするわけではありませんが、ちょっと簡易的な造りですし、写真で見ると穴が開いているので雲台の回り止めネジ穴が空いているのかと思ったら単なる肉抜きでした。
雲台取り付けネジは3/8インチと、反転させることで1/4インチネジへの切り替え可能ですが、雲台ベースとの位置決めは無くてどこまでもねじ込めてしまいます。
ローアングル時に使用するショートセンターポールはアルミ製ですが簡易的な工作(?)で、やや品質感は悪いし、そもそも組み替えるのも面倒です。
カーボン製のショートセンターポールが付属しているものや、ポールが分割式になっているものに比べると、見た目・使い勝手ともやや残念感があります。
(このクラスの三脚で脚全開のローアングル撮影はあまりしないかなとも思いますが)

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センターポールはセンターナット式で、コレットに周り止めのリブがある。

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本体はトライアングル部とセンターポールのコレット部の上下2部品。

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雲台の受けを外したところ。(左) 3段階の開脚ロック部。(右)

全体の印象としては、設計的、部品加工的にはそこそこ高度なレベルにあるものの、やはりまだ先行の「SIRUI」や「BENRO」とは品質に差があるなという印象です。
全体的にグリスがあちこちに付いている(塗布量や位置の管理の問題?)とか、部品加工後についたと思われる打痕や組み立て時についた様な傷もあり、ボールロックノブは少し傾いて付いてるし、前述の組み立て不良による不具合品が出荷されるなど品質管理面でいまひとつの点も見受けられます。
が、コストパフォーマンスだけでなく、サービス面での対応も含めて他の無名の中華製カメラ用品メーカーの中では頭一つ抜け出しているかなと思いました。
実際、K&Fはマウントアダプタでは一大勢力になりつつある感もあるし、2017年のCP+では正式に初出展、焦点工房が国内正規販売を始めるようです。
ただ、ここまで述べた通り、三脚としてみる限りは「SIRUI」「BENRO」が一流の仲間入りしているのに比べると品質面ではまだまだ改善の余地が多々あると思うので、今後ますます精進して欲しいですね。

------------------------------ 2019年2月 追記 -------------------------------------

用途を広げるために、ギア雲台「BENRO GD3WH」を組み合わせてみました。詳細は別途

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---------- この先、三脚のアップグレードやら、小型三脚も増殖中(^^; ----------