内蔵フラッシュと外付けフラッシュ、フラッシュ撮影の応用術

今では一眼レフにもフラッシュを内蔵しているのは当たり前ですね。ishidaはずっとフラッシュ無しの期間が長かったため、フラッシュを使いこなしていない気もして、偉そうに人様に向かってウンチクを垂れるのも恥かしいですが…

フラッシュのガイドナンバー(GNo.)と到達距離
ガイドナンバーというのは、フラッシュがどの程度の光量を発生することが可能かを表す数値です。
例えば、GNo.56のフラッシュを使用した場合、ISO100、絞りF5.6の場合で
56÷5.6=10m(GNo.÷絞り=撮影距離)
ということで、10mの位置で適正露光となります。
逆に、被写体までの距離が5mだったら
56÷5≒11(GNo.÷撮影距離=絞り)
ということで、絞りをF11にすると適正露出になるといえます。
(ISO感度が倍になる毎に、√2倍の係数を掛けます)
かつては、「自動調光フラッシュ」というものが無かったので、通常はいつも「フル発光」(または定量発光)していました。

実際には現在の殆どのフラッシュは「自動調光フラッシュ」となっていて、それ以下の距離の場合は早めに発光を切り上げて適正露光となるように制御されますので、上の最初の例の場合は「最低撮影距離〜10mの範囲までは適正露光とすることが出来る」と考えていいと思います。
自動調光機能のおかげで、選べる絞り値の幅も広がりました。

もうひとつ、忘れてはいけないのが「フラッシュの照射角」というやつです。
一眼レフ用の場合、広角側はどの焦点距離のレンズまでカバーできるかということです。
通常は28mm〜24mm程度をカバーするようになっていますね。(ただし、APSサイズセンサーを使ったデジタル一眼レフの場合はイメージサイズが小さいため「24mmまでの画角をカバー」と書いてあっても、実際にはフルサイズの24mmの画角より狭い。)

外付けフラッシュと内臓フラッシュの画角と撮影距離のイメージ


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フラッシュの照射角は、一般的には中心光量に対して1/2になる範囲を有効照射角と称していると思います。(メーカーははっきりと公表していないと思いますが、リバーサルフィルムでの再現性から考えると、これ以上低下しても良いとは言えないと思われます)
特に内蔵フラッシュの場合、最短撮影距離での画面の下側をカバーしつつ遠距離での上側をカバーするように照射位置が決まっていると思われますが、発光部自体も小さく、かなりシビアなのではないでしょうか。
超広角レンズ使用時やマクロ撮影時はレンズの影が出来やすいのもデメリットの一つです。


外付けフラッシュの場合は、光軸から上側のオフセットが大きいため、近距離はやや苦手と考えられますが、バウンス機能やズーム連動機能、ワイドパネルの装着で広い画角をカバーすることが可能となっています。

内蔵フラッシュと外付けフラッシュの違い
内蔵フラッシュのGNo.は私のカメラで12ですが、他のものも概ね同程度でしょうか?
それに比較して、外付けフラッシュの場合はクリップオンタイプ(カメラのホットシューに直接付けるタイプね)で24〜56程度のものが一般的なサイズです。
電源も単三電池を4本程度使うものが一般的で、それ以外に大容量の外部電源を使用可能なものもあります。
違いとしてあげると
@内蔵フラッシュは光量が少なく、フラッシュ光の到達距離が短い。外付けフラッシュは大光量で到達距離が長い。
A内蔵フラッシュはカメラの電源で充電し、充電時間が長い。外付けフラッシュは別電源で、充電が早い。
B内蔵フラッシュは発光部の面積が小さい。外付けフラッシュは発光部の面積が大きい。
C内蔵フラッシュは発光部の位置がレンズの光軸から近い。外付けフラッシュは光軸から遠くできる。
D外付けフラッシュにはズーム連動機能などによる到達距離延長やワイドパネルによる画角に対する応用機能がある。
E外付けフラッシュにはバウンス機能で間接照明としたり、延長ケーブルで光源の位置を変えるなどの応用ができる。
F外付けフラッシュにはフラット発光機能によりハイスピードシンクロに対応可能なものもある。
G外付けフラッシュは持ち運びに不便で、別に電池なども持ち運ぶ必要がある。
それ以外にも、内蔵フラッシュと複数個の外付けフラッシュを使って多灯発光させたり、内蔵フラッシュとの組み合わせでワイヤレス発光させるなどの応用も可能です。

フラッシュの同調速度って何?
一般的な一眼レフのようにフォーカルプレーンシャッターを備えたカメラには普通「フラッシュ同調速度」というものがあって、それ以下のシャッタースピードでないとフラッシュ撮影できません。
今時のカメラはフラッシュ撮影の場合は自動的に同調速度に設定されますので、それほど意識しないかもしれませんね。
フォーカルプレーンシャッター以外の形式のシャッターをもったカメラの場合は、全てのシャッター速度で同調可能なものもありますね。
フォーカルプレーンシャッターの場合を例にとって、イラストレータ(自称)のI田先生作のイラストを借用して説明します。
(「人さまの資料のパクリではなく、ちゃんと自分で考えて書いてみました。」…I田先生の談)

シャッタースピードとシャッター幕の動作

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フォーカルプレーンシャッターの場合、先幕と後幕が時間差をもって動作することで露光が行われます。
シャッター速度の違いにより、先幕と後幕の状態は図のようになっています。
上の場合、1/250秒の場合は先幕が開き切る前に後幕が動作し始めています。
ですから、シャッターが全開になった状態はありません。
通常は先幕が動作完了した状態(図のAの位置)でシンクロ接点が働いてフラッシュが発光します。
1/250秒以上のシャッター速度の場合は、その時点では後幕が閉じ始めていますから、フィルムの上側がケラレてしまいますね。
1/125秒であれば、先幕が動作完了してから後幕が動作を始めるまで、シャッターが全開の時間(A〜Bの期間)がありますので、Aの時点でフラッシュを発光させればフラッシュ光がケラレることは無い訳です。
同調速度を速くするためには「幕の動作速度」自体を早くする必要があり、シャッターの高性能化が必要となります。かつては横走りだったフォーカルプレーンシャッターも、縦走り化(移動距離を短縮するのが主目的だった)でかなり高性能化していますが、振動や耐久性、チャージ速度など課題が多くあり、限界があります。
ニコンなどではチタン幕のシャッターなんていうのもありましたね。


最近のカメラでは、機械的なシンクロ接点ではなく電子信号でフラッシュの同調を行うため、前述した一般的な「先幕シンクロ」だけではなく、「後幕シンクロ」という機能をもったものも多くあります。
つまり、図のBの位置でフラッシュを同調させてやることで、より自然な残像を残してやることが出来ます。
ただし、実際のシャッターのタイミングよりも遅れてフラッシュが発光するため、特にスローシャッターの場合は被写体の位置がずれることを頭に入れて撮影しないと失敗の元ですので御注意を。

フラット発光によるハイスピードシンクロ機能をもったフラッシュもあります。
絞りを開き気味にして速いシャッタースピードを切りたいポートレートなどで、日中シンクロで補助光を入れたい時などに有効な機能です。
これは、通常は非常に短い時間で発光するフラッシュを、低光量で長時間発光させる(つまり、先幕の動作開始直前に発光開始し、後幕の動作完了まで光り続ける)ことで同調速度の制約を無くしてやるというものです。
しかし、フラッシュのコンデンサーに蓄えられる電荷の量には限りがありますので長時間発光=低光量という制約があり、あくまでも補助光としての使用に向いたものです。

 

フラッシュによる赤目現象
日本人の目では意外に起きにくい赤目現象ですが、青い目の人たちの場合は虹彩の色が薄いためか、かなりの頻度で起きるそうです。
これは、暗い場所で瞳孔が開いた状態でフラッシュ光が入射すると、網膜に反射した光(再回帰光)が赤く映るのが原因です。
よくテレビなどで夜の野生動物を撮影すると目が光って見えるあれと同じ現象です。(知り合いで、赤目の頻度が飛びぬけて高い人がいますが、野生動物ではないようです…)
では、どうすれば赤目になりにくいんでしょうか?
原理は交通安全の反射板などと同じことなので、再回帰しにくい状態、つまり光源と視点(カメラ)の位置をずらせば回帰しないということです。(反射板も、自分が照らしてやると光って見えますが、あさっての方向から光を当てても光って見えませんよね)
ということで、
@光源(フラッシュ)と視点(カメラの光軸)の距離を離す。
A瞳孔を小さくする。
B目線をそらす(^^;
といった対策がとれます。
外付けフラッシュの場合、レンズとフラッシュの位置が離れるため赤目になりにくいわけです。
また、「赤目軽減発光」と称して、フラッシュを一度プリ発光させ、瞳孔が小さくなったところで本発光して撮影する機能が一般化していますね。
ただし、瞳孔の反応速度を想定して、かなりタイムラグが大きいため撮影される側もイマイチ判り辛く、どうしても眠い顔になってしまう(^^;という弊害もあります。
撮影する立場からしても、どうにも馴染めず、いただけませんねぇ。
使う場合は、撮られる側の人にも「2回光りますので、気を抜かないでね」と必ず言っておいたほうが良いカモ。
(昔のコンパクトカメラは極力レンズとフラッシュを離すため「ポップアップフラッシュ」というものが多かったのに、最近では小型化最優先のカメラばかりで、赤目軽減発光機能でお茶を濁しているカメラが多くて納得いかんなぁ…)

その他、フラッシュを使った撮影の応用や裏技(?)
偉そうに言えるテクニックはありません(^^;
マクロ撮影時の工夫として、こんなこともやってますという紹介くらいです。
・マクロ撮影用ライトガイド
以前はDiMAGE7iでよく使っていたのはボール紙と白紙、アルミ箔等を利用したライトガイドです。
これはクローズアップレンズを使用してもレンズの影が出来ないように考えたもので、それなりに効果あり。
一眼レフ+外付けフラッシュでは牛乳パックを利用して作ってみましたが、なかなか上手くいきません。
普通にレフ板を使った方が効果的なようです…最新情報はこちら

・影とバックの明るさの工夫
これはテクニックなんでしょうか?という気もしますが御紹介。
背景がそれなりにフラットで面積のあるものであれば、フラッシュ使用時の最短撮影距離を無視して撮影しています。
背景からの反射光に期待する部分と、本来のフラッシュの直射光によって背景が暗くならない撮影が出来る条件もあります。
判りにくいのでまたI田先生からの借り物の図(^^)で説明します。

@地面の上などフラットなところで、遠い背景がない場合はレフ板を使った撮影で被写体の影を軽減することが出来ます。
レフ板はカメラ店で折り畳み式の物を購入するのも良いですが、自分で工夫して作ってみるのも楽しいですよ。
A逆に、後が壁などのような場所では、壁をレフ板として使用したり、本来の直射光が壁にあたることでバックとの輝度差が少なくなるような撮影も可能です。
そうでなくても外付けフラッシュの発光部は大きいため、普通に撮影しても内蔵フラッシュに比べれば影の輪郭はきつくなりません。
B上記のような条件で内臓フラッシュを使うと、影がかなりきつくなります。
逆手にとって、バックを真っ黒く写すつもりであれば意識して黒バックに被写体が浮き出るような写真を撮っても構いませんね。

バウンス撮影など、いろいろ実験してみた結果はこちら。もう1件、こちらも経験から導いた裏技(?)みたいなもの。

@バウンスして間接照明 A直射光で背景を照明 B内蔵フラッシュで安易に撮影

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外付けフラッシュ使用で背景までフラッシュ光が回った作例
マクロ100mm(150mm相当)F6.7(内蔵フラッシュでは背景の地面まで光が届かない)
絞りを絞りすぎると背景が暗くなるので注意。ISO感度を上げてやるのも有効です。

 

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外付けフラッシュ使用でバックにすぐ壁がある場合
被写体がくっきりするだけでなく反射光により光が回り込んで陰影がきつくなりにくい。
壁に影が映らないように注意が必要です。

 

内蔵フラッシュでマクロ撮影する場合は、絞りも小絞りで撮影することが多いので、自然光の比率が少ないためにバックが暗くなりやすいのでより注意が必要です。

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内蔵フラッシュで撮影 マクロ100mm(150mm相当)F13 どちらも絞り込んでいるため影はきつめ。
奥行きが広く写っているため、バックの奥行き方向が露出アンダー(左)
やや俯瞰で撮影することで奥側が露出アンダーにならないようにした(右)

・直射日光下での影の軽減
これはマクロに限りませんが、直射日光下で撮影した場合は影の部分が黒つぶれしやすいため、弱めのフラッシュ光でシャドウ部を浮き立たせてやることも効果的な場合があります。


 

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フラッシュOFF、直射日光下の半逆光で撮影
影の濃淡がきつめに出る。(コントラストが高めの描写になる)

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上と同じ条件でフラッシュONして撮影
影のつぶれが軽減される。(ただし、描写はやや平板になる)
目立たないながら、フラッシュによる影も出ています。

 


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こちらも直射日光下で、フラッシュOFFで撮影したバッタ。
被写体だけでなく背景の陰影も強くてやや目障りです。

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フラッシュONで背景の影も軽減されて目障りさがやや軽減されました。
意図的ではありませんがたまたま…

・君の瞳にキャッチライト(^^)
ポートレートなどの場合、補助光としてフラッシュを使うことで瞳の中にスポット光の反射が現れて表情が生き生きして見えます。
これは虫や動物の撮影でも結構有効な場面もあります。ただし、昆虫の場合は「複眼」なため、かえって煩わしい反射光が現れることが多くあります。(赤目がいっぱいで「目がギンギン」に見えたりとか)
また、人物の場合は光源の形状が現れるため、リング型や星型のアタッチメントを自作すると面白いかも…(試してないです)

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フラッシュ光で瞳にキャッチライトが入って少女漫画風になった(?)チャスジハエトリ
 

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複眼の大きい昆虫は上のように「目がギンギン」になってしまうことが多いので御注意を。