SONY α77  (その2:使用編@)

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まずはこの製品「α77」の特徴的な部分をおさらいすると

・「一眼カメラ」などと称していますが、「一眼レフ」ではありません。

各メーカーが「デジタル一眼カメラ」という表記をしていますが、一眼レフではない一眼などという定義は存在しません。業界のいう「ノンレフレックスカメラ」っていうのもちょっと変だし…。
外観も一眼レフのようなスタイルであるだけでなく、一眼レフ「αシリーズ」のレンズシステムを利用していますが、レフレックスファインダーを持たないため「一眼レフ」ではありません。
一見すると、SONYが「トランスルーセントミラー」と呼ぶクイックリターンミラーのように見えるものが付いていますが、固定式のため撮影時も可動しません。
これは、一眼レフのペンタ部に相当する部分にある位相差測距センサーに光の一部を導くためのハーフミラーです。
このハーフミラーを透過した光線が常時センサーに入射しているため、普通のコンパクトデジカメやマイクロフォーサーズのように常時ライブビューとなっています。
(ライブビューっていう言葉も定義自体が不明確ですが…)
ライブビューの映像を背面液晶モニターに表示するだけでなく、ファインダー像もライブビュー表示する「EVF(Erectric View finder)」です。
余談だけどY電器で店員に「デジタル一眼は初めてなんだけど、このパナソニックのGX-1とG5だと、どっちが良いかなあ。」って訊いてるのを見掛けた。
世間一般の初心者の方は「デジタル一眼」ってうものの認識はそんなもので、そもそも電気屋の店員さんにそんな質問をするんだ…ってびっくりした。

・EVFは現状の製品では最高画素、約235漫画素の有機ELを採用。

画素数が最高なだけでなく、ファインダーに有機ELを使っているのも世界初。

・新方式の三軸チルト液晶モニターを採用。

・APS-Cサイズセンサーとしては(登場時)最高画素数の2430漫画素のCMOSセンサー。

・ミラーアップが無く、トランスルーセントミラーによって露光中もAFセンサーに光が導かれているため、AF追従で12コマ/秒の連射が可能。

ただし、速度優先AEモードという絞りに制約のあるモード、息つきなく連射可能な枚数は17枚(Lサイズ、JPEGファイン)まで。
通常の高速連射モードは8コマ/秒ですので、それでも十分高速。
ただ、8コマ/秒でも画像サイズL(24M)だけでなく、M(12M)やS(6M)にしても連射可能なコマ数は最高でも18枚のままみたいで、そこから先はバッファ開放次第なので息つきが短くなるだけのようです。
せめて、Mサイズなら息つきなく無限連射できる期待をしてただけに、大いに不満。

・トランスルーセントミラーによって露光中もAFセンサーに光が導かれているため、動画撮影時も位相差AFが可能。

被写体がフォーカスポイント内にあるなら「デフォーカス量」が判る位相差方式は高速なAFが可能で、コントラスト方式に比べて行ったり来たりが無い。(原理的には)
このシステムを採用したSONYの主目的はこれでしょ?
個人的には動画は重視していないです。便利なら使うかも?という感想。

2012年に、撮像面上の位相差画素を使ったものも登場してきていますから、いわゆるミラーレス機(α77も含む)の主流はそっちになるんではないでしょうか。
もちろん、撮像面上の位相差画素に対して現行のセンサーの方が基線長が長く取れると思うので、機動性を求められる高性能一眼レフは現行の方式をとるべきでしょう?

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α77+16-50/F2.8 SSM 一眼レフのようなスタイルはαシステムを機動性良く使うための必然。

@ 個人的に最も気になっていた「EVF」の使い勝手について

これまでのEVFを装備したデジカメの中で最高画素数のファインダーであり、応答性に優れるという有機ELを使用していますが、実際にマクロ撮影時のピント合わせは光学ファインダーに比べてどうよ?というのが第一の疑問でした。
店頭で触ったりした限りでは、コントラストの低い被写体に対しては不安感はありますが、OVFだってそういう被写体でのピント合わせは難しいのが現実です。
自分がメインで使う装備とシチュエーションでの使い勝手は(買ってみないと)よく判りませんね。
実際に購入して、屋外でのマクロ撮影などで使用してみた印象は、等倍での昆虫撮影にも十分使えるという感触です。

使用した感想は
・ファインダー倍率が高くて見やすいファインダーだが、「画面」を見ている感じは最初は違和感がある。(そのうち慣れる?)
・自分としては表示遅れは感じない。
・ピントの山は掴みやすいが、小さな対象に対しては画素の限界を感じる時もある。
・ファインダー像に露出が反映されるため、補正などの効果が確認しやすい。
 (忘れん坊のishidaには補正の戻し忘れ防止の効果も絶大か?)
・逆光時や暗いシーンでも露出を反映した明るさで見えるため老眼に嬉しい(^^;
 しかし、暗いシーンでは思ったよりもノイズによるちらつき感があるので、室内などでは光学ファインダーの方が見やすい。
・グリッドや水準器、各種情報の表示/非表示を切り替えて撮影できるのは便利。
 表示のパターンも細かく設定できて、不要な表示だらけで見難いということも無いかな。)
・当たり前だが、ファインダーを覗いたまま画像の再生・確認が出来るのは非常に便利。
・MF時のピント拡大機能は便利だが、シャッター半押しで拡大のキャンセルは「する/しない」を選べると良い。
左下に全体の中の拡大位置を表示しているのに、サムネイル画像が表示されないのは(処理速度の問題と思うけど)不親切。

ということで、少なくともガラスペンタプリズムじゃない入門クラスの一眼レフのしょぼい光学ファインダーなんかと比べたら、明らかにメリットが上回ります。
中級クラス以上のガラスペンタプリズムを装備した一眼レフと比べても、総合的には遜色ない出来栄えでしょう。
(越えたと言えないところが現在のレベル。技術が進歩した将来的にも越えるのは難しい差はありますね。)
好みもありますが、自分の場合は「画面を見せられている感じ」にはすぐに慣れてしまいました。

A スマートテレコンと拡大ボタンの機能割り当てについて

「スマートテレコン」機能も、実際には単なる「中央切り出し」には違いありませんが、昆虫撮影などでは不必要な部分をトリミングする機能として考えればファイルサイズの節約にもなります。
(いつも撮影後、帰宅してからトリミングしていたのを考えれば十分使える機能です。)
そもそも、機能としては簡単な「中央切り出し」をしているだけですが、ファインダー像もちゃんと拡大されるのでマグニファイヤのように使えて便利なんです。(これはEVF機の大きな利点。)
この機能を使いたい場合、デフォルトでは「拡大ボタン」に割り当てられ、この「スマートテレコン」機能を使う場合は「MF時のピント拡大」ボタンとしては使えません。
そこで、他のボタンに「MF時のピント拡大」機能を割り付けてやる必要があります。
割り当て可能なボタンは「ISO」「AF/MF」「AEL」の三つのボタンですが、どのボタンも額面通りに使いたいボタンです。
現在は、試しに「ISO」ボタンに割り当てていますが、ISOを切り替える際には「Fn」ボタンでメニューを表示させてから選択する必要があり、やや不便です。
それに、「ISO」ボタンは人差し指で操作するため、ピント拡大したいときにシャッターボタンに置いた指をいちいち置き替える必要もあます。
シャッター半押しで拡大が解除される仕様も相まって、ちょっと人差し指が忙しすぎ。
「拡大ボタン」をピント拡大、「ISO」を「スマートテレコン」に割り当てたほうが良かったかしら…?でも、位置的にはやはり親指を遠くにもってゆく必要があり、マクロ撮影時のカメラホールドには不利です。
やっぱり親指で操作できる位置の「MOVIE」ボタンに割り当てたいのが強い希望です。
露出補正は後ろダイヤルに割り当てているので、「+/−」ボタンにピント拡大を割り当てできるようにしてくれても良いですけど。
ネットで見ても、「MOVIE」と「?」ボタンに他の機能を割り当てたいっていう意見が多いようですね。ファームアップで対応を強く希望!
※現状は機能としては共存できないので、スマートテレコン機能を使用中に「ピント拡大」を行うと、スマートテレコンは解除されてしまいます。

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通常の撮影状態。6000×4000 Pixel(左) スマートテレコンで1.4倍。4240×2832 Pixel(右)

P1060700.jpg - 38,754BytesP1060701.jpg - 37,605Bytes 
スマートテレコンで2倍。3008×2000 Pixel(左) 拡大ボタン押して拡大位置を指定。エリアを移動可能。(右)

P1060704.jpg - 38,348Bytes P1060706.jpg - 37,587Bytes
拡大ボタン押しで5.9倍に拡大。移動も可能。(左) 拡大ボタン再押しで11.7倍に拡大。(右)
※左下の拡大エリアが表示されているが、画像が無いためフレーミングは確認できません。

B あまり大きい声で威張れない画質について

技術の進歩を不必要なほどの高画素化ではなく、高感度性能や低輝度時のノイズ低減に使えばよかったのに…っていうのが一般的な言われ方です。
一世代前の1600漫画素センサーを使った機種よりも高感度時のノイズは多いというのは事実ですよね。
ですから、お星様とかを撮るのが目的なら、もちろん別の機種がお勧めです…。
逆に、十分な光量がある条件であれば中級機として満足のゆく画質だと思います。
(他社の同等クラスのカメラのほうが画質が良いっていう類の、センサーサイズや画素数が違う機種との比較はナシで(^^;)
JPEG画像を基本に話をすると、実際、1600以上の高ISO感度での撮影ではノイズリダクションによるディテールの喪失を如実に感じます。
また、低感度でも等倍で見ればボケの境界や低コントラスト部分には塗り絵チックなめらめらとした感じも散見されます。
(撮影画像をカメラのモニタで確認すると、本来とは違ってもっと悪く見えるので注意。)
とはいえ、巷で叩かれているように「画質が悪い」というわけではなく、ちゃんとしたレンズを使えば高画素の鮮明さを味わえますし、色ノイズは少な目と思います。
ただ、ファイルサイズ的にも2430漫画素(JPEG・エクストラファインで9〜14Mバイト)っていうのはちょっと画素数が多すぎな気がします。
自分としては、高画素の利点を小型の昆虫などを対象としたマクロ撮影に生かしたいですね。

DSC03321.jpg - 85,887Bytes
A77/SIGMA 70mm Macro 1/125・F9・ISO AUTO(800)で撮影。JPG・エクストラファインでファイルサイズは11MB。

DSC03321_2.jpg - 175,057Bytes
頭部を等倍切り出し。JPEGで再保存していますが、概ねこんな感じ。リンクでBMPファイルが開きます。

C 三軸チルト式背面液晶モニター

これは使ってみると自由な位置に配置できてけっこう嬉しい。
常時ライブビューしているカメラなわけですから、いちいちモードを切り替えたりすることなく(コンデジ感覚で)背面液晶を撮影に使えます。
EVFと背面液晶の切り替えは自動に設定していますが、切り替えのレスポンスも問題ありません。
横位置であれば、ローアングル時も横開き式のバリアングルモニターのように光軸から大きく外れないため、積極的に使いたい気になります。
しかし、縦位置で90度回転させて使った後で元に戻そうとすると、何が何だか良く分からなくなってしまいそう。
構造的にも複雑ですがひ弱な感じはなく、モニターの表示品質も良い感じ。
ただ、構造上モニター面が出っ張っているため、ファインダーを覗くとモニター表面に鼻を押し付けてしまい、鼻の脂だらけになります(^^;

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ウェストレベル的なアングル。回転させず、通常位置から持ち上げるだけでセット可能なのは○。

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超ローアングルなど。このまま手前に引き出せば、カメラから離した位置にもセットできます。

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縦位置での使用だけでなく、後ろにスペースが取れないケースでもOK。

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このカメラでするかどうかは判りませんが(^^;セルフタイマー撮影や自分取りも。

D 電子先幕シャッターを採用

他社では既に搭載されているものもありますが、ライブビュー専用機なら採用は必須でしょう。
電子先幕ではない場合、常時シャッター幕が開いた状態でライブビュー表示している状態から、一度シャッターを閉じ、再び先幕が走行して露光開始・後幕が走行して露光終了するプロセスになってしまい、シャッターのタイムラグが大きくなってしまいます。
「おまけ」的なライブビュー機能であれば納得のうえ使えばいいわけでしょうが、このカメラの場合は常時そういう状態っていうのは中級機としては論外なレスポンスになってしまいます。
ちなみに、取扱説明書には「ミノルタ、コニカミノルタ製レンズの場合は電子先幕シャッターをOFFにして下さい」って書いてある。
実際にはミノルタの第一世代、第二世代のレンズもそのまま名前だけSONYブランドになって販売されているものもあるので、額面通りには受け取れませんね。
Aマウントは絞り駆動がボディ側制御のメカニカル連結であることから、全てのレンズで制御遅れなどの検証が出来ていないだけのような気がしますが…。
今のところ、ミノルタ製レンズのマクロ100mm/F2.8 N(いわゆる第二世代)では問題を感じません。
逆に、「こういう条件でこんな不具合が発生する可能性がある」っていうのをはっきりさせておきたい気もします。
レンズのブランドにかかわらず、大口径レンズで高速シャッター速度で使用した場合にボケ像が欠けたりする現象も起きる可能性があるので、「その際は電子先幕をOFFして下さい」としています。
電子先幕の露光進度と後幕の走行速度が(メカニカルシャッターと違って)完全に一致しないことから起きる現象でしょうか。<また能書きが多い?

クイックリターンミラーがないことから、ミラー駆動時間やミラーショックが無いのもあわせて、電子先幕シャッター使用時のレスポンスは良好です。
シャッターのタイムラグが短いのは、ミラーショックが無い事と併せてマクロ撮影には非常に有難いです。人間のタイムラグのほうが気になるけど…
絞り駆動は前述のようにボディ側からのメカニカル駆動ですから、小絞りになればなるほど「絞り駆動時間のタイムラグ」はあります。
(後発のキャノンのように絞り駆動もレンズ側に持たせた完全電子マウントのほうが、より利点が生きるはず。)
試しに電子先幕をOFFにして撮影すると、ファインダー像の消失時間も長めになって、シャッターのレスポンスも低下します。
感覚的には「電子先幕ON+最小絞り」≒「電子先幕OFF+絞り開放」的な印象でしょうか。
(いちいちメニューを切り替えてやらないと比較できないので、あくまで感覚的(^^;です。)

----SONY α77 (その2:使用編A)へ続く----