オオケマイマイ

軟体動物門 腹足網 柄眼目 オナジマイマイ科 殻径約20mm

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右の縁に稚貝がついていますが、同種かどうかは不明です。

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若い貝は殻径が小さい分、毛が少なめ。縫合部を見ると胎児殻の部分には毛の痕跡がない。

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螺搭がほとんど平坦で高さのないタイプ。(未成熟個体)

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こちらも殻が平坦で高さのないタイプ。(ほぼ成熟個体?)

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殻が平坦で高さのないタイプはほぼ「杯型」?

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レンズ型の殻をもつ個体。下面はちりめん状でざらざらしていて、臍穴は大きい。

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平べったい小型個体(左)とレンズ型の大型個体(右)。

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前年生まれと思われる若い個体。上はキセルガイモドキの稚貝、右はベニゴマオカタニシ。

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レンズ型の殻をもつ大型の個体。

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レンズ型の殻をもつ老成個体。殻の毛はほとんど破損して欠け落ちてしまっている。

関東以西の本州と四国に生息し、自宅周辺で見られる平べったい殻形状で殻の周囲に毛状の突起(殻皮毛)があるカタツムリといえば本種です。
子供の頃には死貝の殻しか見たことがないなと思っていましたが、その気で見ると雨上がりの林縁や草叢などで歩いているのがごく普通に見られることが判りました。
初めて軟体部を出して歩いているものを見たときにはちょっと感動しましたが、殻の形態の特異性に比べると体は思ったよりも普通なんだな…とも感じました。

歩いているところを見たら幅の広い殻に細長い体で歩きづらいのではないかという気もしましたが、この形が落ち葉の下などに入り込みやすいということのようです。

特徴的な「毛」状の部分は、成長に伴って殻を年輪状に延長しながら形成する際に外縁を伸ばして形成されるようですが、何か実利があるのかどうかは不明です(^^)

------------------------ 2021.08 追記 ---------------------------

主に地上性で落ち葉の下や倒木などにいることが多く、自宅周辺では決して多くみられるわけではありませんが、山地の石灰岩の露頭がみられるような場所ではかなり多数派です。
多数の個体を比較すると、一般的な螺搭が緩やかな傾斜で厚みのある「レンズ型」の殻を持つものと、螺搭がほとんど高さのない平べったいものの2タイプあることに気付きました。
単なる個体差で螺搭の高さに差ががあるのか、同種の中でも殻の形状に2型あるのかは不明です。(他の種でも螺搭の高さには変異があるのが一般的ですね)

カタツムリは成長に伴って殻口の位置がだんだんと移動して巻き数が多くなってきますが、その際にはこの毛の部分も縫合部に巻き込まれていきます。
しかし、殻の中央部の胎児殻(卵から孵化した際に最初から持っている殻の部分)周辺にはこの毛があった痕跡がみられないことから、孵化してしばらくの稚貝は「毛のないオオケマイマイ」の姿をしているものと思います。(実際には未確認ですが…)
また、特に老成した個体はこの毛が破損して無くなってしまっているものも多く、少なくとも成熟したらこの毛の有無は生きていくうえでそんなに重要ではないと思われます。

この毛について書籍などでは「実際の用途は不明だが、体を大きく見せる効果があると思われる」といった説も書かれていますが、ishidaとしては彼らにとって「誰に対して体を大きく見せると何が有利なのかな?」とも思います。
少なくとも、レンズ眼を持たないカタツムリたちは相手の形状や大きさは認識できないので、同種間では体を大きく「見せる」ことはできないでしょうね。
ishida式(の頭の中)ではこの「毛」の効用として以下の二つの説を唱えていました。

【説1】体の輪郭を判り辛くすることで捕食されにくくする。
これは多くの隠蔽的な昆虫や魚類などでもみられる形態です。
実際に大型の一般的なカタツムリは昼間は落ち葉の下などに隠れていますが、オオケマイマイは意外に無防備に岩の表面などで休眠していることが多いように感じます。
ただ、それだと鳥類などの視覚に頼って獲物を探す相手には有効だが、嗅覚で獲物を探す相手には効果は薄いと思われます。
イノシシなどは落ち葉や腐葉土を掘り返して嗅覚で隠れているカタツムリを捕食してしまいますが、逆に岩の表面や隙間などに貼り付いているオオケマイマイはイノシシに捕食され難いようにも思いますが、実際にそうなのかどうかは不明です。
【説2】岩の隙間などに隠れる際に、殻がつっかえてしまう前に毛が当たってそれ以上奥へ進むのを防止する。
大型の個体ではこの毛がかなり欠損しているものも多いのですが、成長の止まった後はある程度は自分の体の大きさが学習されているとか…?

最近、上記に加えて
【説3】「イボイボナメクジ」などの捕食者を撃退する効果。
というのも期待できるのかなと思う観察例があったので紹介します。

杉の木の樹皮上を移動していたイボイボナメクジがオオケマイマイに接触したところ、オオケマイマイが軟体部を縮めて殻のトゲトゲをナメクジに押し当てるようにしたら、イボイボナメクジは嫌がって襲うのを中止したように見えました。
実際には獲物としては大きすぎて捕食に適さないと判断した可能性もありますが…
それでも、カタツムリと平行に這っていたイボイボナメクジが、匂いに気づいたのか急に90度向きを変えて一直線にそちらへ向かったのは確かで、獲物と認識したように見えました。
イボイボナメクジは体を裏返してカタツムリの腹面側から殻口に取り付こうとしますが、トゲトゲで腹足側を押されて慌てて反転して逃げてしまいました。
今回は獲物にするには相手のサイズが大きすぎた気もしますが、イボイボナメクジは小型のカタツムリの殻の上にのしかかるようにして動きを封じたうえで殻口に頭を突っ込んでいるようなので、小さなオオケマイマイでも周縁のトゲトゲが抑止効果になっているという可能性もあるのかなと思います。

ishidaの活動は自然観察と撮影が主ですので、研究者の方たちのように採集したり実験したりして確認することはしませんが、ちょっと興味深いなあと思ってご紹介(^^)
連続で撮影した経緯の画像は「イボイボナメクジ」の個別ページに掲載しています。

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オオケマイマイに気付くと、体を反転させて殻の下側に潜り込もうとするイボイボナメクジ。

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しかし、オオケマイマイが軟体部を縮めて殻の側面を押し当てるようにすると、たまらず反転して退散。