ニホンカワトンボ 

トンボ目 カワトンボ科  体長68mm前後

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2023年に豊川水系で初めて撮影できたオス個体。

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こちらは矢作川水系で見付けた個体。

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翅の鮮やかさと繊細な翅脈がすごく奇麗です。

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特に側面から見ると胸部が高くて大きく、相対的に「小顔」に感じる。

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翅と同色で見立たないが、縁紋は細長い。

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成熟オスは胸部側面以外は青白く粉を纏っており、非常に目立つ。

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「淡橙色翅型」のメス。これも非常に奇麗です(^^)

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メスは縁紋が白い。

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「淡橙色翅型」は特に翅の繊細さが際立って見える。

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オスの顔をクローズアップ。

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メスの顔を正面から。

主に山地寄りでも周りの開けた河川の中流域で見られるとのことですが、今のところishidaのフィールドでは生息地は限られています。
体色は「アサヒナカワトンボ」と同様に主に緑色系のメタリック感が強いのですが、オスは性的に成熟すると腹部全体と胸部上面に青白い粉を纏うようになります。
翅色は多型で、全ての生息域でオスには「橙色翅型」が出現し、メスには「無色翅型」及び「淡橙色翅型」が出現します。
更には一部に縄張りを持たないオスの「無色翅型」及び「淡橙色翅型」が出現し、メスのふりをして縄張りに侵入し、縄張りオスの目を盗んでメスと交尾する「スニーカー」として生殖に参加しているとのことです。

カワトンボ属は色彩多型なだけでなく地域によってそれらの出現度合いや色味も異なり、かつてはそれぞれ「ニシカワトンボ」や「ヒガシカワトンボ」「オオカワトンボ」など数種あるされていたもののうち、遺伝子解析等により「ニシカワトンボ」と「ヒウラカワトンボ」及び関東の一部の個体群が「アサヒナカワトンボ」とされ、「ヒガシカワトンボ」(北日本に生息)と「オオカワトンボ」(関東の一部と中部地方以西)が本種「ニホンカワトンボ」の2種にまとめられたとのことです。

「日本のトンボ」(文一総合出版)の記載に沿って同定にチャレンジしてみたところでは、「アサヒナカワトンボ」に比べて「ニホンカワトンボ」は「胸部が大きい」とか「翅の先端がやや尖っている」「縁紋がやや基部に近くて細長い」「メスの産卵管は腹部末節端を越えない傾向のものが多い」といった相対的な比較ポイントしかありません。
実際には種間雑種も現れるとか、伊豆半島の個体群は中間的な形態であることから両種の雑種由来だという説もあるとのことです。
結局、ishidaのストック画像のものはほとんど「アサヒナカワトンボ」的な特徴に見えました…というか、2種あるという目で見ても全く相違点が判らないという状況でした…(^^;

少なくともこれまで東三河の豊川水系やお隣りの静岡県西部天竜川水系で見たものは全てが「無色翅型」ばかりで、過去のフィルムカメラ時代に翅色が濃い個体を撮影した記憶があるのみですが、現在はネガの所在も不明です。(実はそれは「ミヤマカワトンボ」のメスだったりとか…)
2023年になって初めて豊川水系で「橙色翅型」のカワトンボを見付けて撮影することができましたが、これが過去に見た「カワトンボ類」の画像と比べると全く異色な感じなうえにやや体が大きい…実はishidaはこれまで一度も「ニホンカワトンボ」を撮影できていなかったのだということが判明しました。
比較すれば明らかに「ニホンカワトンボ」のほうが胸部が高いために胸部全体が大きく見え、頭部の大きさは大差ないため相対的に「小顔」に見えます。
本種はどちらかというと周囲が開けた開放的な場所が好みで、「アサヒナカワトンボ」は林縁などの閉鎖的環境を好む傾向があるとはいえ、矢作川水系では同じ場所で2種が混在して生息しているのも確認し、それぞれを見分けることはできました。
下の画像で「ニホンカワトンボ」と「アサヒナカワトンボ」の相違点を示しますが、結局どれも「相対的」かつ「傾向的」なものばかりで、地域的な変異も含めて総合的な判断が必要なようですね。

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「ニホンカワトンボ(オス)」(上)と「アサヒナカワトンボ(オス)」(下)では、明らかに体形も異なりました。
@胸部の高さが高く、胸部全体も大きいため「小顔」に見える。
A縁紋がやや細長く、翅端部よりもやや基部寄りにある。
B翅の先端がやや尖る傾向にある。

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「ニホンカワトンボ(メス)」(上)と「アサヒナカワトンボ(メス)」(下)の体形の相違点。
@胸部の高さが高く、胸部全体も大きいため「小顔」に見える。
A縁紋が翅端部よりもやや基部寄りにあり、形状もやや細長い。
B産卵管の先端が腹部末節端を越えない。