OLYMPUS OM-D E-M1 (12-40mm/F2.8 PRO)  (その1:導入編)

OLYMPUS E-M1 (Black) 12-40mm/F2.8 PRO レンズキット

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日頃は「α77」を昆虫撮影+遠征の主力としていましたが、最近は写真の基本に立ち返って(?)昆虫撮影の際もなるべくフラッシュを使用しないよう心掛けていますが、そうすると手ブレだけでなく画質的な不満も出てきました。
必要以上の高画素といわれている2400漫画素センサーの弊害か、ISO800程度でもノイズリダクションの影響でせっかくの高画素も台無しになってしまう印象です。
それに、寄る年波には逆らえないのか、人間の耐手振れ性能にも限界を感じる昨今です。
紆余曲折の結果、(微妙な気持ちもありましたが)システム的に小型、強力な手振れ補正能力、ちゃんとしたファインダー(EVFだけど)を装備した本機を次期主力機の最終候補としました。

「なんで昆虫撮影が主なのに選択が高感度に不利なマイクロフォーサーズなの?」という疑問が湧く方も多いと思います。
もちろん、高感度撮影にはピクセルサイズの小さなM4/3が物理法則的にも不利に決まっているのは承知しています。
実際には、高感度大王「α7S」なんかも候補に入れて検討してみましたが、同じ被写体を撮る場合には、小サイズセンサーは「同じ画角なら実焦点距離が短いので被写界深度が深い」もしくは「レンズが同じ焦点距離なら、画面上で同じ大きさに撮る為にはより遠くから撮れる」という点が有利なんではないか?という考え方が出来ます。

つまり、135フルサイズ機やAPS-C機と同じ画角を得る場合は
・135フルサイズ:1 APSC:0.67 M4/3:0.5
という焦点距離の関係になります。
一般的に135フルサイズで焦点距離50mmレンズの場合と同じ画角を得るには、APS-Cは33.3mm M4/3は25mmということで、実焦点距離の短いレンズを組み合わせる必要があります。

単純に同じ距離での撮影画角の関係では、135フルサイズの120mmマクロレンズと、APS-Cの90mm、M4/3の60mmが同じ画角となります。
逆に、同じ焦点距離のレンズで被写体の昆虫を同じサイズに映すためには、センサーサイズの大きいカメラのほうがより接近して撮影する必要があるともいえます。

上記で述べた比率通りに、絞りと距離を一定にした場合、被写界深度と最小錯乱円の関係は

・M4/3は画面の拡大率が135フルサイズの2倍なので、最小錯乱円は1/2として考える。
(同じ焦点距離のレンズを付けたフルサイズ機と、センサー上ではボケ量は同じだが、例えば同じモニター上で同じサイズにして見るとボケが拡大され、よりボケて見える…はず)
・被写界深度は、計算上は焦点距離の二乗に(概ね)比例する。

ということになります。
「被写界深度」については
こちらで解説。

つまり、拡大率が2倍になって最小錯乱円は1/2でないと同じボケ量に見えないが、焦点距離が半分なら被写界深度は4倍(錯乱円の1/2と合わせて実質2倍)くらいと考えて良いと理解しています。(なまくらな知識なので、実際に計算すると間違っているかも)

それに、上記の比較で同じ被写界深度を求めるならば、絞りを2段程度開けて撮影することが出来るわけですから、(フルサイズから見れば豆粒センサーでも)撮影上はそれなりに有利さもありますよね。
逆に、小サイズセンサーは一般的に画素ピッチが細かいので、絞り込むと回折の影響も出やすいというデメリットもあります(^^;
小さい声で言いますが、実はα77で1.4倍デジタルテレコンを使った場合は「ほとんどフォーサーズと同じ」ということもできます(^^;ボディやレンズの大きさが無駄だけど。

またまた前置きが長いですが、そんな訳で
・拡大率の大きな豆粒センサー+被写界深度に有利な焦点距離の短めマクロレンズ
・そもそもシステムが小型軽量で手ブレしにくい

というメリットを信じ、マイクロフォーサーズ機をメインターゲットに候補を絞ると

P社のG7(未発売だが、今回は本格派の印象。しかし、どちらかというと動画に開発の重きがある?)
・O社のE−M1(登場から時が経っているが一応フラッグシップでグリップやボタン類もしっかり)
・O社のE−M5U(新型だけあって画質や手振れ補正では上位機のE-M1に対しても下克上の高性能だが、グリップが心許無く、しかもまだ高価)

といった中から次期主力機の候補を選定しました。
結果として

・自慢のボディ内5軸補正での耐手ブレ性能の高さ
・現行機(α77)とスペック上は同等のファインダー
・ちゃんとしたグリップとボタン類装備
・評判の良い12-40mm/F2.8PROレンズキットが選択可能
・オリンパスの60mm/F2.8マクロの評判が良い(うえに安い)

といったところがポイントで「OLYMPUS E-M1 12-40mm/F2.8キット」に最終決定しました。

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E-M5と同時にデビューした12-50mmと比べて、近い焦点域ながら光学性能優先でサイズの大きい12-40mmレンズ。

「PRO」と銘打っているだけあって、12-40mmレンズの重厚感や操作感も高級感を醸し出していますが、レンズ自体の重量もそこそこあるのでE-M1との組み合わせがバランスが良いようですね。

E-M1は、E-M5などに比べれば遥かにしっかりしたグリップを装備していますが、グリップ自体の厚みが足りないのに加えて上下長も短いため全体的に下寄りをグリップせざるを得ず、手のひらと小指の付け根が余ってしまうため長時間グリップするのにはあまり向いていません。
キャンペーンのおまけでもらったバッテリーグリップを装備すると多少改善しますが、手のひらにすっぽり収まるというよりは「少し余る」感じで、隙間ができてしまいます。
(これだったらフォーサーズ用マウントアダプタをもらったほうが良かったかしら?ちょっと後悔)
ここにも「OM-1の呪縛」があると思いますが、フォーサーズ最後のフラッグシップ機のE-5が非常にグリップ感が良かった記憶があるので、今回は目指すデザインがちょっとズレているような気がします。
センサーサイズのわりにボディサイズが大き過ぎといわれているFZ1000のほうは、非常にグリップ感が良いのに比べると、E-M1はレンズ交換できるカメラとしては物足りない部分ですね。

電源スイッチの位置や形状も、かつての一眼レフ「OM-1」を真似たもので、肩のスイッチ類もご丁寧に巻き戻しノブのように見える意匠を取り入れています。
ノスタルジックな意匠にこだわるよりも、できればもっと使い勝手的に練られた形状にしていただくと良いんでは?
背面右手側のボタン・ダイヤル類も、ブラインドタッチで探って検知しづらい抑揚のない形状と深さになってしまっているのが残念。
特に、ファインダーを覗いたまま再生ボタンを操作したり、十字キーの操作をするのはとってもストレスを感じます。
α77のジョイスティックは、親指を浮かせて操作するためプッシュと上下左右の動きを組み合わせると操作感はイマイチと思っていたが、E-M1の十字キーの操作感に比べればずっと快適に感じてしまいます。
ここは、単純に小型ボディだからスペースが無い、という意味ではないと思います。(同じオリンパスでも、防水のTGシリーズなどのほうがキーに抑揚があって使いやすく考えられている気がする。)
E-M1は耐低温性能も高いのが自慢の一つですが、寒冷地での撮影時にグローブをした状態でボタン操作ができるか、甚だ疑問ですね。

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ボディの高さもある Panasonic FZ1000 (左)と ややスリムなOLYMPUS E-M1 (右) でも、全高は大差なし?

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Panasonic FZ1000 (左)のほうがフランジバックと関係なくボディの厚みがある。 OLYMPUS E-M1(右)は極薄。 

背面の液晶モニターは「チルト式タッチパネルモニター」です。
流行りのタッチパネルを採用していますが、極端にタッチ操作に依存しない操作性には見識を感じるが、逆に今のところタッチ操作のメリットはなんだか良く判りません。

自分は、足場の自由がきかない場所で昆虫を撮るときなどには、背面の液晶モニターを見ながらの撮影もよく行います。
α77の場合は三軸なので何も不自由を感じませんが、二軸のバリアングルモニターを横に開いて撮るよりは、チルトさせたほうが撮りやすいですよね。
そういう意味で、チルト式液晶で必要十分ともいえますが、たぶん次機種はバリアングルモニター採用でしょう(^^;

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親指の置き場はそれなりに確保されていますが、やはり天地寸法が不足気味。

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左肩の機能ボタンは巻き戻しノブ風の意匠。(左) 右肩は前後ダイヤルとモードダイヤルetc.で賑やか。(右)

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電池蓋はレバーで開閉ロック。ゴムの蓋はバッテリーグリップ接続部。三脚ねじはかなり左寄りです。

三脚ねじ穴は左寄り(向かって右寄り)に付いています。
ishida式としてはレンズ光軸と合っているかどうかにはこだわりはありませんが、レンズ交換式のカメラとしてはバランス的にどうなんだろう?という印象です。
また、ishida式ではクイックシューベースを付けたままにしていることも多いので、三脚に付けたまま電池蓋が開くのは便利で嬉しいです。

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チルト式液晶モニター装備だが、上向き90°にした時にはファインダーが邪魔でややせせこましい?

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自宅で試写したコハンミョウ。M-ZUIKO 60mm Macro・1/125・F5.6・ISO1000

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一部を等倍切り出し

仕事が忙しくて、休日もなかなかお出掛けの機会がなかったため、実際の運用は夏休みの「東北遠征」が最初となりました。
その際の使用感や使い勝手については後ほどレポートします。

------- その(2:使用編@) へ続く -------