YAMAHA TMAX (2013年式 TMAX530 ABS)

--------------------------- (TMAXインプレ そのA) ---------------------------

--- TMAXのファーストインプレッションはこちら ---

連続台風上陸の10月が過ぎ去って、11月になって急に冷え込んできましたが、まだまだ自転車もバイクも乗りたい季節なのになかなか安定した天気は長続きしません。
渥美半島を巡った11月4日(月)に続いて、11月9日(土)にはもう少し足を伸ばしてみようということで、お馴染みの茶臼山へと向かいました。
いつもの走り慣れたコースでTMAXがどのような走りを見せてくれるのか、期待と不安を抱えてのライディングです。

しかし日差しもあまり無くて思った以上に気温が低く、国道151号線で東栄町に入ったところで目的地を標高の高い茶臼山から第2地候補の佐久間ダムに変更しました。
久し振りに走るこのルートは、たぶんW650では走ったことが無い気もします。
国道から離れると車の数はぐっと減りますが、狭くてツイスティなコースとなり、思ったような走りには程遠い(^^;
三遠南信道の工事が進んでいる脇を抜け、佐久間に入ってから急な山道を登っていくつかの狭いトンネルを抜けると、久し振りに見る佐久間ダムの堰堤に出ました。
今では訪れる人も少ないようで、かつての記憶よりも寂れた感じは否めません。

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久し振りの訪問ですが、少々寂れた感のある佐久間ダム湖畔。

まだ時間も早いので、ここからは天竜川沿いに国道152号線を南下し、天竜二俣から浜名湖岸を経て帰宅することにします。
SRの頃は走り慣れたコースでもあり、独身の頃にはG氏やBS氏と車やバイクで行き来した楽しい思い出もあるルートですが、かつての記憶では狭いところもあるものの路面の良いコースでもあり、それなりに空いていれば楽しく走ることができる期待もあります。
佐久間の街を抜けて国道152号線に入ると、信号機どころか脇道や交差点もほとんど無い気持ちの良いワインディングになりますが、すぐに遅い車に追い付いてしまいます。
(そういえば前述の三遠南信道の工事の関係もあってか、ダンプカーも良く見掛けました。)
幸いにも道幅の広いところも以前より増えていて、見通しの良い場所でダンプカーもろとも安全にクリアできました。
その先は、追い付く車は尽く道を譲ってくれたうえに(もしかして知らない人からは白バイに見える?ピンクのジャケットだけど(^^))、逆に速い車やバイクに追い付かれてプレッシャーをかけられることも無く(^^;終始マイペースで走れました。

あれ、そういえばTMAXの走りについて語ってませんでしたね…(^^;

当初はニーグリップで車体をホールドしたり、ステップワークでバンクのきっかけをつくったり出来ないことに戸惑いはありましたが、タイヤが小径なこともあってシートに腰掛けた状態からの小さな入力でリーンできます。
ただし、リーン速度は速くありませんので、安心感がある代わりにクイックさはない印象です。
(コーナーのアウト側からクイックに回り込もうとすると難しさを感じます。)
しかし、ある意味では「小径タイヤでロングホイールベース」という普通のバイクと違うパッケージを大きな破綻や違和感なくまとめたともいえそうです。
コーナーに飛び込んでみてから思った以上に回りこんでいても、持ち前の中途半端に強いエンジンブレーキでなんとかクリアしつつ、失速せずに立ち上がる芸当も可能かしら。(コーナリングとしては失敗ですが、安全にリカバリー出来ることは美点ですね。)
しかし、浅い角度で曲率が小さい単発コーナーではアクセルオンと加速タイミングのズレに違和感があります。
エンジンのレスポンス自体はとても良いのですが、変速しながらエンジンが吹け上がって、ワンテンポ遅れて速度が乗ることになるため、体に染み付いた感覚より早めのアクセルオンを要求されます。
逆に、見通しの良い浅いS字コーナーなどをアクセルだけで合わせて抜けるのはとても楽チンで気持ち良いです(^^)
やっとバイクの特性が分かってきたという印象でしょうかV(^o^)V

でもマニュアル変速車(という表現も変ですが)のように、巡航速度からのコーナー進入で1〜2段シフトダウンして適度にエンジンブレーキを効かせつつ立ち上がりに合わせた回転数にもって行く操作ができないのは不便ですし気持ちよくありません。
ブレーキングしながらのタイトコーナー進入は速度調整の能動的な操作手段がブレーキだけになってしまい、ブレーキングしながら回転を合わせてシフトダウンしてゆく醍醐味が無いのも楽しさをスポイルする大きなマイナス要素といえます。
前述のアクセルオンと加速タイミングのズレも含めてタイトコーナーは楽しくありません。
逆に、巡航状態からアクセルの一捻りで(暴力的なパンチのある加速は無理ですが)回転数が上がって加速態勢に入れるので、追い越しなどは楽チンです。
市街地ではアクセルワークさえ慣れてしまえば極低速でのふらふら感以外は扱い易くて十分楽な走りが可能でした。(でも、相変わらず一時停止での左右確認は苦手感がありますが、これはishidaの走行性能に起因していますね。)
とりあえず、どういう状況でメリットがあって、どうい状況ではデメリットがあるのかというところは理解出来てきた気がします。
一応、十分な楽しさを備えたうえで(状況がバイクの特性とマッチすれば)イージーライディングができるということでしょう。

足着き性が悪いのも(相変わらず両足つんつんバレリーナ状態ですが)それほど気にならなくなったかな。
天竜二俣から先は山あいを抜けたこともあって車も増えて速度も落ちますが、アクセルワークにも慣れてきて楽な走行が出来ました。

翌週末の11月16日(土)はそれなりの防寒対策をしたうえで、再び茶臼山を目指します。
天候は快晴ですが、低温のため前日の雨が乾き切っていない状態の路面に注意しながらのお出掛けです。
でも、旧鳳来町に入ると、気温12℃程度ですがやはりそれなりの寒さを感じてきて、コンビニで休憩がてら防寒対策をプラスしました。
ちょっとモコモコし過ぎかもしれませんが、クラッチ操作も無いのでそんなに不都合はありませんし、四輪車に追い付いてそのまま追従しても、アクセルワークだけで速度を合わせることが出来ます。
合法的な範囲で(^^;先行する他県ナンバーの乗用車群をクリアする程度の走りで国道151号線を北上し、坂宇場の国道分岐を曲がって茶臼山への登りにかかります。
広いヘアピンコーナーでは速度感がわからないのとエンジンブレーキの効きでついつい減速しすぎの感がありましたが、それでもスピードメーターの針はW650と変わらない速度を示しているようです。
意外にもあまりバンクさせなくても十分な旋回力が発揮されるみたいです。

また、タイトコーナーでは速さを求めることは出来ませんが、「タイトコーナーが苦手」という印象からは想像できないイージーさがあり、登坂道路上部の失速しそうな急傾斜のヘアピンも(エンジン回転の上昇を急ぐことは出来ませんが)これといった小技も必要なくクリアできます。
牧場を抜けて県境を越えたところで、昆虫撮影に来た後にいつもコーヒーを頂く「小鳥茶屋」に立ち寄って少し早いお昼ご飯の時間にします。
今週初氷の知らせを聞いた茶臼山だけあって上部の木々は既に葉を落として冬の装いですが、お茶屋さんも明日が今シーズンの最終日だそうです。
のんびり食後のコーヒーも楽しませてもらい、お土産にりんごを買って帰途につきます。

お帰りもイージーライディングで…と思いましたが、予想以上に「バイク任せにできる部分」と、「操作した通りに応えてくれる部分」、「お任せにしたくないのに自分で何ともできない部分」などが入り混じっている感があり、頭を使う必要があります。

下りのブレーキングでは「腕立て伏せ状態」になってしまう懸念もありましたが、下半身の踏ん張りが割りと効いてくれるようで、それほど苦になりません。
しかし、凝った車体造りやエンジンの調教は功を奏しているようで、総じて「運動性」に関しては不満が少ないということは確かに言えると思います。

国道に出てからは時間帯も早いためか下界に向かう車は少なくて、勝手知ったる道路でもあることから、見通しの良いコーナーではちょっとだけ速いペースで走ってみました。
しかし、ペースが上がってくるとリーンのきっかけとアクセル操作のタイミングでの戸惑いは顔を覗かせてきます。
ステップやハンドルへの入力でリーン速度を速めることが出来ないため、どうしてもまったりとした(^^;コーナー進入になりがちです。
前でも述べた、あえて大きなアクションで早いリーンを求められないような、アクセルのオンとオフだけで速度調整できるコースが最も気分よく走れるように感じました。

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里山もいよいよ晩秋の装い。細道に入るのはちょっと勇気が要るけど。

全体を通して感じたことは

・ブレーキングは安定していて、ノーズダイブは少ない。
これは重量配分や重心位置の低さによってアンチダイブ効果が発揮されているからかしら?
これを実現しているのは水平に配置されたシリンダーとドライサンプ化されたエンジンが、単に低重心化やスペース効率のためだけではなく、走行性能を実現するための必然として考えられているからに他ありません。
(個人的には水平シリンダって、潤滑性にちょっと不安があるイメージも持っていますが、すでに10年が経過したベースエンジンなので改良が重ねられているはずで、無用な心配は杞憂と思いますが…)
でも、後述のように前輪荷重でのコーナー進入は突っ張り感があって、クイックに曲がれない感がある。

・加減速でのピッチングが少なくてきっかけが掴み難い。 
「普通のスポーツバイクのようにピッチングして乗り易い」という評価を見たこともありますが、ishida的にはブレーキングではフロントサスペンションの突っ張り感があって、フロントタイヤへの荷重があまり感じられない印象です。
変速を固定できないことからパンチのある加速力は望めないこともありますが、前述の重量配分やスイングアーム位置の効果か、加速時のスクワット(後輪の沈み込み)も少ない気がします。
ただ、エンジンのレスポンス自体は非常に良くて、コーナリング中のアクセルオンに対してトルクの出方は唐突な気がします。
マニュアル変速のバイクの場合はアクセルの開け始めから回転の上昇に伴ってリニアにトルクが出るのに対して、TMAXの場合はアクセルオンで先に回転が上がってトルクが大きい状態になってから一瞬のタイムラグを持って後輪に駆動力が伝わるために、加速のためのトルクというよりもドン付きに感じてしまいます。
最初はこのエンジンブレーキから加速につながる部分にリニアリティが無いことや遅れがあることに違和感があったのですが、逆にこれがコーナー立ち上がりの早さにつなげるために重要な特性といえます。(ishidaはまだつながってないけど)

・前後に荷重移動させずにバンクさせるコーナーは気持ちよく走れる。
全体的に後輪荷重で走らせると軽快感や安定感があり、逆に前荷重から後荷重に移り変わる部分の繋ぎをうまく出来ないときれいに曲がらない(曲げられない)感がある。

・ニーグリップできない不安感は解消したが、ライディングポジションは楽とは言い難い。
ニーグリップできないことによるバイクのホールド感は無いのですが、慣れたら特に不安感はなくなりました。
でも、巡航中に下半身だけで支えてだらっと力を抜くような乗り方はできないので、ishidaの場合は足の置き場も含めて安楽な感じはしないです。
もう少し下半身に力を入れなくてもぴったり決まる感じが無いと、逆に腰周りに力が入って腰痛の兆しを感じる(^^;;;;

・結局TMAXって楽しいの?
カタログなんか見てしまうとついつい他のスポーツバイクと比較してしまうわけですが、不毛な性能比較は脇においておくとして、ここまでのishida式感想は「十分楽しいスポーツバイク(風のスクーター)」といえます。
プロフェッショナルなライダーならスーパースポーツもカモれる走りが出来るそうですが、ishidaの走行性能では、W650と同程度にしか走れません(^^;
(それに、ishida式でいうと「上手なドライバーがいくら速く走らせることが出来ても、そもそもスポーツカーをATで乗る行為はスポーツではない」という定義です。)
TMAXの場合、様々なシチュエーションの下での走り易さやユーティリティを備えたうえで、十分なスポーツ性を持っている点が最大の美点でしょう。
「小鳥茶屋」で農家から仕入れた「しなのゴールド」(黄色いりんごの品種。激ウマでした。)をお土産に買って帰りましたが、W650だったら多分買って帰らないでしょ。

欠点は半クラッチがないので微低速が思ったよりも扱いづらいことや、変速できないことによるネガな部分、「ブレーキング中の回転を合わせてのシフトダウンができない」ことや、「状況に合わせてギアや回転数、駆動力を得られない」「ずっと開けっ放しにしていることによる、排気量の割りに良くない燃費性能」といったところでしょうか?
ishidaの走行性能が低いことによる苦手意識としては、小回り性が悪く、小径タイヤで悪路にも弱いため細道に入ってゆくのに勇気がいることや、不整地や傾斜のある駐車場に停める際に苦労することが挙げられます(^^;;;;;

また、搭載に対して否定的な意見の多い「変速モード切替」の様なものは何か準備してほしいなあというのが偽らざる思いで、せめて「高速巡航モード」のようなものが無いと高速道路ではアクセルワークが疲れるだけでなく、必要以上に高回転になってしまい、ゆったりした走りや低燃費の実現は困難なのでは?と思います。

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帰路、バイパスでの追い越し時は、ふぬわKm/hでもそれほど強い風圧は感じませんでした。

・コーナリングマシンの素質
頻繁に県境付近の山へ写真撮影に出掛けるため、コーナリング感覚が掴めてきて途中のワインディングを楽しめるようになりました。
実際、ギアは選べないとはいえそこそこの速度が出ていればエンジンブレーキだけで上手くピッチングが起きることが判り、コーナーの侵入姿勢もうまく作ることができます。
慣れたら確かにサスペンションの作動も良いし、コーナリングスピードも速いんですね(^^)
ただし、スクーターとしてはバンク角があるとはいえ、一般のスポーツバイクに比べたら余裕はなくてサスストロークも少ないので無理は禁物で、小径タイヤのコーナリングフォースに頼った走りになりがちなので、スムーズなコーナー進入を心掛ける必要がありますけど。

しかし、小径タイヤには走行距離に対して回転数が多めとなるため、摩耗が早いという欠点が露呈してきました。
最初の車検時には(長距離ツーリングには出掛けなくなったため)走行距離5000Km程にもかかわらず、特にFタイヤの両サイドがほとんど摩耗、スリップサイン寸前なうえにタイヤのプロファイルが三角形になってしまい非常に乗りづらくなり、交換することにしました。
一般的に推奨されるスポーツタイヤではトレッドパターン的にも砂利の浮いた路面や未舗装の駐車場などでのグリップがないことが気になるので、なるべくサイドまでブロックパターンが回り込んだタイヤ(メッツラー製)を選択しました。
これがけっこう正解で、ワインディングでのグリップ感は十分なうえに未舗装の駐車場レベルでフラフラもしません(^^)それにライフも長そう。(結局そのまま6部山程度で9年目約9000Km(^^;の車検も通過し、偏摩耗もない状態だった)

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・突然のお別れ…
買い換えようという積極的な意思も(資金も?)無いまま10年目に突入した2023年5月5日、いつものように撮影機材を積んで山方面へ出掛けようと家を出たところで、意図せず大回りになってしまいそのまま側溝にダイブしてしまいました。
側溝の縁の段差に向かっていたので、勢いで越えようとアクセルを開けたところで車体が立ってしまい、そのまま側溝の切れ目から前輪が落ちて、蓋の端に乗り上げました。
前輪が側溝の蓋に刺さり、人間はスクリーンを突き破って前転…
通りかかりの人やご近所さんの助力でお隣りの駐車場に移動させましたが、フロントホイールはパックマン型に変形してしまい、Fブレーキキャリパーと干渉して移動不能になってしまいました。

JAFに依頼してゴージャッキでとりあえず自宅までは移動させましたが、頼りの羽田オートは休みだし…
翌日に羽田オートに出向いて相談すると、店にはリフター付きトラックは無いので出来れば保険会社のレッカーサービスを使って持ってきてくれた方がいいよとのこと。
早速、アドバイス通りTMAXのFブレーキキャリパーを外して押し歩き可能にできたところで保険によるレッカーサービスを依頼し、やってきた積載車にTMAXを積み込み、羽田オートへの移載を手配しました。

結局、フロント周りのダメージの大きさやTMAX特有の不満点(低速での取り回しが悪いのも今回の事故の原因の一つ)などを考慮しつつ、諸般の事情から羽田オートの店頭にあった(中古の)「NC750X」に買い換えることにしました。
骨折などの深刻なダメージはなかったものの、打ち身・捻挫もけっこうきつかったのですが、心(と経済的ダメージ)が一番の負担でした…