山伏(やんぶし)登山
2008年11月2日(日) 静岡県安倍奥の山伏に行って来ました。


 

11月1〜3日は三連休なので、一日くらいは山に行こうと思っていました。
紅葉はそろそろ標高1000m付近まで降りてきているようですが、色々な本などで楽しそうな山を調査した中から、静岡県の「山伏(やんぶし)」に行ってみる事にしました。
せっかくなので、子供たちの受験も控えて何かと気苦労の絶えない奥さんをリフレッシュに連れ出すのも目的の一つです。

 

「山伏(やんぶし)」は安倍川流域の奥に位置する「安倍奥」山域の最高峰(2013.7m)です。
富士山の眺めが良いことと、この地方では珍しい「ヤナギラン」の群生地として有名だそうです。
標高1400m付近の県民の森付近からなら標高差も少なく、奥さんも安心して同行できそうですね。
県民の森のHPでは、既に紅葉の盛りは過ぎていて、カラマツの黄葉に移ってきているとのことですが…

 

AM4:00に自宅を出発、浜松IC〜静岡IC、梅ヶ島街道を北上します。
途中で油川と油島を間違えて15分ほどロス(^^;しつつ、井川との境になる富士見峠を目指して山道を登ります。
ところが、日頃寝不足気味なのに加えて朝食抜きだった(私は日頃の経験からちゃんと食べました)のが堪えたのか、はたまた山道でのishidaの華麗な運転テクニックに酔った(^^;のか、奥さんの具合が悪くなってしまいました。
気分が悪いだけでなく腹痛にまで襲われたため、ちょうど灯りの点いていた県民の森のロッジに駆け込みました。
(ロッジの方の親切な対応に感謝ですm(_ _)m)

 R0013180.jpg - 52,986Bytes R0013182.jpg - 49,540Bytes
薪ストーブの県民の森ロッジ。(左) 8:00登山口を出発。後に今回の足エブリちゃん。(右)
 

 

予期せぬトラブルに見舞われたものの、7:30には無事に笹山登山口に到着しました。
笹山登山口には広い駐車スペースがありますが、まだ車は停まっていませんでした。
(一般的には、1時間ほどで山頂に立てる百畳峠まで車で入る登山者が多いようです。)
また、笹山手前の井川峠にも車が1台停まっていましたが、井川峠からだと片道1時間くらい行程が長くなります。
車内で朝食を摂り、準備完了して8:00に登山開始します。
この登山口は地図で見ると登り始めから等高線が結構混んでいるため心配しましたが、道は大きく左右に巻くように取り付けられているため、それ程きつい登りではありませんでした。
登り始めてしばらくすると県民の森方向の尾根と井川湖の眺めが素晴らしく見えてきます。

R0013193.jpg - 65,106Bytes
上り始めると笹原で視界が開け、南側に井川湖が見えてきます。谷はまだ朝靄の中です。


ちょうど眺めのよいポイントにベンチが有り、尾根の向こう側には富士山も姿を現わしてきて気分は上々です。
ここからは朝日も射してきて暑くなったので上着を脱ぎます。
登り始めて40分ほどで笹山のピークに到着すると、富士山が裾野を広げている姿を見渡すことができ、素晴らしい展望です。

 


R0013200.jpg - 42,575Bytes R0013201.jpg - 50,502Bytes
途中から富士山が見えてきます。(左) 県民の森、リバウェル井川スキー場方面に続く尾根。(右)

 

R0013203.jpg - 52,186Bytes R0013202.jpg - 43,682Bytes
展望ベンチから見た大無間山と小無間山。(左) 同じく朝日に映えるカラマツの黄葉と井川湖。(右)

 

R0013208.jpg - 44,854Bytes R0013210.jpg - 44,207Bytes

笹山のピークからは富士山が全身を現わしました。(左) 富士山が見えると何だか嬉しい。(右)

笹山のピークを過ぎると、道は概ね緩やかに下りとなり、尾根の上の気持ち良い落葉樹の林となります。
周辺はカラマツとダケカンバ、ブナなどの混交林で、「奥さんと二人で」「好天の空の下」「素敵な景色を見ながら」「落ち葉を踏んで歩く」のは最高の気分です。
↑成分表示の決まりに準じて、含有量の多い順に記載しています(^^)

 

R0013216.jpg - 45,492Bytes R0013217.jpg - 47,607Bytes R0013221.jpg - 44,782Bytes
稜線はそろそろ冬の装い。カラマツの黄葉(左) 葉を落としたブナの大木(中) 亜高山帯の主役ダケカンバ(右)

 

しばらく行くと道は大きく下り、下に林道が見えてくるとすぐに「牛首峠」です。
2台程度しか止められない駐車スペースにはミニバンが1台だけ止まっています。
一旦林道の前に下り、再び尾根に取り付くとやせた尾根の急な登りの始まりです。
奥さんにはこれが結構堪えたようです。
ロープの掛けてある場所も現れる急な登山道を登り切ると、前方の視界が開けて気持ちのよいダケカンバの純林に近い平坦な1785mピークに出ます。
登りきってすぐ左手に電波中継用(?)のアンテナが現れ、道はゆったりと東〜北に向きを変え、頑張ったご褒美?に、再び気持ちの良いコースが続きます。

 

R0013225.jpg - 46,017Bytes R0013227.jpg - 50,400Bytes
牛首峠手前で大きく(最初に登ったのと同じくらい)下ります。(左) 林道に出たところが牛首峠です。(右)

R0013233.jpg - 46,432Bytes R0013238.jpg - 47,236Bytes R0013242.jpg - 46,140Bytes
牛首峠から痩せ尾根の急登。(左) 前方が開けると苦しい登りは終り。(中) 平坦なピークを周遊します。(右)

 

R0013247.jpg - 58,765Bytes R0013248.jpg - 44,808Bytes
牛首峠を隔てて笹山が南側に見えます。(左) ハイキング気分でルンルン♪(右)

 

ピークの東側を巻くように進むと道は再び緩やかな下りとなります。
ここから先も稜線はなだらかで、所々に二重山稜となっている場所も見られます。
ダケカンバの大木は、まるで別の種類の木のように大きく枝を広げています。
また、所々に樹皮が剥がされた痕のある木が現れます。初めはシカの食痕かと思いましたが、明らかにクマの爪の跡と判るものも見つけました。
今回は忘れずに「鈴」も鳴らしながら歩いてます(^^;

R0013254.jpg - 45,612Bytes R0013257.jpg - 62,055Bytes
若いダケカンバに混じって老木が大きく枝を張っています。

R0013260.jpg - 56,723Bytes R0013262.jpg - 44,736Bytes
樹間から時々富士山も望めます。(左) クマの爪痕の残る木(右)

しばらく進んで、西側と東側に笹原の船窪地形が現れると「猪ノ段分岐」に出ます。
分岐の東側の笹原には獣道が縦横に横切っているのが見えます。
ここにも電波中継アンテナが立ち、林道への分岐点となっています。

R0013268.jpg - 54,628Bytes R0013269.jpg - 45,721Bytes

分岐点東にある船窪。(左) 林道との分岐(右)

R0013278.jpg - 61,307Bytes R0013281.jpg - 57,067Bytes 
明るい林の中、様々な樹形が楽しめます。


R0013285.jpg - 66,391Bytes
特にすっきり晴れた秋の空に立つダケカンバの姿は大好きです。


「猪ノ段分岐」から先、道は「猪ノ段」に向っての登りとなりますが、傾斜は緩くて風景を楽しむ余裕もありますね。
「猪ノ段」は明瞭なピークはなく、いつのまにか通り過ぎてしまいます。
(○○段というのは、この地方特有の地名で、山中の平坦な頂きをいうようです。有名どころでは「山犬段」「月夜の段」などがあります。)
再び緩い下りになると程なく視界が開けて広い船窪地形の笹原に飛び出したところが「百畳平」です。
ここから林道に出たところが百畳峠で、静岡県側で最も山頂に近い登山口になります。
ここの笹原にも多くの獣道が走っています。

R0013297.jpg - 44,244Bytes R0013304.jpg - 50,091Bytes
大きく開けた笹原に出ると百畳平です。(左) 東の斜面から見た小河内山。(右)


R0013309.jpg - 39,580Bytes R0013316.jpg - 51,420Bytes
東斜面から見た富士山。(左) 山伏小屋分岐付近から見た大無間山。(右)

 

笹原の中に東側の尾根に上る道が付いているので、奥さんを待たせてちょっと偵察。
東側の斜面は大きく崩壊していて、通行禁止になっているようですが、谷を隔てて富士山の姿が綺麗に見えます。
帰りに一緒に見に来よう(^^)
百畳平まで来ると、初めて人に出会いました。
ちょうど下山してきたグループに聞くと、牛首峠から登ってみえた方でした。
その後は下山してくる人と何人もすれ違います。
分岐から登りに掛かり、道は笹原のこんもりした斜面を進みます。
途中で市営の山伏小屋への道が左に分岐しています。

 

R0013318.jpg - 51,137Bytes R0013322.jpg - 50,555Bytes
明るい笹の斜面を登ると、後ろに猪ノ段と笹山が見えます。(左) 南斜面から猪ノ段、笹山方面。(右)

その先で道は樹林帯の中に入り、崩落のため新しく取り付けられた迂回コースを抜けて暫く進むと「西日影沢分岐」が現れます。
林道が開通する前にはこちらのコースから登るのが最も一般的だったようです。
また、「牛首から西日影沢コースは危険なため注意」といったような注意書きがありました。
こちらは牛首峠から西日影沢へ下る沢沿いのコースのことですね。安倍川側の谷は崩落が激しいため地図でもそちらのルートは点線となっています。

そこから暫く登ると、ぬかるみの前に下山してきたグループが立ち止まっていたので何かなと思ったら、泥の上に沢山の蹄の跡がついています。
普段よく見るイノシシの足跡と同じに見えたので「ああ、これはイノシシじゃないですか?」なんて訳知り顔で解説してしまいましたが、後で考えるとやっぱりシカの足跡でしょうね(^^;ウソ言ってごめんなさい。
そこから少し登ると、視界は大きく開け、広い笹原が現れ、山伏の山頂部に到着です。
そういえば、道中一度も「山伏」の山容を見た記憶がありません。
笹山や牛首のピーク、猪ノ段辺りからなら山頂が見えたはずですが木が茂っていてほとんど見通しが利きませんでした。
笹原の東には富士山がすらりとした美しい姿を見せています。
欲を言えば、頭に雪を頂いた姿を見たかったかな?(ちょっと天気も曇りがち)

R0013326.jpg - 60,264Bytes R0013335.jpg - 39,753Bytes
西日影沢分岐。ここの看板も塗りつぶしの痕跡が…(左) 山頂エリアから富士山の眺め。やや曇り気味…(右)

山頂の一角は笹が刈り払われてネットで囲まれています。
シカの食害から「ヤナギラン」を守るための試みだそうですが、やや興ざめな気もしますね。

日光や尾瀬などでもシカの食害による植生の変化が問題となっていますが、ここ10年ほどの冬季の積雪量の減少がシカの増加を招き、その選択圧が植生に深刻な影響を与えているのは確かですね。
ただ、単純に「シカの食害」とか「地球温暖化」といった言葉で片付けるのはちょっと安直過ぎる気もします。

山頂のすぐ北側からは、南アルプス南部の大物たちが一望できます。
西から光岳〜茶臼岳〜上河内岳、聖岳は大きな屋根型の巨体を見せ、赤石岳、荒川岳、布引山〜笊ヶ岳、背後にはまるで雪が積もったように白い鳳凰三山も望めます。
布引山の左にちょこっと見えるのは塩見岳?

R0013342.jpg - 55,842Bytes
山頂北側からの眺め。茶臼岳〜上河内岳〜聖岳〜赤石岳〜荒川岳〜布引山〜笊ヶ岳〜鳳凰三山

R0013346.jpg - 55,972Bytes R0013352.jpg - 49,865Bytes
後から来たグループの方と写真の撮りっこ。(左) 大きな立ち枯れ木と富士山。空が曇っているのが玉に瑕。(右)

R0013359.jpg - 50,908Bytes
笹原越しに見た大谷嶺、八紘嶺と富士山。大谷崩れの荒々しい山肌。

実は、途中から気になっていたのですが、現地では山の名前が「山伏岳」となっている看板を見かけます。
山頂の大きな看板には「岳」の部分をわざわざ黒スプレーで塗りつぶした痕があります。
他の看板でも、もともと「岳」の文字があった部分が取り外されたり剥がされたりしているのが判ります。
地図やガイド本には「山伏(やんぶし)」とあるにもかかわらず、現地の看板だけは「岳」の文字が頻発していて、更にそれを排除する行為があるようです。
どうも「三文字派」と「二文字派」の泥仕合が行われている様子です。
かなり感情的な争いに発展しているのか?笹原の中の休憩ポイントにある木の幹には「バカヤロウ」といったスプレーの落書きまでありました。
ここまで来ると醜い…当事者同士でしっかり話し合って解決して欲しいですね。

ちなみに、山頂の看板に掛けてあった温度計は、お昼の時点で10℃を指していましたが、風もあるので体感温度は一桁の気がします。
山頂周辺を散策後、風を避けて笹の陰でお昼の支度をします。
今回のお昼はチキンラーメンと春雨、パンを用意してきました。
お湯を沸かすのにジェットボイルを使用しましたが、確かにお湯の沸くのが早い気がしますね。
チキンラーメンも家で食べるのにはくどい気がしますが、山ではこの味の濃さと塩味が良いと奥さんにも好評です。

 

お腹も満たされて身も心も満たされたところで13:00に下山に掛かります。
樹林帯を下ると、先程まで薄曇だった空がすっきり晴れてきました。
もう一度山頂に戻って青空に富士山を見ようかと思いましたが止めておきます。
百畳平の東側からの眺めに期待して…

R0013363.jpg - 57,353Bytes
下山中に見た往路の稜線。手前が猪ノ段、その奥が牛首からの1785ピーク。奥右寄りのピークが笹山。

山小屋分岐まで下り、寄り道して「山伏小屋」を偵察します。
分岐から下るとすぐに、やや老朽化している気もしますが可愛らしい市営の避難小屋、山伏小屋が現れます。
しかし、山小屋の向かいにあるトイレは谷側に大きく傾いていて、今にも倒れそうで使用不能です(^^;

R0013372.jpg - 43,598Bytes R0013367.jpg - 51,281Bytes
山小屋との分岐の大きな立ち枯れ木。(左) 山伏小屋は避難小屋としては大規模でテラスまである。(右)

再び登山道に戻り百畳平まで下って、お楽しみにとっておいた展望を楽しむために(今度は奥さんと一緒に)斜面を登ります。
斜面を登ると、背後には山伏の西隣りにある「小河内山」が均整のとれた美しい姿を見せています。
東側の展望が開けると、期待通りに青空をバックに紅葉(黄葉)を装った富士山の姿を見ることができました。
剣ヶ峰の直下には、最近積もった雪がまだ残っているのが見えます。

 R0013391.jpg - 63,186Bytes
百畳平から均整のとれた美しい姿の小河内山を望む。

R0013390.jpg - 58,373Bytes R0013393.jpg - 45,908Bytes
笹の斜面を登ります。(左) 期待通りの青空をバックに富士山。(右)

R0013398.jpg - 42,896Bytes R0013404.jpg - 55,015Bytes
カラマツの黄葉の腹巻を巻いた富士山。(左) 一寸いい景色を見せて威張る?ishida。(右)

景色を堪能した後、来た道を猪ノ段分岐まで戻って林道に下ります。
猪ノ段分岐から林道までの間はまるで梅畑のような不思議な景色で、これもシカによる選択圧の結果でしょうか?
林道に下り、牛首峠を経て笹山登山口を目指します。
地図上ではかなり大回りですが時間が短縮できるのと、尾根道に比べて開放的な歩きが楽しめます。
しかし、全線舗装とはいえ牛首峠前後などはかなり崩落が激しく、通行には注意が必要ですね。
笹山から西に伸びる尾根を大きく回りこんで尾根の南側に出ると笹山登山口はすぐそこです。

R0013419.jpg - 45,256Bytes R0013422.jpg - 44,188Bytes R0013428.jpg - 44,152Bytes
猪ノ段分岐。(左) シカによる選択圧のせい?不思議な植生です。(中) 分岐してすぐに林道に出ます。(右)

R0013444.jpg - 46,230Bytes R0013447.jpg - 43,757Bytes R0013462.jpg - 42,729Bytes
林道から見上げる紅葉の残り。(左) 牛首までは林道斜面の崩壊が激しいので注意。(中) 笹山手前は道もきれい。(右)

R0013464.jpg - 49,727Bytes R0013467.jpg - 40,665Bytes
やっとエブリちゃんが見えました。(左) 県民の森方面のカラマツ林(右)

登山口に15:50に到着し、ささっと身支度を整えて帰路につきます。

 

今回登った「山伏」は、登山の対象としては西日影沢から登るか大谷崩れから八紘嶺経由で登るのが一般的と思いますが、風景を楽しめる県民の森からのコースもお勧めです。
特に今回の笹山からのコースは、そこそこの標高差の登下降もあり、気持ちの良い稜線歩きが楽しめます。
林道で百畳峠まで車で入ってしまうのは勿体無いので、せめて猪ノ段から稜線を歩くのをお勧めします。
次回は是非とも雪のある季節や新緑の季節に歩いてみたいものですね。

 

--------------------------今回の行程--------------------------


自宅4:00〜浜松IC〜静岡IC〜7:30笹山登山口8:00〜笹山8:40〜牛首峠9:10

〜1785mピーク9:50〜猪ノ段分岐10:25〜11:10百畳平11:20〜西日影沢分岐11:45

〜11:50山伏山頂13:10〜13:30山伏小屋〜13:45百畳平14:00〜14:30猪ノ段分岐

〜林道14:35〜牛首峠15:05〜笹山登山口15:50

yanbusi_t.jpg - 38,991Bytes
カシミールで撮影した鳥瞰図