ishida式の八紘嶺・大谷嶺登山
2017年11月25日(土)
楽しい仲間たちとの登山第三弾。天候にも恵まれましたが、ishida式にありがちな反省点も…(^^;

前回、11月3日の「大菩薩嶺」山行に味をしめて、T君の希望で天候が厳しくなる前にもう一回…という計画でしたが、11月のうちになんて言っているうち、週末の度に悪天候となって延期になっていました。
結果的には11月25日(土)に、T君と先輩のMさんを加えた3名で出掛けることとなりました。
結果的には毎週末の悪天候による降雪で「雪を纏った富士山を山から見たい!」というT君の希望がかないましたが気象条件的にはちょっと微妙。
目的地は、大菩薩嶺へ行く前に候補としていた安倍奥山域の「八紘嶺」と考えていましたが、この山域でもいよいよ冬の便りも聞こえてきて、初心者に近いMさんやT君を連れていくにはちょっと不安感ありかも。
北西風に運ばれてくる雪雲も雪はほとんど南アルプスで落としてしまうとはいっても、標高2000m近い標高があるうえに稜線上は終始氷点下の行動となることが予想されます。
そのうえ、低気圧が南岸へ抜けた11月23日には井川峠周辺でも数pの積雪がありました。
積雪や凍結で危険を感じるようなら途中撤退の可能性も考えつつ、十分な装備を…とりあえず確認。
お二人さんには、とにかく休憩や食事中だけでなく、行動中に寒さを感じないように注意喚起しておきます。

 

当日は2:50に起床して軽い食事、MさんをピックアップしてT君宅に予定より早いですが3:50頃には集合です。
ちょっと寄り道の後、東名豊川ICから三ケ日JCT経由で新東名に乗り、新静岡IC周辺にコンビニが無いことを心配して静岡SAで買い出しし、新静岡ICから北上して梅ヶ島温泉を目指します。
(でも、GoogleMapでは分からなかったけど、やっぱりIC降りたらすぐ角と少し先にコンビニありました(^^;)
梅ヶ島温泉から林道に入り、登山口のある安倍峠を目指します。
林道といっても、全線舗装されてそれなりにメンテナンスも行き届いていますが、崩壊しやすい場所柄なだけに途中けっこう大きな穴もあったりして通行には注意。

 

標高約1450mの登山口は実際の安倍峠の500mほど手前にあり、20台ほど駐車できそうな駐車場に真新しいトイレも建っていますがトイレは既に冬季閉鎖中でした。
周辺には二日前に降ったと思われる雪の名残もわずかに見られましたが、南アルプスにより近い井川峠などに比べれば本格的な降雪はなかったようです。
でも、その名残りが融けずにそのまま残っているって、少なくとも晴れていたはずの昨日でも日中の気温は氷点下だったと思われますね。

 

買い出しした朝食をとって身支度を整えていると、あれれ?Mさんのストックが無い…
T君の車に乗り換えた際にishidaの車から乗せ換え忘れてしまったみたいです…普段あまり使わないそうですが、すんません、今日は使うほうが楽だと思う(^^;

 

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身支度を整えて、いざ出発。(左) いきなり急登が始まります。(右)

 

駐車場を出るといきなりの急登が待ってましたが、高度を上げるに従って背後に富士山が姿を現してきました

今回の目的地選定の理由のうちの一つが「富士山が見える山」ということもありますが、やっぱり富士山が見えるだけで嬉しいよね。
急登の後で再び徐々に高度を下げて小さな鞍部に出ると、道は斜面をトラバースしながら下山方向に向かっているようです。

 

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気持ちの良いブナの森が続きます。(左・右)

 

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急登をいったん登り切ったところ。(左) これから越える1881mピーク。(右)

 

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小鞍部から巻き道と尾根道の分岐

 

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落ち葉に覆われていますが、踏み跡はあり。(左) 気持ちの良い尾根です。(右)

 

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背後に富士山の全容が見えてくる。(左) これから越えるピーク。(右)

 

地理院の地図ではいったん梅ヶ島温泉からの登山ルートに向かって緩やかに下りながら合流して再び登るルートと、県境の尾根を直登するコースが記載されています。
尾根側のルート入口がはっきりしないので、いったんはトラバースルートを進みかけますが、やっぱり先が下っているのがもったいなくて、鞍部に戻って尾根側のルートを探しながら県境に沿って尾根を登ります。
県境を表す杭と作業で使われるらしい踏み跡をたどると、木々の切れ間から富士山がきれいに見える場所がありました。
ここまでは終始木々に重なって見えていたため全容が見づらくて、写真にもなりにくい状態だったので、今日初めての遮るもののない富士山の展望に大喜び。

 

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ついに遮るもののない富士山とご対面。

 

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いつ見ても富士山は良いですね。

 

眼下には富士川沿いの谷から身延の街らしい人家、その向こうには毛無山も見えています
この
尾根通しで登るルート自体は正規の登山道ではないようで、林界を示す杭を拾いながらピークを越え、少し下ったところで登山道に出ました。
登山道と合流した地点が「富士見台」で、北側が大きく崩壊しているお陰で富士山の眺めがよくなっています。(でも、尾根側を登り切る手前からの眺めのほうが遮るものがなくてずっと良かった(^^;)



「富士見台」からの、七面山に連なる尾根〜富士川の谷〜毛無山〜富士山の眺め。(スクロールしてご覧ください)

 

標高1570mほどの富士見台から先、行く手に見えている1881mピークに向かっての標高差約300m(^^;を、登山道は緩やかな登りと急斜面の通過を織り交ぜるようにして高度を稼ぎます。
高度を上げるにしたがって、安倍奥の稜線の向こう側に輝く駿河湾、大きく弧を描く田子の浦〜沼津の海岸線も見え、その先には伊豆半島が横たわって見えてきます。
伊豆半島の先っちょに見える辺りは尖った岩が突き出して見えるので「波勝崎」でしょうか

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県境よりやや南寄りを歩くことが多い。(左) 尾根の張り出しから見た富士山。(右)

 

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安部東稜の山の向こうに駿河湾が光って見えます。(左) 尾根が笹原に変わってくる。(右)

 

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立ち枯れの向こうにこれから向かう「大谷嶺」、その向こうは「山伏」と、さらにその向こうに「大無間山」。


崩壊地の上部から安倍川の谷筋を見下ろす絶景。(スクロールしてご覧ください)

尾根の途中の小さな張り出しから富士を眺めたり、大きな段差を乗り越えたりしながら高度を稼ぐうちに周囲が笹原になり、いつの間にか1881mピークの南側を巻くように過ぎてしまいました。

 

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安倍川の谷は南北に長い。中央左寄りが静岡市街。

 

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素晴らしい景色に、ここまでの苦労を忘れます(^^)

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でも、「大谷嶺」はまだまだ遠く見えるね。

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安部東稜の山々、ひときわ高いのが「十枚山」?


これでもう少し富士山がしっかり見えたら言うことなし…。(スクロールしてご覧ください)

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南アルプス南端の山々も見えてきます。(左) 山頂が近付くと登山道にも雪が現れます。(右)

立ち枯れの屹立する笹原から安倍川の谷が正面に見える場所では、谷沿いの温泉や人家、静岡市の街並みが見渡せ、逆光ながらも海に浮かぶ船なども望めます。
傾斜が緩んでくると、越えてきた1881mピークが眼下となり、登山道に雪が現れ、周辺もダケカンバの林となって亜高山帯上部の様相を見せてくれます。

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1881mピークも眼下になりました。

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1881mピークの左には田子の浦〜沼津の海岸線。

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今回は出番が少ないですが、富士山。(左) 雪を踏むのも(今のところ)嬉しいですね。(右)

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青空に強いコントラストを放つ白骨樹。

だんだん開けてくる展望に勇気付けられたせいか(単に傾斜が緩んだからか)は不明ですが、元気が出てきたところで、ほどなく標高1918mの「八紘嶺」の山頂に到着です。

しかし、なだらかな山容と樹林に阻まれてほとんど展望はありません(^^;

時間と今後の行動のチェックでは、この時点で10:25ですから、ここで小休止として軽食を頬張っておいて次の目的地の「大谷嶺」まで足をのばすことにします。
八紘嶺から大谷嶺の間が往復3時間程度の見積もりなので、食事を含めて13:30(遅くとも14:00)頃には八紘嶺まで戻れるとの算段でした。
しかし、ここから大谷嶺へ向かうと、初っ端に150mほど下ってしまい、再び八紘嶺より80m以上標高のある大谷嶺に向けて登り返す(実際にはもう少し起伏もある)ことになります。

 

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八紘嶺の山頂は展望はよくない。(左) 小休止の後すぐに「大谷嶺」に向けて出発。(右)

 

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山頂直下からの南アルプス。上河内岳と聖岳。

 

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これから登り返す1859mピークと目的地の「大谷嶺」。

 

八紘嶺の山頂からの急傾斜を下り、いったん傾斜が緩んで気持ちも緩んだ直後、今度は痩せ尾根の岩場を狭いスタンスで巻くように越えます。
そこからさらに痩せた尾根を小さく登下降すると本当に傾斜が緩んできて、ゆるやかな台地状の1859mピークを越えます。
ここから先はやや南寄りにルートをとりながら、緩やかで明るいカバノキの林を縫うように登下降しつつ高度を徐々に上げてゆきます。
遠目にも登山道に雪が見えましたが、西寄りに進むほどに雪を踏む割合が増えてきたようです。

 

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急傾斜を最低鞍部に向けて下ります。(左) 最低鞍部の先の悪場を通過。(右)

 

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前日に融けてクラストした雪にちょっと恐々(^^;。(左) 爽やかな日差しが明るい登山道。(右)

 

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赤石岳と布引山、笊ヶ岳。

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緩やかな尾根を景色を楽しみながら進みます。

 

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いよいよ最後の登り(のはず)。(左) 巨大なツガの立ち枯れ

 

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山頂すぐ手前の開けた場所から見る富士山。

 

木々の間からは南アルプスの前衛峰や赤石岳、聖岳などの真っ白な姿、北寄りには北岳や鳳凰三山だけでなく、八ヶ岳、浅間山?らしき姿も時折り見えている様子。
ひときわ大きなツガの立ち枯れを見ると登山道がやや左に曲がり、複雑な二重山稜や凹地などを見ながら登れば、前方が開けて「大谷嶺」の山頂に飛び出しました。

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ちょっとやらせっぽい?(左) 山頂に飛び出しました。(右)

広い山頂の南側は「大谷崩れ」と呼ばれる大崩壊地で、いわゆる「日本三大崩れ」と呼ばれる、近世の山体崩壊の災害地のうちの一つです。(実は他の二ヶ所はよく知らないけど)

もともと浸食の激しい地域ですが、1707年の宝永地震によって大谷嶺の南斜面が大規模に山体崩壊し、大規模な土石流が下流にある「赤水の滝」を形作ったとの記録があります。
以前に「赤水の滝」を訪れた際、滝の説明看板でそんな記述があったのも記憶しています。
それにしても、遮るもののない南面の眺望は素晴らしく、展望のほとんどない八紘嶺から足を延ばしてよかったです(^^)

 

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激しく崩壊している南面の「大谷崩れ」。

 

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東側の眺め。

 

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西側の眺め。左奥が「山伏」、その向こうに「大無間山」、右に「小河内山」。

 

山頂のパノラマですが、南側は逆光で見づらいのでちょっとオミット。(スクロールしてご覧ください)

 

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上河内岳(右)と南に茶臼岳。

 

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北岳(右)と農鳥岳(間ノ岳は見えない?)

 

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赤石岳(左)と荒川岳(中岳)

 

しかし、時計を確認すると既に13:15になっています。あれ?「八紘嶺」を出てから2時間半も経ってる…
ここから登山口まで3時間半くらいはかかる見込みですから、最低でも16:00までに下山しようと思うとタイムリミットを過ぎてしまっています。
このままではヘッドライトを灯けての下山となる可能性大となってしまいました(^^;;;;;;
しかし、装備のチェックではT君が灯りを持っていないことが判明…
自分は冬の登山ではいつも予備のランプを持っているのですが、今日はたまたま持ってないし。
ということで、大急ぎで食事を済ませて、後ろ髪を引かれる思いですが「大谷嶺」の山頂を後にします。

ペースを上げるためにishidaの大きいカメラをザックに封印、各自のストックや軽アイゼンなどの道具も駆使して進みます。

 

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Mさん、初めて使う(^^;軽アイゼン装着っ!

 

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最低鞍部手前から、標高差150m以上(^^;の八紘嶺を見上げる。(左) 悪場も慎重に通過。(右)

 

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南アルプス南部の主峰群にもさよなら。

 

八紘嶺直下の悪場も通過し、最後の大登りをこなして八紘嶺の山頂に到着したのが15:40、ここからだと登山口まで2時間ほどと思うので、息つく暇もなく下山を急ぎます。

 

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すっかり夕方の光線になった1881mピーク。

 

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富士山もどんよりとグレーに…


1881mピークを越えて富士見台まで来る頃には、空も次第に暗くなってきました。
往路通りにピークを登るのはやめて、通常の登山道通りに尾根を巻くように下ると、樹林帯に入って周囲がかなり暗くなってしまいました。
ishidaは夜目とルートファインディングが効くので、ヘッドランプをT君に装着してもらって、必要に応じて後ろから照らしてもらいながら歩きます。
それでも、そのまま進むと下山路に入ってしまいそうで心配になったころ、左手に向けての分岐が現れ、緩やかに巻きながら峠方面への道を進みます。
見覚えのある鞍部に出て、最後のコブを越えたあとの急傾斜を下ってゆくとトイレの明かりがうっすら見えてきて一安心です。

 

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尾根上で見る残照(^^;。(左) 無事に登山口に帰着です。(右)

 

登山口に帰着したのが17:35となり、当初のタイムリミットを1時間以上オーバーしてしまい、今回はリーダーとして落第点でした。
何事もなく下山できたのは何よりですが、事前の装備のチェックも含めて今後の反省点にしておきます。
(それにしても、判っていたとはいえ後半の下山ルートに積雪や凍結がなくて良かった)

 

そそくさとお片付けし、温泉に向けて、T君運転よろしくです。
今回は時間が遅いこともあって、梅ヶ島温泉街より少し下った場所にある立ち寄り温泉の「黄金の湯」で入浴して帰ります。
ちょうど夜間営業日だったこともあって、通常700円のところが17:30〜20:30までの間400円で入浴・休憩できてラッキーです。
お湯もお肌つるつるの「美肌の湯」なのがいいですね。

 

後は(いつも運転手のT君には申し訳ありませんが)一路、豊川を目指す帰路につき、いつもの豊隆苑で遅めの晩御飯を食べながら反省会をして解散しました。

 

時間配分と装備のミスがありましたが、秋空の下を楽しい仲間と歩いて、今回も格別の山行でした。

 

--------------------- 今回の行程 ---------------------

 

4:00集合・出発 豊川IC〜静岡SA〜新静岡IC〜梅ヶ島温泉〜7:00 安倍峠駐車場

 

安倍峠駐車場 7:30 --- 7:50 尾根分岐(少し戻る) --- 8:20(合流・富士見台) --- 8:45 中休みピーク 8:50

 

--- 9:05 笹原・立ち枯れの台地 9:15 --- 台地状の尾根 --- 9:45 小ピークを巻く--- 10:00 小鞍部

 

--- 10:25 八紘嶺 10:42 --- 大下り --- 11:10 鞍部・キレット通過 --- 11:37 小鞍部

 

--- 11:53 1859ピーク --- 12:20 1901ピーク --- 12:45 巨大白骨樹 --- 12:55 二重山稜 --- 13:12 大谷嶺

 

大谷嶺 14:00 --- 15:10 キレット通過 --- 15:42 八紘嶺 15:45 --- 16:50 富士見台--- 下山道分岐

 

---17:35安倍峠駐車場

 

安倍峠駐車場 17:45〜18:10 黄金の湯 19:15〜20:10 新静岡IC〜21:30 豊川帰着

 

豊川IC〜新静岡IC \2030(休日割引)×2 ガソリン代 約\4800