ishida式の蓼科山登山
2010年4月18日(日) 世間では季節外れの雪に困惑ですが、山ではお楽しみのはず…

この季節に、雪が豊富で安全な山ということでピックアップしたのが
@蓼科山…天候の状況が読みやすく、交通アクセスも良好。
A荒島岳…一昨年から雪のシーズンを狙っているが、遭難事故も毎年発生。天候も読みにくい。
B能郷白山…これも山で会った人がみんな良いと言うし、行ってみたいリストの上位。ただし通行止めなどのためこの季節はアクセスが微妙。
休日の天気予報もにらんで、目的地は@蓼科山に決めました。
ただし、金曜日から土曜日にかけては降雪が予想されたため日程を延期して、日曜日に登山としました。


昔は「蓼科なんてハイキングの山でしょ?」みたいに馬鹿にしていたフシもありますが、季節的には登りごたえもありそうですし、何といっても山頂の景色に期待できそうなのが最近の自分的に評価高いかも。
土曜日は明らかに雪と思われるので、新雪にも期待しつつアイゼンとかんじきも用意して臨みます。

 

蓼科周辺というと、昔ながらの高原リゾートというイメージでいま一つ原生的なイメージが無いことや、「ビーナスライン」とか「ピラタス何某」「メルヘン何とか」といった横文字の名前が出てくるのも個人的にはいまいち好きになれんなあ…という印象を持っていました。
「女神湖」みたいな名前も何となくわざとらしい気が…
でも本当は「女乃神」とか「ビジンサマ」という山の神が語源のようです。
イメージとは逆に、一般的に山の神というのは「醜女」の場合が多く、女性が山に入ることを嫌う性質のものと聞きますが、蓼科の山の神も(山のイメージとは違って)へんてこりんな姿をしたものとの記事もありました。
(すずらん峠手前の通称「女神茶屋」も、看板には「女乃神茶屋」と書いてありました。)

 

4月18日(日)はAM3:00に起床、軽く食事をして音羽蒲郡IC〜諏訪ICを目指します。
白んできた空の下で見上げる恵那山は、昨日の降雪で腰のあたり(神坂峠よりも下まで)真っ白に雪化粧しているのが判ります。
道中の中央アルプスと南アルプスは春の霞で青く見えますが、中ア烏帽子岳の山頂部は真っ白です。
駒ヶ根では大きな建物の陰に雪が見えますし、辰野を過ぎると高速道路の脇の山にはかなりの面積で雪が残っています。
諏訪ICで高速を降りて茅野市街を通過すると、駐車場などにも雪山が残っています。
メルヘン街道(ここにもカタカナ名称が…国道299号)からビーナスラインに合流し、すずらん峠の登山口を目指します。

 

ビーナスラインでは路肩にも雪が現れ、AM7:00ちょうどにすずらん峠手前の女乃神茶屋向い側の駐車場に入ると、駐車場はクラストした雪で真っ白。4cmほどの雪をザクザク踏んで駐車します。
先行者の車は7台、まだ支度をしている人もちらほら。
軽く朝食(今日二度目)をとって、準備にかかります。

 

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女乃神茶屋向かいの駐車場。(左)  茶屋前のバス停(登山口)から南八ヶ岳を望む。(右)

 

登山口は女乃神茶屋の正面のバス停から始まっていますが、周辺も昨日の雪が残っており、登山口から雪の上を歩きます。
朝の陽射しに輝く雪原とまばらに生えるシラカバやミズナラの林をぬって進むと最初の登りにかかり、背後の木々の間から南八ヶ岳の峰がのぞき見えます。

 

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登山口。最初から雪で嬉しい。(左) しばらくは緩やかな斜面。前方にチラッと山頂。(右)

 

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昨日の新雪が朝日にキラキラ。(左) ミズナラの多い斜面に取り付きます。(右)

 

いったん急な登りを過ぎると斜面は緩やかになり、常緑の針葉樹が混じった林に入ると再び登りになります。
岩の多い斜面を登り切ると傾斜が緩み、左手に2113m標高点のある場所に着きます。ここからは南八ヶ岳の全体が見渡せます。

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標高を上げてゆくと背後に中央アルプス。(左)  岩の多い登山道。(右)

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南アルプス。(左)  南八ヶ岳の主峰群。(右)

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2113m標高点脇を通過。(左) いよいよ山頂に向けての登りが見えます。(右)

再び平坦な道を進むと、前方にちらちら見えていた蓼科山の山頂部とこれから辿る登山道が見渡せます。
いよいよ急な直登の始まりで、徐々に高度を上げてゆき、振り返ると手前の標高点のあった高まりの向こうに雄大な景色が望めるようになります。
ここからが最後の頑張りどころで、周囲は縞枯れ帯となって見晴らしも良好です。

 

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直登の途中から南アルプス。(左) 西には中央アルプス。(右)

 

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立ち枯れ樹の林立する縞枯れ帯。

 

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林立する枯れ木。(左) 枯れ木越しに南八ヶ岳。(右)


急な傾斜に新雪が着いているため足場は判りにくく、キックステップもやや効きにくい状態ですが危険はない(のと面倒なので…)ため、アイゼンは装着しませんでした。
右手には南八ヶ岳の山々と南アルプス、左手には北アルプス、振り返れば中央アルプスと御岳が見渡せて良い気分、写真撮影にもいそしみます。
立ち枯れ木の林立する縞枯れ帯を抜けると樹木のない山頂部の一角に飛び出します。

 

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全く樹木の無い山頂部。(左) 予想通りの眺めの良さににんまり?。(右)

 

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北八ヶ岳と麦草峠を隔てた南八ヶ岳。(左) もう山頂です。(右)

この季節、遠目に蓼科山を見ると「白い帽子を被っている」ように見えるのは、この様に山頂部に樹木が無いために山頂部の雪がよく見えることが理由です。
大きな岩塊の堆積した山頂部の周縁は、岩と雪がミックスした状態で、岩の隙間に積もった雪の踏み抜きに注意が必要です。
周縁部を過ぎて傾斜が緩むと、なだらかな山頂部の一角に到着します。
すでに先行の登山者が10名近くいます。

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山頂からは北に浅間山。(左) 山頂で憩う登山者たち。(右)

 

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北横岳から南八ヶ岳のはずれにある編笠山、西岳まで一望。

 

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東西の天狗岳(硫黄岳と重なっている)、硫黄岳、横岳、赤岳、阿弥陀岳、権現岳、編笠山、西岳。


久々のパノラマ写真。山頂からほぼ360°の展望です。

 

山頂部は岩の堆積したやや窪んだ平坦な地形ですが、噴火口というよりは釣鐘型火山の中央が窪んだ状態に近いものでしょうか?

鹿児島県の開聞岳も成層火山の上に溶岩ドームがせり上がった二重構造の火山なので、似ているかもです。
近くでは蓼科とは反対の八ヶ岳の南のはずれにある編笠山も(姿は違いますが)よく似た構造に見えます。


南斜面からやや東に巻いて到達した山頂部の南東側に位置するこの場所が三角点のある場所のようです。
中央には蓼科神社奥社の鳥居と祠、反対の北西端にはケルンのようなものが見えます。
蓼科山頂ヒュッテの脇を通って北面に移動し、将軍平が見下ろせる場所まで行くと一面の雪に覆われた急斜面が続きます。
ここでかんじきを装着して山頂周縁を巡ってみることにします。

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前掛山から大河原峠方面の縞枯れ。(左) 前掛山の向こうに浅間山。(右)

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雪原のシュカブラ。(左・右)

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まだ誰も踏んでいない北面の雪原を行きます。

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ケルンから白樺湖、車山。遠くに御岳、乗鞍、穂高連峰。(左) 八ヶ岳をバックに。(右)

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蓼科神社奥社。(左) 蓼科山頂ヒュッテはまだ休業中?(右)

傾斜の緩くなるポイントから反時計回りに歩き、反対側に見えたケルンまで到達。
記念撮影もしながら蓼科神社奥社にもお参りをして三角点周辺に戻りました。
ここでのんびり昼食とし、帰りのコースと時間を確認。
同じルートを通るのも面白くないので、当初の予定通り将軍平に下って天祥寺原経由で下山することにします。
将軍平への下りの手前でアイゼンを装着して急斜面に備えます

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再びシュカブラ。(左・右)

 

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木の無い急斜面を真っ直ぐ下ります。(左) 雪面は様々な表情を見せます。(右)

 

急な斜面も実際には雪は適度に締まっていてアイゼンなしでも十分でした。
しかし、樹林の中に入るとどうも歩きにくい…アイゼンにお団子が着いて下駄になってしまいました。
やや湿雪になっているため、やはりチタンアイゼンでも団子になるということが判りました(^^;。
先行者のアイゼンの跡をみると、カジタ(訂正)グリベルの大福付き(?)アンチスノープレートの跡が判ります。
こちらのものは、この雪でも団子にならないようで優れモノですね。
仕方なく、将軍平まではストックでアイゼンの雪を落としながら下りました。
将軍平に着くと、蓼科山荘はほとんど軒下くらいまでの雪に埋もれた状態です。
ここで登山道は十字路となり、左(北)がスキー場のある七合目方面、右(南)は天祥寺原、正面(東)は前掛山から大河原峠方面になります。
少し前掛山の方向へまっすぐ行って、見晴らしの良いところから将軍平を隔てた蓼科山の姿を楽しんでから十字路へ戻りました。

 

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将軍平に出て蓼科山を振り返る。

 

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将軍平から少し上り返したところからの蓼科山。


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たおやかな蓼科の姿には飽きません。(左) 小屋は軒まで埋まっています。(右)


小屋前の十字路を東に向かう踏み跡は二人、南に向かう踏み跡は三人程度のようです。
やはり、北側へ向かう踏み跡が多いのは七合目からの入山が多いという証でしょう。
南の天祥寺原経由でビーナスラインすずらん峠手前の竜源橋に下山するルートですが、地図上では平坦な天祥寺原の風景に期待しています。
しかし、入山者が少ないためか登山道に小枝が垂れて歩きにくいうえに、枝を払うと梢に積もった雪が落ちてきます。
ピンクテープや赤布はほとんど目に付かないうえ、斜面の樹木も若い木が多くて枝葉が低いのも影響してルートが判りづらい状態です。

 

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低い樹林の中を行きます。(左) 崩壊地か風衝平原の端に出ます。(右)

 

暫く進むと、視界が開けて大河原峠へつながる稜線が見える場所に出ます。
周囲は崩壊地の跡のようで、ずっと稜線に向かって若い樹木におおわれています。
(将軍平の上から見たときにも大きな木の少ない斜面が続いているのが判りましたが、風衝による縞枯れの影響で広範囲に樹木が枯れているのかもしれません)
そこから続く沢筋に入ると、所々にシュルンドのように落ち込んだ穴が見えて危険を感じますが、踏み跡は沢の左岸に移って一安心です。
再び沢に出ると、「天祥寺原」を示す看板と、その向こうに矢印の書かれた看板が見え、樹林帯の中を進む道になりました。
暫く樹林帯の中を進むと、傾斜が緩くなった先が開けて明るくなり、笹原と樹林の混在した天祥寺原の一角に出ます。

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沢筋は落とし穴に注意。(左) 沢を離れて樹林帯を行きます。(右)

 

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天祥寺原の笹原の一角に出ます。(左) 正面は北横岳。(右)

 

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蓼科の山体。山頂は右奥にちらり。(左) 林と笹原、湿地が広がります。(右)

 

天祥寺原からは正面に北八ツ、東に大河原峠、振り返ると蓼科山と東に続く尾根筋が見渡せ、思った通りの気持ちの良い眺めです。
しかし、ここからは正規のルートが不明瞭になり、先行者の踏み跡とルートファインディング技術(^^;を頼りに進みます。
地図では大河原峠から下る沢の右岸を行くようになっていますから、さほど問題はないかと…
とはいえ、アイゼンを付けた単独行、ビブラム底の大小は夫婦連れ?の三名の先行者の踏み跡も錯綜しています。
明らかに正規ルートではない所に付いていたり、いったん戻った跡や分岐が現れては合流を繰り返しているようです。
開けた地形と笹原と湿原、疎林が混在しているためか頼りのテープも無く、地形的にも平坦で目印になるものが無いようです。
地図と地形を確認しつつ、人様の踏み跡をたどって進みます。

天祥寺原のはずれまで来て、沢筋が狭くなってくるとやっとはっきりしたルートが確認できるようになりました。
そこからは沢伝いに樹林帯を進み、さらに高度を下げてゆきます。
雪も緩んで、所々地面が露出するようになるとビーナスラインも近いようです。

 

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谷が狭まってくるとルートは安定。(左) 氷のオブジェ。(右)

古い作業道のような場所に出ると、すぐ先に砂防堰堤が現れ、ビーナスラインの竜源橋登山口に飛び出しました。
ビーナスラインに出てみると、駐車場までは思ったより登らなければならないようで、とぼとぼ路肩を歩いて20分ほどでエブリちゃんの待つ駐車場にたどり着きました。

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砂防堰堤前に出ると、すぐ先で車道に出ます。(左) 帰路に振り返って見る蓼科山。(右)

帰路は諏訪IC手前のセルフGSで給油、そのまま高速道路にのって家路を目指します。
もちろん帰りは飯田山本ICから下道を帰ります。
道中の一般国道は2週間前よりも空いているうえ、追い付いた車もほとんど道を譲ってくれたため快調に走れました。

 

当日のコース図はこちら(カシミールより生成)
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---------------------------------当日の行程------------------------------------

 

自宅3:30〜音羽蒲郡IC〜諏訪IC〜7:00登山口駐車場

 

登山口7:35--8:452113m標高点--9:35縞枯れ帯--10:00山頂(周遊・昼食)12:00--12:25将軍平

 

将軍平12:55--13:20沢出合--13:55天祥寺原--15:10竜源橋--15:30駐車場

 

駐車場15:50〜諏訪IC〜飯田山本IC〜新城〜20:35自宅