ishida式の福井 経ヶ岳登山
2010年10月23日(土) 春に荒島岳から見た山容に惹かれた山へ

9月に甲斐駒ケ岳に行った後、10月中盤までは別件で約束があったり天候が今一つだったため山には行っていませんでした。
紅葉前線も高山からずっと下がってきているのに焦り(?)を感じつつ、天候を見極めての登山計画を立てていました。

 

ちょうど10月23日(土)が好天の見込みとなり、より好天が期待できそうな福井県の候補地「経ヶ岳」を目的地として選定です。
経ヶ岳はGWに「荒島岳」に登った際、北側に見えるこの山の独特の山容に惹かれました。

(四月には中央アルプスの経ヶ岳にも登っていますね。)

 

前日は歓迎会のため帰宅が遅くなることを予想して、事前に準備をしておきます。

帰宅して1時間半ほど睡眠をとり、午前三時に起床して自宅を出発、食料買出し後に東名音羽蒲郡ICから東海北陸道白鳥IC経由して登山口の福井県大野市を目指します。
しかし、前夜にガソリン補給を忘れたため燃料の残量が不安となり、大野氏で朝食時間兼ガソリンスタンドの開店待ちの時間をとりました。

大野盆地は濃い霧の中で、山から見ると素晴らしい雲海となっているのを想像しつつ林道を登って登山口を目指します。

今回は、自転車も活用して「唐谷から入山、山頂からは尾根伝いに保月山経由で下山」を予定。
途中、唐谷登山口の位置を確認しておき、保月山側の登山口まで向かいます。
登山口には2台の車が止まっているだけで、思ったほどの人出は無いようです。
登山の準備を済ませ、荷台から出現したワンタッチピクニカに跨り、唐谷登山口まで一気に下って行く…つもりが、実は少し登りになる区間があって手間取ります。
変速の無いピクニカちゃんでは、山に登る前に疲れてしまいそう…で、途中から押して歩きます。

下り区間を一気に下って唐谷登山口に着くと、先ほどは一台もいなっかったのに既に3台の車が止まって、そのうちの2台の人たちは出発した後でした。
自分も負けずに(自転車を林道脇の草むらにデポして)登山開始します。

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保月山登山口から見下ろす六呂師高原と雲海の下の大野市街。正面は部子山?

初めは草ボーボーの林道を登り、時折り稜線の紅葉が見えるのを楽しんで進むと、暫く進んだところで登山道に入ります。
登山道に入るとすぐに左手に大岩が聳え、等身大の磨涯仏が彫られています。
岩は大きな礫を含む凝灰岩(凝灰角礫岩)で、周辺の山が古い火山であることを物語っています。

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左手の尾根には急峻な岩壁。(左) 山頂に連なる稜線が見えます。(右)

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嘉永4年とある磨涯仏。(左) 沢沿いに登ると大野盆地と部子山。(右)

登山道は意外に踏まれておらず、藪に付いた朝露でパンツの裾がかなり濡れます。
沢の本流を渡り、歩きにくいトラバースを繰り返した先で急斜面を登ります。
時々振り返ると、右岸側の尾根に朝日が当たって素晴らしい紅葉が浮かび上がって心が和みます。

 

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青空をバックに、朝日に輝く紅葉の尾根。

 

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高度を上げてゆくと岩壁の表情も変わってきます。

 

傾斜が緩くなると、暫くは沢沿いの斜面をトラバースしてやや平坦な地形の場所を通過しますが、足下は沢状となっているところも多くあります。
全般的に踏み跡は薄く、悪天候時にはあまりお勧めできないコースといえます。

 

途中からは枯れ沢の上部が扇状地となったような岩ゴロの地形を進むと、前の山が切れ込んで見えてくるため、岩の集積は前方の壁が崩壊したものと想像されます。

途中で左手の斜面に取り付くと、今日一番の急斜面の登りが暫く続きます。

しかし、周囲はブナ林となり、黄色やオレンジ色に埋め尽くされています。暫くは喘ぎ喘ぎの登りですが、朝日に照らされて明るくて気持ちの良い斜面に癒されます。

 

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一旦緩くなった傾斜は枯れ沢から再びきつくなります。(左) 枯れ沢上部で左の斜面へ。(右)

 

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右岸の斜面は紅葉真っ盛り。

 

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紅葉の美しさで急な傾斜もなんのその?(左) 朝日の差し込むブナ林。(右)

 

急斜面を登り切って右手へ進路を変えると、前方には明るくて広々した平坦地が広がっています。
沢を渡ってブナ林の中を進むと行く手が大きく開け、目の前には錦秋の衣装をまとった経ヶ岳が聳えているのを見ることが出来ます。

「池の大沢」と呼ばれる湿原地帯で、疎林の中に草原が広がっている場所がまるで山上の別天地です。

 

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平坦地にブナ林が広がります。(左) ブナの黄色にカエデの赤も色を添えます。(右)

 

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ちょこっとパノラマ。手前が池の大沢の湿原。

 

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正面が錦秋の衣装をまとった経ヶ岳。

 

いわゆる「火口原」と呼ばれる平坦な地形の中を進み、池の大沢を囲む「外輪山」様の山々を眺めると、GWに荒島岳から見た巨大な噴火口のような地形をもった経ヶ岳の姿が脳裏に浮かびます。

 

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美しく紅葉したブナたち。(右・左)

 

--------------------------------ここでちょこっと薀蓄(^^;------------------------------

周辺にある「白山」などの火山の姿や、それよりも古いと思われる経ヶ岳の周辺地形などからすると、経ヶ岳自身の噴火活動による「噴火口」ではなく、火山性の活動かそれ以外の原因で山体が崩壊したことによって出来た地形のように感じました。
会津磐梯山のように、成層火山が大規模な水蒸気爆発を起こして山体が崩壊することがあります。
しかし、経ヶ岳は地質的には火山起源ですが、そのような噴火が起こるほど活動的な時期をとうに過ぎているように思えます。

帰宅後に調べたところでは、やはり直接の噴火活動によって出来た地形ではなく、地震などによって山体が崩壊して出来たスプーンカット状の地形のようで、大野盆地南東部に広がる平坦な高台はこのときの崩壊によって出来た堆積地形とのことです。
参考にさせていただいた福井市自然史博物館だよりNo.327の記事
ttp://www.nature.museum.city.fukui.fukui.jp/shuppan/tayori/newsletterNo.327.pdf

経ヶ岳の地下構造に起因するものか、ちょうどスプーンカット状の崩壊地の中心が平坦になった部分を含めて池の大沢周辺の地形が形成されたというのが正解のようです。
特に、杓子岳から南に延びる尾根の岩壁に見られるような硬い地層があるため、スプーンの首の部分が狭まって、より「噴火口」らしく見える地形が出来上がったように見えます。

--------------------------------------本題に戻ります----------------------------------

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切窓の鞍部から経ヶ岳への道。(左) 経ヶ岳の登路からの池の大沢。(右)

 

平坦な池の大沢から急な壁を登ると「切窓」と呼ばれる主稜線の鞍部に出ます。
保月山からのコースと合流し、西側には法恩寺山、背後には中岳へと続くなだらかな笹原の稜線を見ながら、正面の急な笹の斜面に取り付きます。

背後の中岳が目線の高さになる頃には、池の大沢の窪地全体が見渡せるようになり、紅葉の美しさもひとしおです。

 

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背後の中岳が目線の高さに。

 

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池の大沢の凹地の全景。

 

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大野平野を背後に見ながら笹の斜面を登る。(左) 南には荒島岳。(右)

 

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中岳、杓子岳が眼下になり、背後に大野平野が広がる。


何となく浮かれた気分で滑りやすい斜面に足をとられないよう(写真撮影にも励みながら)山頂を目指して登ります。(傾斜が急なだけでなく、笹と粘土質の地面で滑り易い)

そうこうしているうちに、笹薮の先の開けた山頂広場にひょっこりと出ました。
先行の登山者たちが数人いるだけの山頂からは、これまで背後に眺めていた稜線だけでなく、北側には赤兎山や白山、法恩寺山、東に目を転ずれば乗鞍や御岳、南アルプスも見えます。

 

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山頂からの白山と別山、三ノ峰。

 

隣で地元の山岳会っぽい団体さんが山座同定していたので「あっちに見えるのは恵那山ですか?」と訊ねると、「あれは富士山ですよ!」とのお答えにびっくり。

ここから富士山が見えるのかと思って感激しました。

しかし、よくよく考えると位置的にも南すぎるし、どう考えても恵那山では…

(帰ってからカシミールで見たら、やっぱり恵那山でした。富士山は南アルプスに隠れて見えません。)

 

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左から荒島岳、背後に能郷白山、部子山、飯降山

団体さんたちは赤兎山に向けて縦走するようで、北のほうに向かって出発してゆきました。
自分もここで早めの昼食とし、のんびり座ります。(今日、登り始めてから初めて腰掛ける?)
10月下旬とはいえ、日差しも暖かく風も無いためぽかぽかした陽気ですね。
それでいて、夏のようにハエなどもうるさくなくて快適♪

お腹も具合よくなったところで、白山や赤兎山の展望を求めて平坦な稜線を北へ向かいます。
笹が伸びて漕がないと進めない状態ですが、踏み跡はしっかりしています。
途中の笹薮の中に経ヶ岳の三角点がありました。(そういえば山頂広場には無かった(^^;)
三角点をすぎて道が下り坂になると、北側に続く尾根道と背後に赤兎山と白山の姿が綺麗に見えるようになりました。先ほどの団体さんが笹の中の道を行くのが見えます。

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藪の中に三角点を発見。(左) 北側は白山の展望良し。(右)

 

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赤兎山と白山の峰々。

 

景色を堪能した後は山頂を後にして切窓までの急斜面を慎重に下ります。
最近は
先シーズンのスキーで傷めて以来の五十肩状態が続き、バランスを崩して手を着いたりするととっても傷むんです…。

下山にかかると、これまでの静かな印象とはうって変わって下からどんどん人が上がってくるのとすれ違います。
今回は全体の中では早めな行動で先行できていたということでしょうか。

天候も、南の空からだんだんと薄雲が広がってきたので、やはり午前中が最も好条件だったようです。

下り切った切窓から先、中岳の斜面は一部急なところはありますが、登りはなんという事も無く通過。

しかし、中岳から切窓越しに経ヶ岳を見ると、なんとも大きな標高差に見えますね。

 

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登山道で見たリンドウ。(左) 切窓から中岳に向けて登ります。(右)

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中岳から見る経ヶ岳はずいぶん遠く高く見えます。

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中岳の先から見る池の大沢の凹地。

中岳は笹に覆われた緩やかなピークとなっていて、先には同じく笹の道の続くなだらかな杓子岳のピークが見えます。
このあたりからの経ヶ岳と池の大沢の眺めも良いです。

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中岳から杓子岳。(左) 振り向いてみる経ヶ岳。(右)

 

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杓子岳から中岳へ続く笹の稜線と経ヶ岳。

 

杓子岳まで笹の緩斜面の稜線漫歩を楽しみます。

杓子岳(一般にはそう書かれているが、山頂の看板には釈氏岳とあったがどっちが本当?)で登山道は右に折れ、そこから先は急な斜面の下りが続きます。

前方に切り立った岩が見えると周囲はやせた尾根になり、梯子なども現れてきます。

 

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岩壁と紅葉。(左) すっくと立つブナ。背後は杓子岳。(右)

 

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周辺は秋の装いの真最中。

岩尾根を登下降すると保月山のピークに出ます。

そこから先は気持ちの良い斜面を軽快に下りますが、保月山からはまだかなりの標高差があります。

 

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保月山から先は気持ちの良い斜面を下ります。(左) オヤマボクチ(ヤマゴボウ)。(右)

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駐車場から見る尾根は杓子岳(左奥)から南に派生した尾根です。

 

最後に杉林が現れて傾斜が緩くなり、平坦路を進んだ先を下ると林道脇の登山口に飛び出しました

少し林道を戻ったところが駐車場で、忠実なスイフトちゃんがお待ちかね。

すぐに身支度を整え、唐谷登山口にデポしてあるピクニカちゃんの回収に向かいます。
ピクニカちゃんを回収したのが午後2時前ですから、このまま帰れば夕食に間に合いそうですね。

帰路、寝不足のため高速道路のPAで少し休憩をとりましたが、結果的には渋滞も全く無く順調に午後5時30分ごろ帰宅することができました。
明日のお出掛けに対しても十分休養できそうです。

 

しかし…やはり寄る年波には敵いませんね。翌朝は(お約束があったにもかかわらず)腰痛が出てしまい、お出掛けは急遽キャンセルとしてしまいました。

申し訳ない>M氏

 

---------------------------------------本日の行程---------------------------------------

 

自宅3:30〜6:30大野市(給油等)7:00〜7:30保月山登山口7:50〜8:00唐谷登山口8:10

 

唐谷登山口8:10--8:40磨涯仏--9:15枯れ沢--10:00池の大沢--10:15切窓--10:45経ヶ岳山頂

 

経ヶ岳山頂11:20--12:00中岳--12:25杓子岳--13:00保月山--13:30保月山登山口

 

保月山登山口13:40〜13:45唐谷登山口13:55〜〜〜17:35自宅(走行503Km)

 

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