キセルガイ科のカタツムリは「殻の高さを伸ばす方向に進化した」グループです。
実際にはキセルガイモドキ科のように同じような方向に進化したものたちもいますが、キセルガイ科が最も種類数が多く、特に細長くて落ち葉の下などに潜り込みやすい形態をとることで成功したグループといえます。
一般的なカタツムリは活動中は文字通り殻を「背負って」いますが、キセルガイの仲間は「体の後ろに引きずっている」感が強く、体の割に長い殻を持ちながらもそれほど労力を使わない戦略に見えます。
長い殻が重力に逆らえない代わりに軟体部は非常に柔軟で、頭を殻口から見てほぼ360度回転させることができ、ほぼ殻の向きを変えずに前進・後退することができます。
本種は本州の関東以西と四国に分布する小型の一般種ですが、他のキセルガイ同様に外観での判断が難しく、屋外で見付けて撮影しても同定するのはなかなか困難です。
たまたま雨上がりの朝に玄関先の三和土のコンクリートで休眠状態になっているのを見付け、日光で煮えてしまわないように保護した個体のプリカ(腔壁)を観察しました。
自宅周辺などでも目にする機会は少ないですが、前述のようなコンクリート上に出ている個体や、草刈り中に藪の中で見付けたり、森で他のキセルガイに混じって見付けるといった機会がありました。
同所的に見られる「ミカワギセル」に比べると、一回り小さくて殻も薄めで成長脈などもちょっと控えめですが、「ツムガタギセル」に比べれば成長脈は目立ちます。
主に腐朽木などにいることが多いようです。