沖縄に行ったら真っ先に出会いたいトンボの中の一つでしたが、2016年夏の第一回沖縄遠征の際には、何回か出会えたものの満足いくような写真が撮影できませんでした。 2017年4月に敢行した(^^)第二回の遠征でやっと雌雄の写真が撮れただけでなく、求愛から交接の瞬間まで観察することが出来ました。 (産卵までは確認できず残念!)
本種は、タイワンハグロトンボの琉球列島亜種とのことで、奄美大島から沖縄本島にかけて分布します。 しかし、同じ琉球諸島でも周辺の小さな島には居ないのは、生息にはそれなりの広い環境が必要ということなのか?それとも、特に小さくない西表島や石垣島にも分布しないので、過去の環境変化で絶滅したのか、競合種がいるのか、生息に適した環境がないのか?それとも琉球諸島の複雑な成り立ちとも関連があるのか?不思議な気がします。
種名には「ハグロトンボ」とついていますが、いわゆる本土の「ハグロトンボ」はアオハダトンボ属であり、本種が属するタイワンハグロトンボ属とは異なります。 逆に、分類上の違いに対して外見的にはよく似ていますが、現地で見た印象では「ハグロトンボ」がひらひらと飛ぶのに比べると、本種のほうが飛翔が速くてひらひら感はあまり感じません。
オスは流れの緩やかな渓流の日当たりが良い場所に縄張りを持って、侵入する他のオスを追い払いながらメスの飛来を待ちます。 首尾よくメスが飛来すると、オスは求愛のために腹部を反らしながら近付いたり、流れに着水して流されて見せたりして気を惹こうとします。 特に特徴的な、水面に落ちて流される行為には、「ここにいい場所ありますよ!」とメスにアピールする効果があるようです。
オスの身を呈した(?)アピールを受け入れたメスが葉上などに静止すると、更にオスはメスの前で腹を反らしながらホバリングする行動を見せて近付きます。 メスが逃げずに翅を広げていれば、オスは上から飛び掛かるようにして腹端の把握器でメスの頚部を捕まえます。 その際に、オスはメスの翅端部にある「偽縁紋」を目印にしているのかもしれませんね。 (でも、カワトンボ科でもハグロトンボには偽縁紋はないので、必ずしも目印として必要なわけでもないのかな?) 上手い具合にメスをキャッチしたオスはタンデム状態で葉上に着陸し、腹部を持ち上げてメスの上体を引き寄せ、腹部の付け根にある精子貯蔵部の前にメスの頭部を持っていきます。 それに反応したメスは腹部を折り曲げ、顔の真ん前にあるオスの精子貯蔵部に対して腹端をドッキングします。 これで、均翅亜目らしい「ハート形の交接態勢」が完成です。 交接態勢でオスが周期的にいきんでいるように見えるのは、精子を送り出す運動なのか、メス側の受け入れを促しているのでしょうか? 交接自体はせいぜい長くても5分程度で終わり、その後にメスは単独で産卵に入るようです。 |