ヒメカマキリモドキタテスジカマキリモドキ (種名訂正しました)
アミメカゲロウ目(脈翅目) カマキリモドキ科  約22mm(メス) 約15mm(オス)

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肘より先が二の腕よりも後ろまで反転して畳まれる独特の前肢の構造です。

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カマキリと違い前肢の「跗節」の先端には他の肢のような二股の爪はなく、歩くのにはあまり使わないようです。

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オスの腹端はツノトンボのような二股の器官がある。

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顔は逆三角形でカマキリっぽい。

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ふた周りほど大きいメス。理由は不明ですが、腹部を曲げる仕草もカマキリモドキ特有のようです。

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メスのほうが大きいだけに、よりカマキリっぽく見える。

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自宅外壁で見付けた、卵を持って腹部が膨らんだメス。ますますアシナガバチっぽく見えた。

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自宅玄関を出たら、羽化したてのメス成虫にも遭遇。前胸部や翅もしんなりしていて、まだ飛べません。

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翅が伸びたので葉の上に移ってもらったら、初糞(蛹糞)を排泄。いよいよ飛翔の準備完了?

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2020年7月24日に見付けたメス成虫。

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上の個体が脱出した後と思われる「アシダカグモ」の卵嚢。内部に繭が二つあった。

--------------------- 2024.08.08 種名の訂正と記載追加 ---------------------

※ずっと「ヒメカマキリモドキ」と思っていたものですが、実は非常によく似た外来種のカマキリモドキだったようです。
2024年に「箕面公園昆虫館」の館長を務めていらっしゃる農学博士の中峰空様よりメールをいただき、本種について調査されているということでした。
近年になって「ヒメカマキリモドキ」と思われているものの中に明らかに形態の違う別種が混じっているということで、標本の確認と併せて「ヒメカマキリモドキ」のキーワードでWeb上にある情報を検索している中で「ishida式」のHPがヒットしたとのことです。
いただいた情報によると、2014年に愛知県で採集された標本以前には確実な記録は無く、発見地点は現時点ではほぼ静岡県西部〜愛知県・岐阜県南部、大阪府〜和歌山県北部となっていますが、今後は分布が拡大する傾向にありそうです。
本種は「ヒメカマキリモドキ」とは別属で、対馬に生息する「ツシマカマキリモドキ」と同属と考えられるものの、種小名までは不詳とのことで、新称として「タテスジカマキリモドキ」を提案されています。

また、広い季節の範囲で見られるというのも、本種の場合は宿主となるクモが腹数種あることから、色々なクモの生殖サイクルに合わせて繁殖できるという利点もありそうです。

調査された結果が7月下旬に「ふじのくに地球環境史ミュージアム」の報文として正式公開されたので、ishidaも心おきなく記事の修正と公開をさせていただきました。
本家の報文はこちら→<Tokai-shizenshiOF-02.pdf (fujimu100.jp)>

ということで、確かにishidaが子供の頃に見たことがなかったはずで、外来種のカマキリモドキが地元に侵入していたということでした。
どちらかといえば小型で弱々しいイメージの昆虫ながら、見た目によらず高い環境適応能力を発揮しているということなんですね。
ちなみに、撮影できませんでしたが2024年の5月にも豊川市の第二東名高速道路が通っている山のトンネル近くで見掛けました。

-------------------------------- 追記ここまで --------------------------------

もともと捕食性昆虫として独自の形態に進化したカマキリは大好きですが、収斂進化によって、全く別の系統でありながら同じような形態を持った昆虫たちがいます。
例えば以前紹介している「カマバエ」なんかも、双翅目(ハエ・カの仲間)でありながら、いかにもカマキリっぽい形態をしています。

もちろん、前肢はほとんどの昆虫が同じ構成なので、前肢で獲物を捕らえる戦術をとる場合はよく似た形となるのは必然ともいえます。
本種を含む「カマキリモドキ」の仲間も、脈翅目(アミメカゲロウの仲間)でありながら、三角形の頭部や前肢がカマのような形状に変化しているだけでなく、長く伸びた前胸部を持つ体全体のプロポーションまで似ています。
しかし、体の後半は近縁なクサカゲロウなどを髣髴とさせる姿をしていて、トンボのようなカゲロウのような特徴を持つ「ツノトンボ」同様にいくつもの種の特徴を備えたキメラ的な印象を抱かせます。
そういえば、本種のオスの腹端の形状などは「ツノトンボ」とも似ている気がする…
しかし、実際には色合いなどから「アシナガバチ」に擬態しているともいわれます…って、やっぱり複雑怪奇ですね〜(^^;

「キカマキリモドキ」らしきものは以前に見たことがあったのですが、接近することができずに写真は遠目に撮っただけで、紹介はしていませんでした。
本種は、2017年9月9日にたまたま自宅の天井にオスの個体がとまっているのを発見して撮影したものです。
「子供の頃でも見たこと無かったけど、自宅周辺でもカマキリモドキっているんだ!」と感激したのですが、思っていた以上に小さくて(せいぜい15mmほど)さらにびっくり。

この先はなかなか出会う機会はないなと思っていたところ、2018年5月になって今度はメスの個体が天井にとまっていました(^^)
同種でありながら、メスはふた周りほどサイズが大きくてもっとびっくり。
どちらも外に放してあげる前に撮影に付き合ってもらいましたが、できれば自然の環境での写真が撮りたかった(^^;。

カマキリモドキの仲間は、幼虫がクモの卵嚢に寄生して成長するとありますが、以前読んだ本では、草花に産み付けた卵から孵化した幼虫が花に集まるハナバチに取り付き、さらのそのハナバチがクモに捕食される際にクモの体に乗り移り、クモの産卵時に卵嚢に乗り移る…とあったような気がします。
それにしても、色々な偶然が重ならないとメスのクモに辿り着くこと自体が難しく、どれだけの幼虫が無事に(?)クモの卵嚢に寄生できるんでしょう。
ネットで見ると、幼虫は最初は大顎の小さいヒメカゲロウの幼虫みたいな姿をしていますが、クモの卵嚢に寄生している段階ではうじ型、繭に入っている蛹はほとんど成虫の形態をしていて、繭を破って出たあとに移動し、再度最終脱皮をして成虫になるという複雑な形態変化をするようです。

-------------------------- 2018年 8月 追記 --------------------------

その後、自宅の玄関前で再び遭遇したのは、なんと羽化したてで羽も伸びきっていない個体でした。
最初にオスの個体を見たのは2017年9月9日、その後は2018年の5月21日に室内でメス成虫を見付け、6月2日には屋外で卵を持ったメスを見掛けていましたが、7月7日に羽化したての個体を見るのって、サイクル的にはちょっと中途半端で、かなり季節的に広い範囲で複数回繁殖(多化性)しているのか、生活サイクルのずれた個体群がいる可能性もあるようですね。
いずれにしても寄生される側のクモは年一化性ですから、ある程度繁殖時期に幅があるということは宿主になるクモは一種だけではなく、クモの卵嚢の中で蛹化するならそのまま冬を越すことは考えにくい気もするので、秋に現れる成虫がそのまま越冬するのでしょうか?

-------------------------- 2020年 7月 追記 --------------------------

2019年には自宅周辺で見掛けることはありませんでしたが、2020年7月26日にメス成虫を(またまた玄関先のすぐ外で)見付けました。
撮影後に次女に写真を見せると、「さっき玄関の網戸にとまってたので外に出してあげたじゃんね」とのこと(^^)で、またまた屋内に出現ってこと??
その後ピンと来たのが、2日ほど前から玄関の隅っこに「アシダカグモ」の卵嚢(例のモナカみたいなやつ)が落ちてたなあ…ってこと。
団居の子グモがいなくなった状態の卵嚢を開いてみると「ビンゴ」でした。
なんと、糞などのごみに混じって真っ白な綿毛のような繭が二つ入っていました(^o^)
「ヒメカマキリモドキ」が寄生する宿主のうちの少なくともひとつは「アシダカグモ」だったんですね。
道理で自宅周辺や屋内で見掛ける確率が高いはずです…

前述の「花に産み付けた卵から孵化した幼虫が花に集まるハナバチに取り付き、さらのそのハナバチがクモに捕食される際にクモの体に乗り移り…」というくだりは「ツチハンミョウ」や「ハリガネムシ」などと混同していたようで、卵から孵化した一令幼虫は徘徊性のクモに直接乗り移るというのが正しいみたいです。