ツヤネクイハムシ
甲虫目 ハムシ科 体長7mm前後

tsuyanekuihamusi_P3223395.jpg - 85,120Bytes
胸部の中央がくびれ、前縁側面に突起がある独特の体型とメタリックな質感が特徴的です。

tsuyanekuihamusi_P3223272.jpg - 146,316Bytes
後肢が長いものの多いネクイハムシ亜科の中では少数派の短足な体形。

tsuyanekuihamusi_P4014821.jpg - 103,462Bytes
直射日光下ではコントラストが強すぎて黒っぽく見える。

tsuyanekuihamusi_P4014845.jpg - 71,700Bytes
何故か休耕田の周りの杭や土留めの上などでよく見られた。

tsuyanekuihamusi_P4014738.jpg - 74,100Bytes
やや赤銅色に見える個体もけっこう見られた。

tsuyanekuihamusi_P3223430.jpg - 103,925Bytes

tsuyanekuihamusi_P4014748.jpg - 75,432Bytes
何となく「クビボソハムシ」を連想させる顔付き。

tsuyanekuihamusi_P4014729.jpg - 70,710Bytes

tsuyanekuihamusi_P4014730_2.jpg - 63,566Bytes
前翅と肢の特徴が判るよう拡大してみました。

tsuyanekuihamusi_P4230749.jpg - 84,997Bytes
交尾中のペア。

tsuyanekuihamusi_P4230709.jpg - 71,714Bytes
交尾に至っていないペアですが、近付いても逃げない(^^)

tsuyanekuihamusi_P4230759.jpg - 77,873Bytes
スゲと思われる植物に集まっている。

tsuyanekuihamusi_P4230699.jpg - 85,896Bytes
あちこちで複数のペアが見られた。

「ネクイハムシ亜科」は日本国内で23種ほどが知られており、幼虫は湿地の土中で名前通り植物の根を食べて育つという特異な生態を持っているとのことです。
成長した幼虫はそのまま泥の中で蛹化し、羽化した成虫は地上に出て湿地の水草の葉や花粉・蜜などを摂食して繁殖しますが、実際にこの昆虫を目に出来る期間というのはあまり長くなさそうです。
成虫になるまでは呼吸のために地表に出ることはなく、幼虫はお尻にあるトゲ状の器官を植物の根に刺し、植物から直接酸素を得ているそうです。

ネクイハムシの仲間は全体としてはやや細身で腹部が末すぼまりになったスマートな体形に加え、後肢が非常に長いものも多くいるため、他のハムシ類とは印象が大きく異なります。
ただ、本種の場合はどちらかというと少数派の「短足」な部類で、全体的にはやや細長いクビボソハムシのような姿をしています。
体色は非常に金属光沢が強く、金色〜赤銅色のメタリック感が鮮烈な印象です。
桜の花が咲く頃に里山の休耕田で複数個体を見付けましたが、何故か植物上ではなく畔の土留めのコンクリートや杭の上にいる所ばかり見掛けました。

ただ、姿のよく似た近縁種との見分けはなかなか難しく、Web版ネクイハムシ図鑑の記述を参考にして同定しましたが、生殖器や腹板など写真では確認できない識別ポイントも多くあって、ちょっと確定的な同定とは言い切れません(^^;

本種を同定するのに当たっては上記ウェブサイトの記載内容から、特徴として
・前胸部は四角くて中央に目立つくびれがあり、前側面に突起がある。
・前胸部に毛は無く、しわ状の点刻と中央溝がある。
・前翅の会合部間室は細かな横しわがあり、翅端に向かって狭まる。
・前翅後端は幅の狭い切断状で外角・内角は丸く、全体に点刻と細かな横しわがある。
・後腿節に突起があり、腿節は基部が赤褐色、脛節後端外角が鋭く尖る。
・触角の各節の長さは5節>6節>4節≒3節>2節(2節×2≒5節)の関係にある。
といった点をポイントにしました。

本種に限りませんが、湿地に依存した生態を持つ生き物は環境変化や開発による影響を受けやすく、ネクイハムシ亜科も多くの県でレッドデータブックに記載されているようです。

------------------------ 2024.04.24 画像と記載を追加 ------------------------

当初、3月下旬〜4月上旬にかけて本種を確認していましたが、4月の下旬になって再訪すると、局所的にはびっくりするくらい多数の個体が「カヤツリグサ科スゲ属」と思われる植物に群がっていました。
4月前半までは本種の食草であるこのスゲが伸び切っておらず、出現の最盛期にあたっていなかっただけのようです。
実際、周辺の湿地の中でも同じスゲが生えているところには多数が見られるものの、スゲの無いエリアではほとんど見られないなど、えり好みが激しいようです。
スゲの花穂に多数の本種が群れ、多くはマウントして利交尾態勢のペアも見られました。
印象としては全体的に不活発だなと思った通り、接近しても飛んで逃げるというようなことも無く、極めて移動性に乏しい種のようです。
結果的には生息地の湿地が破壊されてしまうと継続的な繁殖は難しいため、環境変化に弱い種だということが判ります。