ウスバシロチョウ

鱗翅目 アゲハチョウ科

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後翅に尾状突起は無く、一見するとやや大きめなシロチョウのようにも見えます。

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鱗粉は少なく、ほとんど透明に見えます。

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なかなかこのようにしっかり翅を広げてくれませんでした。

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体はいかにもアゲハチョウっぽく、太くて毛深い。

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特に翅端はスケスケ。腹部の後端に茶色く見えるのが「交尾栓」。

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吸蜜中のメスにアタックするオス。(実はメスは既に交尾済みで、交尾栓がついていたため交尾は成立せず)

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ちょうど目の前でオスがメスをキャッチ、交尾成立しました。このような新鮮個体は全体に鱗粉は多めに見える。

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交尾開始20分後の時点ではまだ交尾栓は生成されておらず、かなり長い時間を要するようです。

一見するとモンシロチョウを二回りくらい大きくしたように見えますが、実際には「アゲハチョウ科」に属するチョウです
山間地の谷あいなどで見られ、土手などの草地に生える「ムラサキケマン」を食草とすることから、里山のチョウともいえます。
春から初夏にかけての短い期間にしか発生せず、ishidaの地元の東三河地域では見られませんが、更に山地寄りの奥三河の一部に生息地があって、G
W前後に発生が見られます。
自分のイメージは「高原のチョウ」でしたが奥三河地域ではどちらかというと人里の周辺のみで見られるとのことで、土手の草刈りなどで食草が生育する環境が人為的に維持されていることで生息地が保たれているようです。

アゲハチョウの仲間ですが後翅には尾状突起は無く、翅の形も全体に丸みを帯びています。
更には、鱗粉はとても少ないため、ほとんどの個体は翅がほとんど透明に近く見えます。
(ただ、新鮮個体を見ると翅は全体的もう少し鱗粉が多いように見え、飛びまわっているうちに翅の先端から順次剥げ落ちてしまっているようにも思えます。)

メスの場合は腹端の腹側になんだか茶色いスリッパのような不思議なものを付けているものが多く見られますがこれは「交尾栓」と呼ばれ、交尾した際にオスが分泌する物質で形成し、それ以降のオスが交尾するのを阻止する「貞躁帯」のような役目を果たすそうです。
しかし、このような大きなものを生成するためにはかなり時間がかかると思われ、その間は無防備な状態になってしまいますが、彼らは食草のムラサキケマンの毒を体内に蓄積しているため鳥などの天敵に襲われづらいそうです。
実際に観察した際にも、交尾成立から20分経過しても目に見えてそれらしきものは形成されていませんでした。
メスをキャッチしたオスは交尾が成立すると向かい合わせの体勢になり、メスの腹面に自分の腹部を押し当てるようにして徐々に分泌物を出しながら交尾栓を生成するようです。

実は2022年の春に岐阜県などでの発生情報を見て撮影のため遠征しようかと思っていましたが、たまたまバイクで奥三河を走っている時に「何年か前にこの辺りでウスバシロチョウが飛んでいるのを見たな」という記憶が蘇りました。
そういえば、以前に読んだ故横山良哲先生の著書にも本種のことが載っていました…(^^;
早速生息していそうな場所へ出掛けたところ、現地に着いてすぐに交尾シーンに遭遇、周囲の開けた草地や果樹園など、食草が見られる周辺でもそれなりの数が見られました

とはいえ、やはり自然の山林ではなく、前述のように人手によって住みやすい環境が管理されないと永続的な生息はなかなか難しそうな印象を持ちました