ヤマトマダラバッタ 

直翅(バッタ)目 バッタ科  体長40mm前後

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ほぼ完璧な隠蔽型の擬態です。これはメスのようです。

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こちらは背面が茶色がかったメス個体。

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茶色さの度合いにも個々に差異がありますね。

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やや中間的な色合いのメス。

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こちらは一回り小型のオス。暑さを避けるためか、よくこのように体を持ち上げる姿勢をとる。

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交尾中のペア(奥)に接近するオス。

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交尾中のオスは後肢を曲げ伸ばしして接近するオスを牽制します。

北海道から九州の全土、海外では韓国に分布し、主に海岸や河川敷の開けた草地で見られる中型のバッタです。
砂地と草原の境界領域付近に限って生息し、特に砂地が草原状に遷移する手前の、疎らに草が生えた状態を好むようです。
つまり彼らの生息には「全面的に洪水や高波の影響を受けない程度に広い河川敷や海岸が適度な攪乱を受けつつ、草地への遷移途中の状態の場所がある程度安定的に維持されるような環境」が必要となります。
現状では堤防の強化や河川敷の多目的利用などで人工的な河川改修が行われ、海岸も護岸の強化や災害防止のための植林などが行われており、本種は各県のレッドデータブックで絶滅危惧U類に指定されています。

色彩は灰色に黒い斑点が散らばったほぼ砂地のような色合いで、個体によっては背面が茶色いものがいるといった程度の色彩変異があります。
オスはメスに対して後肢を曲げ伸ばしして腿節の白黒のストライプ部分を見せ付けながら接近し、自分の足の長さ(?)や魅力をアピールするようです。
この行動は、交尾中に他のオスが近付いた場合にも相手に対して行われ、オス同士の強さのアピールにも使われているようです。

一見した印象は同所的に生息地が一部重複する「マダラバッタ」に名前もよく似ていますが、実際は属が異なり、生態的にも本種より草が多い部分で多く見られます。
外見的には
本種のほうがマダラバッタよりやや大型で頭部に丸みがあること、マダラバッタには前翅前縁付近に付け根から2/5程度まで、帯状の明色部があるが本種にはこれといって目立つ模様はありません。

本種が砂地にじっとしていると全くといっていいほど見分けることができず、足元から飛び立って初めて存在に気付くくらいです。
完璧な隠蔽型の擬態だなと思いますが、いざ撮影しようとして近付くと敏感で接近するのには苦労しますが、飛んで逃げる場合でも飛翔距離も短く大きな移動はしないようです。

また、人間に対して完璧とも言えそうな彼らの擬態であっても、秋に訪れた本種の生息地周辺では今年巣立ったと思われるハヤブサの若鳥が多数たむろしており、猛禽特有の高い視力を生かして本種を含むバッタ類を次々に捕食しているようでした。