サツマゴキブリ 

ゴキブリ目 オオゴキブリ科  体長35mm前後

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初めは警戒して頭も触角も仕舞った状態でしたが、警戒を解いたらちょこっとだけ頭が見えました。

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意外にも、夜の森では思った以上の密度で見付かりました。(左) 朽木の中に何匹も見えた。(右)

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2022年に石垣島で見たもの。腹端の形状から、こちらがオスですね。

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地面に落ちたギランイヌビワの実を食べている。これは2頭ともメスですね。

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幼虫はくすんだ茶色で艶がない。

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2022年10月に静岡県御前崎市で見付けたもの。実はこの中に4個体います(^^)

ゴキブリというと一般にはあまりイメージのよくない昆虫ですが、人間に直接関わることなく暮らしている種がほとんどです。

この「サツマゴキブリ」は主に九州南部から南西諸島にかけて分布する特徴的な姿をした森林性のゴキブリです。

前胸背板の前縁が金色で、腹部の側面が鮮やかな赤色と、かなり派手な色合いです。
体形的には一般的なゴキブリに比べて寸詰まりなイメージなうえに翅は退化しているため、成虫になってもまるで幼虫の翅芽のような翅の痕跡しかありません。

朽木や石の下などに集団で暮らすとのことで、イメージは「オオゴキブリ」に近い生活をしているようです。
また、一般的なゴキブリは「卵鞘」というガマグチのようなケースに卵を産んでお尻に付けて持ち歩きますが、本種は卵が孵化するまで腹端にあるポケットのような器官に入れて孵化するまで保管する(卵胎生)とのことです。

個人的には以前からずっと出会ってみたかったものの一つで、2009年に人生初の九州・屋久島上陸を果たした際にも出会える期待をしていたのですが、残念ながら「死体」にしか会えませんでした(^^; 
お世話になったタクシーの運転手さんによると「植木鉢なんかの下からよく出てくるよ」とのことで、実際に植木鉢をどけてみてくれたんですがその時には見付かりませんでした。

その後、本州を離脱した2018年の沖縄遠征の際に夜の森の中で初対面できました。
昼間はもちろん同じ場所でも見られなかったのですが、夜になって再び森に入ったら、意外にもあっさり見付かって大喜び(^^)
さらには、朽木の中に何匹も潜んでいたりする(集団生活者なので)のも見られ、生息に適した環境であれば思った以上に生息密度が高くて驚きでした。

--------------------------- 2022.08 画像・記載を追加 ------------------------------

2022年の八重山遠征時に生息密度の高い場所を見付けました。
単純に体が小さく見えるのが幼虫かなと思っていましたが実はそれは雌雄の差(オスの方が一回り小さい)だったようで、実際は幼虫は体が小さいだけでなく別種のように色合いが違うんですね(^^)。

2022年7月発行の「ゴキブリハンドブック」の記載に合わせて「マダラゴキブリ科」から「オオゴキブリ科」に記載を変更しました。(オオゴキブリ科-マダラゴキブリ亜科)

--------------------------- 2022.11 画像・記載を追加 ------------------------------

2022年の秋も深まった10月末に奥さんと静岡県の御前崎へ出掛けたところ、遊歩道で本種の死体を見掛けました。
黒潮の影響の強い温暖な土地柄ということもあって、こんなところにも分布しているんだ!と思い、散策中に気になるコンクリート片をそっとどけてみたら、見付けました(^^)
10頭以上の成虫がまとまっていました。

帰宅後に調べてみると1990年代後期から国内各地で続々と見付かっているようで、2022年発行の「ゴキブリハンドブック」(ゴキブリスト柳沢静磨さん著:文一総合出版)では分布は北海道から八重山諸島までとなっています。
人為的な移動か黒潮などによる分散かどうかははっきりしませんが、一般的には物流に伴って分散した国内外来種として扱われているようです。
確かに生息が確認されている場所は主として港があったり、蘇鉄やフェニックスなどの植栽があったりする地域に多いようです。
大型なうえに卵胎生のため、冬季にも死滅しないようなそれなりに温暖な地域であれば、競合種や天敵も少ない場所ではそれなりに繁栄しているようです。

それにしてもネットの記事などでは(家屋に浸入したりしないのに)やはり「ゴキブリ」だというだけで「衛生害虫」や「不快害虫」の範疇に入れられてしまっており、偏見にさらされているようで気の毒です。
極端な話、カブトムシなんかの方がずっと不衛生だと思うんだけど…(^^;